ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

127 / 251
第13話:たとえ弱くても / Sachi

*** Side Sachi ***

 

 

 

「サチ…大丈夫か?」

 

 

そう、声をかけてくれたのは、黒猫団のみんなだった。

 

 

「うん…ごめんね。私は…大丈夫」

 

 

一人でいたところに声を掛けられ、一瞬返答に迷う。

きっと、シグレがいなかったら、私たちは…

……私たちは、きっと、死んでしまっていた。

27層でのトラップの事。

あの時のことは、もうきっと、忘れられない。

それは、ここで…この世界で、死ぬ恐怖。

けれどそれ以上にあったのは、皆を、失ってしまうという恐怖。

 

 

あの時、皆に手伝ってもらいながら突撃した時。

シグレのHPはあとほんの僅かだった。

私達は、二度も彼に助けられた。

にも拘らず、私には、彼を助けられなかった。

 

 

「…ねぇ」

「?」

「どうして…シグレは、死ななきゃいけなかったの…?」

 

 

あの時に、嫌というほど感じた恐怖。

シグレを失ってしまうという恐怖。

この恐怖を現実にしたくないと、彼を必死に追いかけて、追いついて。

けれど、シグレが敵であるという宣言をしたあの時。

アスナと決闘をする時。

アスナのソードスキルがシグレを貫く寸前。

幸か不幸か、私には見えてしまっていた。

シグレは、笑っていた。

 

 

「っ…」

 

 

その意味を、察してしまった。

あの時、自分の身を挺して、黒猫団を守ろうとした姿が重なる。

だから気づけてしまった。

シグレは、あの決闘で、勝つつもりはなかった。

負けて…皆を、現実に返すために。

けれどそれは、未だ叶っていない。

76層への到達、という報酬のみで、未だにこのゲームは続いていた。

 

 

「…うん」

 

 

だったらせめて、私は、戦いたい。

シグレの遺志を継いで、なんて言うほど私は強くない。

戦いの強さも、心の強さも、シグレには敵わない。

…それでも、私は、貴方の隣で、共に戦いたいと思っていた。

それはもう、叶わないけど。

 

 

「…ごめんね、皆。もう、大丈夫だから」

 

 

こうして支えてくれる皆のためにも、私は、ちゃんと立って、前を見て歩いていくから。

皆と一緒に、絶対無事にこのゲームを脱出する。

貴方はその強さで、すごく遠くに行ってしまったけど。

 

私はシグレのような強さはないけど。

まだ、戦うのは怖いけど。

もうこれ以上、大切な何かを、失いたくないから、私は戦う。

 

 

…あの時、シグレが教えてくれた事。

ちゃんと、覚えてる。

 

 

「……そっか、ならいいんだ」

「ごめんね…」

 

 

私はきっとまだ、守られる側、なのだと思う。

でも、それでもいつかは、ちゃんと守れるように、頑張るから。

だから…少しだけ。

ほんの少し、疲れちゃった時は…シグレのことを思い出して、少しだけ泣いても、許してほしいなって。

 

 

「…そろそろ晩御飯だっていうから呼びに来たんだけど…どうする?」

「うん…行くよ。ちゃんと食べて…頑張らないと、だもんね」

 

 

ちゃんと笑えてたかな。

あ、みんな少し心配そうな顔。

……まだまだ、だなぁ、私。

 

 

 

*** Side Sachi End ***

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。