ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
** Side Asuna **
パーティ申請をしてきた彼が去った。
明日に備えて休むのだろう。
それは別にいいことだと思う。
「…」
けれど、私は。
腰に携えた細剣の柄に手をやり、立ち上がって町の外のフィールドに向かう。
フィールドにて。
「やぁっ!」
私は剣で敵を貫く。
細剣の長所はこのスピードにあるだろう。
彼に助けられ、彼と別れてから、彼に追いつくためにレベルを上げることに専念していた。
けれど、どれだけ頑張っても彼に追いついた気がしない。
「彼の強さは…こんなものじゃなかった」
ひょっとしたら美化しすぎているのかもしれない。
けれど、はじまりの町周辺のフィールドで私が敵にやられそうになった時に守ってくれた彼の戦い方は、長剣でありながら私が持つ細剣並の速さで。
長剣の威力を余すところなく発揮する斬撃は細剣など相手にできない威力であった。
だからこそ、立ち止まっていられない。
少なくとも、速さで彼に勝てるくらいでなくては、私の言葉はきっと彼に届かない。
「やぁっ!」
細剣のスキルで、敵を一気に貫く。
敵は一撃であっさりと光となって消えていく。
…もう何度、モンスターが光の粒になる姿を見ただろう。
それでも足を止めずに、次のモンスターを探す。
「せいっ!」
細剣でモンスターを貫けば、一撃で倒せる程度にはなってきた。
普通の剣に比べて速度重視な代わりに威力が劣る細剣でこれなら、それなり、なのだろう。
けれど、それで満足はできない。
この層をクリアして終わり、というわけではないのだから。
「せやああぁっ!!」
ソードスキル『リニアー』。
基本的な技らしいが、それでも通常攻撃よりは威力が上。
このあたりのモンスターであれば楽に倒せる。
「っ…」
細剣を鞘に納め、街の方に視線を向ける。
この街、というよりボスの攻略に関する場所に来れば、彼がいるだろうと期待したが、いなかった。
どこか別の街にいるのだろうか、と考え、すぐにその考えを捨てた。
理由は単純。
何故なら、ゲームクリアを視野に入れていたから。
だとすれば、私のように、とまでは言わずとも、ボス攻略会議を見逃すはずがない。
「…まさか」
一人、迷宮区に向かったのでは、と考えてしまう。
帰りを待つ者がいない、と言っていた彼なら、ありえない事ではない。
攻略できればそれでよし、できなかったとしても自分が死ぬだけなら問題はない。
そのくらいの事を考えてもおかしくない。
実際、私も一時そんな事を考えたこともあった。
「っ…」
その懸念が、私の足を一瞬だけ迷宮区に向けさせるが、すぐに足を止める。
もし、彼がそこにいなかったら。
仮に向かっていたとしても、最悪の事態になっていたとしたら。
一人で迷宮区に挑んで、私は無事でいられるだろうか。
…私は、こんなにも弱かった。
彼に助けられて数週間、戦いの中に身を置いて、自分を鍛えてきたつもりだった。
けれど、いざとなれば、一人で未知の領域に踏み込む度胸すらない。
「っ…まだまだね、私……」
私はβテスターじゃないけど、それでもそれなりにこの世界で戦いの経験を積んだつもりでいた。
けれど、それで彼のように一人で攻略する度胸がつくかと言われれば、少なくとも私はつかなかった。
実際、今日のように攻略会議が行われるのだから、私のような人は大勢いるはず。
だとすれば。
「…貴方は、一体どれだけ経験を積んで、それだけの強さを身につけるに至ったの?」
私の疑問は、夜風と揺れる草木の音に流され、誰にも届かない。
** Side Asuna End **