ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
*** Side Sachi ***
「サチ…大丈夫か?」
そう、声をかけてくれたのは、黒猫団のみんなだった。
「うん…ごめんね。私は…大丈夫」
一人でいたところに声を掛けられ、一瞬返答に迷う。
きっと、シグレがいなかったら、私たちは…
……私たちは、きっと、死んでしまっていた。
27層でのトラップの事。
あの時のことは、もうきっと、忘れられない。
それは、ここで…この世界で、死ぬ恐怖。
けれどそれ以上にあったのは、皆を、失ってしまうという恐怖。
あの時、皆に手伝ってもらいながら突撃した時。
シグレのHPはあとほんの僅かだった。
私達は、二度も彼に助けられた。
にも拘らず、私には、彼を助けられなかった。
「…ねぇ」
「?」
「どうして…シグレは、死ななきゃいけなかったの…?」
あの時に、嫌というほど感じた恐怖。
シグレを失ってしまうという恐怖。
この恐怖を現実にしたくないと、彼を必死に追いかけて、追いついて。
けれど、シグレが敵であるという宣言をしたあの時。
アスナと決闘をする時。
アスナのソードスキルがシグレを貫く寸前。
幸か不幸か、私には見えてしまっていた。
シグレは、笑っていた。
「っ…」
その意味を、察してしまった。
あの時、自分の身を挺して、黒猫団を守ろうとした姿が重なる。
だから気づけてしまった。
シグレは、あの決闘で、勝つつもりはなかった。
負けて…皆を、現実に返すために。
けれどそれは、未だ叶っていない。
76層への到達、という報酬のみで、未だにこのゲームは続いていた。
「…うん」
だったらせめて、私は、戦いたい。
シグレの遺志を継いで、なんて言うほど私は強くない。
戦いの強さも、心の強さも、シグレには敵わない。
…それでも、私は、貴方の隣で、共に戦いたいと思っていた。
それはもう、叶わないけど。
「…ごめんね、皆。もう、大丈夫だから」
こうして支えてくれる皆のためにも、私は、ちゃんと立って、前を見て歩いていくから。
皆と一緒に、絶対無事にこのゲームを脱出する。
貴方はその強さで、すごく遠くに行ってしまったけど。
私はシグレのような強さはないけど。
まだ、戦うのは怖いけど。
もうこれ以上、大切な何かを、失いたくないから、私は戦う。
…あの時、シグレが教えてくれた事。
ちゃんと、覚えてる。
「……そっか、ならいいんだ」
「ごめんね…」
私はきっとまだ、守られる側、なのだと思う。
でも、それでもいつかは、ちゃんと守れるように、頑張るから。
だから…少しだけ。
ほんの少し、疲れちゃった時は…シグレのことを思い出して、少しだけ泣いても、許してほしいなって。
「…そろそろ晩御飯だっていうから呼びに来たんだけど…どうする?」
「うん…行くよ。ちゃんと食べて…頑張らないと、だもんね」
ちゃんと笑えてたかな。
あ、みんな少し心配そうな顔。
……まだまだ、だなぁ、私。
*** Side Sachi End ***