ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第6話:混濁する記憶

その言葉にシグレが思う所があったのかどうかはキリト達には分からないが。

 

 

「…そうか」

 

 

小さく返すだけだった。

そんなことをしていると。

 

 

「ちょっと、あんた…その手に浮かんでる紋様…」

「…何だ、これ…」

 

 

フィリアがキリトの手元を見て驚いたように声を上げる。

 

 

「……」

 

 

シグレも視線をやる。

皆が見る先には、見覚えのない紋様が浮かんでいた。

 

 

「…ちょっとよく見せて」

 

 

フィリアを除いて。

この場所においては、三人の中で最も詳しいからこそ何かに気づいた、といえるのだろう。

フィリアその紋様をじっと観察し。

 

 

「……やっぱり、同じ」

 

 

そう、呟きながら、フィリアは視線を明後日の方向に向ける。

その先を見れば、空の一部分を切り取るように、黒い球体が浮いている。

遠目ではあるが、その大きさを察するには十分な存在感があった。

フィリアはその球体を指さし。

 

 

「…あの場所。あそこに、同じ紋様がついた転移石…みたいなものがあって。ひょっとしたらって思ったの」

 

 

フィリアの思い出すような話。

当然ながら、キリトとシグレに真偽は分からない。

しかし、目的地がなかった為、それに乗らない手はなかった。

 

 

「それにしても、なんでこんなところにスカルリーパーが…」

 

 

歩きながら、キリトが思い出すように顎に手をやりながら呟く。

それについてはシグレもまた気にしていた事ではあったのだが。

 

 

「そういえば、そんなこと言ってたっけ…二人とも、見たことあるの?」

「あぁ…あいつは、75層で……」

 

 

キリトとフィリアがそんな会話をしながら歩く後ろをシグレはついていく。

そんな中で、シグレは思考に耽る。

…第一層から、行動をしてきた。

独りでボスに挑み、撃破し。

ただ、前に進み続け、攻略を続けてきた。

そして、結果として、75層で、自分は討たれ、死んだはずだった。

そのはずなのに今、こうして自分は生きている。

それだけでも謎が多いのだが、シグレがそれ以上に違和感を感じているのが、自分の記憶だった。

第一層から行動をしてきたはずなのに、まるで『初めからここにいた』かのような。

このゲームが始まった時から、この見覚えがある場所で、戦い続けていたかのような。

まるで、自分と、別の誰かの記憶が混ぜ込まれたような。

けれど、どちらも間違いなく自分であるかのような。

無意識に、自分の頭を手で押さえる。

自分の中の別の誰かに、意識の中で問いかけるように。

指先に、力が入る。

無意識に、歯を食いしばる。

いつのまにか、歩を止めていたことにすら、シグレは気づかない。

 

 

「ちょっと…シグレ…!?」

「……グレ、おい…どうした!?」

「っ!?」

 

 

…そんなシグレに気が付き、キリトとフィリアが歩を止め、シグレに声をかけていたことすら。

何とか耳に届いた声にシグレはハッと前を見る。

違和感がなくなったわけではない。

しかしそれでも、目の前で心配そうにこちらを見てくる二人に悟らせることはなく、軽く目を伏せ。

 

 

「……何でもない」

「何でもないって、あんた…」

 

 

シグレの返事にフィリアが食い下がるが、話は終わったといわんばかりに、それ以上の追及をさせないシグレ。

 

 

「…あの球体に向かうのだろう?」

 

 

言いながら、シグレは歩き出す。

その歩調は、キリトがよく知るシグレと何も変わらず、いつも通りだった。

しかし。

 

 

「…何でもなくは、見えなかった」

「……」

 

 

フィリアがシグレの手を掴み、話を続けようとする。

シグレはフィリアを見返すが、フィリアはその視線に怯むことはなく、シグレの視線を見返す。

そうして、シグレが折れかけていた時。

 

 

『既定の時間に達しました。これより適正テストを開始します』

 

 

先ほどの、無機質なアナウンスが響く。

そのアナウンスに、三人は警戒し。

 

 

「……いずれにしても、話は後だ」

「ん…」

 

 

どこか納得しきれないフィリアだったが、状況が状況だけに引き下がる。

その一方で、キリトはウィンドウを操作し、何かに気づく。

 

 

「…ホロウ・ミッション……」

 

 

そう、キリトは呟く。

ミッション、という単語に三人は穏やかでない何かを直感的に感じていた。

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