ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
管理区と呼ばれるエリアにて。
「…あれ、シグレは?」
ふと、フィリアが気づいたように辺りを見回す。
コンソールを確認していたキリトも、その声に顔を上げて辺りを見回すが、姿はなかった。
「……あいつ、どこに…」
てっきり、辺りを見ているのかと思っていたキリトは舌打ちをする。
このゲーム開始の頃から、一人で突っ走っていく部分があった事を知っていたはずなのに。
いつかは連れて帰って、皆と再会して、また攻略に戻れると思っていたキリト。
シグレを探しに行くべきか、調査を続けるべきか悩んでいたが。
「…これ、ちょっと見て。少し形は違うけど…転移門じゃない?」
フィリアの言葉に、キリトは目を見開く。
それは、多少違いはあれど、見慣れたもの。
「…間違いないな。これで帰れるぞ」
「そう……よかったね」
どこか他人事のフィリアにキリトは不思議そうに尋ねる。
「どうしたんだ、フィリア…あんまり嬉しそうじゃないな。一緒には……帰らないのか?」
「…私は、一緒には行かないから」
その答えに、何か事情があるのだろうと、何となく察する。
カーソルがオレンジである事も、止むを得ない事情があるのだろうと、思っていたから。
「そうか…でも、また来るよ」
「それは…シグレの事があるから?」
「それもあるけど、単純に…この場所に、ホロウ・エリアに興味があるんだ」
キリトが言う、未知のエリア、未知のスキル、未知のモンスター。
そういった、まだ知られていない何かが、キリトのゲーマーとしての情熱を掻き立てる。
死んでしまえば現実でも死んでしまうというのに、その状況を楽しんでいるキリトにフィリアは苦笑した。
「…でも、その気持ちは、何となくわかるかな」
そうして、少しだけ楽しい雰囲気になりつつ。
「……もし、ここに来ることがあるなら私にメッセージを頂戴。ここに来るようにするから」
「あぁ。俺はいったん戻るよ…気をつけてな」
「…ありがと」
そんな言葉を交わし、キリトは転移の光に包まれていく。
きっと、アインクラッドに戻ったのだろう、とフィリアは考えながら。
「…行っちゃった、か」
フィリアは一人、呟く。
「…転移」
キリトと同じく、転移門に近づき呟く。
しかし。
『システムエラーです。ホロウ・エリアからは転移できません』
キリトのように、転移はできなかった。
フィリアからすれば、分かっていたことだったのだが。
「私って…何なんだろう」
フィリアは一人、溜息を吐きながら、諦めるように。
転移門から背を向け、コンソールで外へと転移していくのだった。