ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
*** Side Strea ***
キリトに連れられ、ホロウ・エリアへ。
「っ…?」
管理区の外、視線をやり、シグレを探す。
しかし、それらしき影は見当たらない。
「今、フィリアにメッセージ飛ばした。こっちに来るってさ」
「う、うん…」
キリトがそう、教えてくれる。
慌てずとも、ここにシグレは来る。
そう言ってくれたけど、死んでしまう瞬間を見てしまったアタシは不安しかない。
「シグレ…」
キリトが言うシグレは、アタシが想うシグレだろうか。
シグレはちゃんと、アタシの事を覚えてくれているだろうか。
アタシはちゃんと、いつも通りに接することが出来るだろうか。
他にも、いろいろな不安が巻き起こり、シグレに会いたいけど、会いたくないような、妙な感じになる。
「…っ!」
やがて、二人の人影が、近づいてきた。
「お、きたきた……ストレア?」
キリトは手を振っているが、アタシはそんな余裕がなかった。
胸元をどれだけ抑えても、緊張の高鳴りが、止まらない。
一人は、知らない女の人。
きっと、キリトが言ってた、フィリアって人…だよね。
そして、もう一人。
手を引っ張られ、溜息交じりなその人影は、見覚えがありすぎて、一瞬息が詰まる。
無茶苦茶な方法とはいえ、アタシを救ってくれた、その人を見間違うはずがない。
まして、AIなのだ。
多少の偽装くらい見破れる。
けれど、それでも偽物ではない、その姿に。
「シグレ…?」
アタシは恐る恐る、手を伸ばして問いかける。
今まで、両手剣を振るっていたのが嘘のように。
自分でもそう思えるほど、震え、弱々しい自分の手。
「…ストレア…か?」
シグレに名を呼ばれる。
なんで疑問形なのかは分からなかったけど、ちゃんとアタシを覚えてくれていた。
目の前にいるのは、確かにシグレで。
そして、アタシの事を覚えてくれている。
それだけで、アタシは十分だった。
「シグレぇ…!」
肩が震える。
目元が、熱い。
何かが、頬を伝う。
それが何かは、わざわざ答えを探す必要はない。
だって、分かりきっているから。
「っ…う、ぅ…」
目の前が歪む。
ちゃんと、シグレを見たいのに、見れない。
手の甲でどれだけ拭っても、止められない。
だけど、ぼんやりと見えた、シグレの表情は、いつもと変わらないように見えるけど、実は困ってる。
シグレの何度も見た、この表情を、アタシが忘れるわけがない。
あぁ、ちゃんとシグレだ。
その答えが、アタシの体を突き動かす。
衝動的に動いてしまったけど、きっとアタシは悪くない、と思う。
もう、この感情は、自分では止められなかった。
「っ……」
体当たりをするように、アタシはシグレに抱き着き、シグレの背中に腕を回す。
ちょっと、呻くような声が聞こえた。
だけど、そんなことは知らない。
もう、この温もりを手放したくない。
その想いを、シグレに伝えるように、シグレを抱き寄せる。
「シグレ…シグレぇ……!」
ずっと感じたかった、この温もり。
その温もりが、アタシの冷え切った心を癒していくような、不思議な感覚に包まれる。
ただ、シグレの名前を呼ぶだけで。
少しずつ、胸の奥が温かくなるような、そんな感覚。
シグレは抱きしめ返してくれなかったけど、それでも、アタシは満足だった。
「ちょっと…」
「…すまんフィリア。少しだけ…そっとしておいてやってくれないか?」
「……むぅ」
キリトとフィリアの声が、外野のように聞こえてしまう。
ごめんね、完全にアタシの我儘。
だけど…もう少しだけ、こうする時間を頂戴。
「……とりあえず、落ち着け」
「無理だよ…シグレのバカ」
「ぐ…」
アタシの答えに言葉を詰まらせるシグレ。
「…シグレがアスナに刺されて死んじゃってから、アタシ…すっごく辛かった」
「……」
「もうシグレに会えない。シグレと話せない…っていうだけで、消えちゃいたいって思うくらい」
それは、偽らざるアタシの想い。
「……もう、アタシを置いていかないで…一人にしないで……!」
ただ、傍にいるだけでいいから。
そこで、シグレが生きてさえいてくれれば、それ以上は何も望まないから。
「もう、こんな想いするのやだよ…シグレ……!」
無意識に、腕の力が強まる。
「……世話をかけたな」
言いながら、あやすように背中を叩いてくるシグレ。
本当だよ、シグレのバカ。
「もっと…ぎゅって、抱きしめてほしい…って、言ったら駄目?」
…だから、今だけ。
今だけは少しくらい我儘言っても…許してくれるかな。
*** Side Strea End ***