ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第15話:戦う意味、目的

直後、今までと同じような転送の光に包まれる。

少しして落ち着いたところで、ふと、目を開くが、景色は何も変わっていなかった。

森の出口の光景。

そこに浮かぶ、森の中には不釣り合いな、転送を行うであろうオブジェクト。

ただ一つ違うのは、キリトとフィリアがその場から姿を消していたことだった。

 

 

「……?」

 

 

シグレは状況を把握すべく、辺りを見回す。

けれど、考えるまでもなく、転送に失敗したということだろう、とすぐに察する。

 

 

『転送エラーが発生しました。対象のプレイヤーは管理区エリアに転送できません』

 

 

すぐに流れる、無機質なアナウンス。

つまり、どういう理由かはさておき、管理区とやらに入ることを許可されていない。

シグレはそう認識する。

…尤も、シグレはそれを問題視はしていなかった。

何故なら。

 

 

「…当初の目的は達成した」

 

 

シグレはそう、呟く。

管理区、というからにはフィールドのようにモンスターが出るわけではないだろう。

そう考えれば、圏内エリアを見つける、という目的は達成した。

であれば、これ以上行動を共にする理由はない。

それがシグレの結論だった。

 

 

「…」

 

 

とはいえ、ここでいつまでも立ち止まっているわけにはいかない。

そう考え、次の目的地を見つけるために、辺りを見回す。

 

 

「……?」

 

 

ふと、シグレは遠巻きに、人影を見つける。

気配を感知した、とか大層なものではない。

単純に、視界に捉えただけ。

モンスターという異形が蔓延る中で、人というのはそれだけで目立っていた。

単純に、他にもプレイヤーがいたという興味だけであったが。

 

 

「……っ!?」

 

 

ふと、視界に入った、男の腕に刻まれた模様に、シグレは興味から、憎悪に似た何かに感情を変える。

それは、かつてある男と対峙した時のこと。

自分の父親の最期を知り、手にかけた、最凶ギルドのリーダーの包丁使い。

父の仇、という憎悪に捕らわれたシグレは刀を抜き、その人影に向かって距離を詰める。

 

 

 

そこから先は、シグレの独壇場だった。

 

 

「な、何なんだよ、お前…!」

 

 

人影に距離を詰め、出会い様に両脚を刀で両断し、膝から下を光の粒に変える。

正面にバランスを崩し、俯せになった男に、感情を削ぎ落したような視線を落としながら。

 

 

「…質問に答えろ」

「ぐほぁっ…!」

 

 

命令口調の言葉と共に、シグレは男の腹を蹴り上げ、仰向けにさせる。

 

 

「貴様等のリーダーは…どこにいる」

「へ、言うわけ…ねぇだろうよ?」

 

 

シグレの問いに、男は虚勢を張るように吐き捨てる。

突然、何の躊躇いもなく膝下を斬り飛ばされたことによる恐怖こそある。

しかし一方で、シグレのカーソルが緑であることが、男に若干の余裕を生む。

こいつは、人を殺したことがない。

だから、殺せない。

少なくとも、躊躇うはず。

その隙をついて、転移をすればいい。

そう考えていた。

 

 

「そうか」

 

 

シグレは武器を構えるでもなく、力なく持ったまま、溜息交じりに返事をする。

男は、シグレに隙ができた、と。

今のうちに転移を、と、懐から転移結晶を取り出し。

 

 

「…残念だ」

「転……ぎゃあああぁぁぁぁっ!?」

 

 

転移先を言い、離脱しようとした瞬間に肩を切り飛ばされ、転移結晶を手放す。

幻肢痛だろうか、男は悲鳴を上げる。

シグレは転移結晶を拾い上げ。

 

 

「……もう一度聞く。貴様らのリーダーは、どこにいる」

「し、知らない!本当だ…嘘じゃない!」

 

 

必死に弁明をする男に、シグレは無言。

ならもう用はない、と言わんばかりに喉元に刀の切っ先を当てる。

いよいよ死の恐怖にかられたのか。

 

 

「…た、頼む。知りたい事は何でも答える!欲しいものがあれば手に入れる!だから…だから、頼む、殺さないで……!!」

 

 

必死の命乞い。

情に厚い人間ならば、そこで刀を納めていたかもしれない。

しかし、憎悪にかられたシグレは、そんなことは考えない。

 

 

「…お前は今まで、その言葉を何度聞いた?」

 

 

シグレの言葉に、男の脳裏には走馬灯が過った。

命乞いの言葉は、男自身、何度も聞いてきた。

だが、自分はどうしたか。

 

 

「…因果応報だ」

「やめ、やめてくれええぇぇぇっ!!!!」

 

 

シグレは、命乞いの言葉を叫ぶ男の口に刀を突き刺し、喉奥に風穴を開けた。

男の喉奥から突き入れられた刀が首の裏を貫通し、地面を刺す。

 

 

「あ、が……っ」

 

 

言葉にならない絶叫をしながら、男を光の粒に変えるシグレ。

男はオレンジプレイヤーだった為、シグレのカーソルは緑のまま。

シグレは地面に刺さった刀を引き抜きながら。

 

 

「……」

 

 

手元の転移結晶を放り捨て、刀を納めて歩き出す。

 

 

混乱する記憶の中で見つけた、為すべきこと。

 

 

…それはあまりに、歪んだ決意であった。


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