ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第5話:再会、新たな道

それから、どれくらい歩いたか。

シグレ達は、雰囲気が変わりそうにない樹海の中を、ただ彷徨うように歩き続けていた。

 

 

「これ…もしかして迷ってるんじゃ……」

 

 

フィリアの懸念に、シグレは返さない。

その可能性が否定できないほど、歩き続けていたから。

とはいえ、実際に樹海がそれほどまでに広い可能性もある。

いずれにしても、このままではまずい状況なのは変わらないのだが。

 

 

 

そんな感じで歩いていると。

 

 

「…?」

 

 

シグレが立ち止まり、前方を注視する。

 

 

「わぷっ!?」

 

 

フィリアは気づかなかったか、シグレの背中にぶつかり、変な声が出る。

 

 

「…どうしたの、シグレ?」

「……転移だ。何かが…来る」

 

 

フィリアが尋ね、シグレが答え、指さす先を見ると、そこには二人も見慣れた転移の光。

先ほどまでそこに何もいなかったということは、ここに転移してこようとしていることになる。

シグレが刀の柄に手をかけ警戒をし、フィリアもそれに倣って警戒する。

…やがて、そこに現れたのは。

 

 

「……キリト、か?」

 

 

全身黒ずくめの見慣れた姿に、シグレが声をかけると、相手は驚いたように。

 

 

「シグレ…!?お前、なんで…あの時…え…?」

 

 

振り返り、シグレの姿を確認すると混乱を露にする。

75層での出来事を見ていた彼にとっては、混乱しかなかった。

そんな彼…キリトを見て、シグレは警戒を解く。

平然とするシグレ、混乱するキリト、状況が理解できないフィリア。

一度、状況の整理が必要だろう、と誰もが思い、一度安全な場所で話をすることにした。

 

 

 

そうして、キリトとシグレで状況を整理し、それをフィリアに説明する形で話を進める。

 

 

「…つまり、二人は知り合いで…75層でシグレは一度死んで…え?じゃあなんでシグレは今ここにいるのよ?」

 

 

とはいえ、情報量が多すぎるのか、フィリアは混乱を隠せない。

 

 

「確かに俺はあの時、アスナに貫かれて死んだはずだった。だがそこからの記憶はない」

「俺も、確かに見た。お前が光の粒になったのを。けど…そのお前の光の粒を、謎のアバターが取り込んだ。お前は…そいつに取り込まれたはずなんだ」

「だとすれば…俺は何だ?」

 

 

キリトが知る、シグレのその後。

謎のアバターに取り込まれたのなら、今ここにいるシグレは何なのか。

キリトとシグレはそれに、答えが出せない。

 

 

「…でも、シグレはシグレなんでしょ?…とりあえず、それはそれでいいじゃない」

「そうは言っても…」

「たとえ、今のシグレの体が偽物だとしても、持ってる記憶やらなにやらは本物…それ以前に私たちの体はそもそも偽物なんだし今更じゃない?」

 

 

フィリアの言葉に、キリトは苦笑しながら確かに、と返す。

当事者のシグレはどこか腑に落ちない様子だったが、やがて考えても結論は出ないと悟ったのか。

 

 

「……なら、そういうことにしておく」

 

 

溜息交じりにそう、返すのだった。

 

 

「ま、いいか。シグレが生きてたってのが…一番大事なことだしな」

 

 

そう、結論付けてキリトが立ち上がる。

 

 

「…帰ろうぜ。お前がいなくなって、落ち込んでるやつがいるんだ…元気づけてやってくれ」

「……そうなのか」

「あぁ。アスナはお前を殺したっていう罪悪感が強いみたいだし、サチとストレアも部屋から出てこなくなってるんだ。サチには黒猫団の皆がいるけど…な」

 

 

キリトはそこまで言って、少し暗い表情になる。

一時期は葬式みたいな雰囲気だった、と語るキリトの言葉が全てなのだろう。

とはいえ。

 

 

「それは構わないが…その前にやることがある」

「やること?」

「あぁ……お前は、この近くで安全エリアを見なかったか?」

「いや、見てないけど…どうかしたのか?」

 

 

シグレはキリトの問いに答える。

フィリアとともに、スカルリーパー…75層のボスを撃破した事。

助けてくれた彼女を、安全エリアに連れていくと約束した事。

シグレはその約束を反故にするつもりはなかった。

 

 

「…そういうことなら、みんなでアインクラッドに行けばいいじゃないか」

「……」

 

 

突拍子もないようなキリトの案に、シグレとフィリアが一瞬言葉を失っていると。

 

 

『「ホロウ・エリア」データ、アクセス制限が解除されました』

 

 

そう、無機質なアナウンスがどこからともなく流れたのだった。


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