ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
それを正に言おうとしていて、キリトに先手を打たれたのか。
「どうして!」
少しだけ声を荒げるシノン。
しかし、キリトは表情を崩さない。
「あのストレアって人は案内したじゃない!彼女はよくて、なんで…」
「……」
感情のままに立ち上がり、見下ろすようにしながらシノンは反論する。
けれどキリトは座ったままシノンに視線を向ける。
キリトもまた、譲れない、という意志をもった視線を向ける。
「それに…私は先輩を追いかけてここまで来たのに…どうして邪魔するのよ!?」
ついには感情の爆発に泣きそうになるシノンの表情を見て、キリトは観念したように。
「…勘違いしないでくれ。俺は別にシノンの邪魔をしたいわけじゃない」
「なら何で…」
「ちょっとゲーム的な話になるけど…自分のレベル、分かるか?」
キリトの言葉に、シノンは少しだけ落ち着き、メニューを覚束ない手つきで操作する。
「レベル…56……」
「……あぁ」
シノンはそのレベルを読み上げ、やがてここに来て知り合った皆のレベルを見て、キリトの言うことに納得したのか、強くは言わなかった。
「シノン。今の君じゃ、おそらくこの層のフィールドの弱いモンスターにようやく渡り合える程度だと思う」
そこから、キリトはこのゲームにおける、安全マージンについて話をする。
ここが76層であることも付け加えて。
「…レベル86くらいはないと、ここにすらいるのが大変ってことね」
「あぁ。それに今シグレがいる場所は、今のシノンの倍近くのレベルのモンスターがひしめき合ってる」
そんな危険がある状態で、連れて行くわけにはいかない。
それがキリトの言い分だった。
言っている意味は、シノンも理解ができた。
だからこそ、それ以上は反論しない。
とはいえ、落ち込んだシノンに何も言わず、という程突き放すことができなかったキリトは。
「……そう、だな。90…くらいかな」
「え?」
「レベル90になって、それなりに戦えるようになったら…シノンをホロウ・エリアに…シグレのもとに連れていく。それでどうだ?」
そう、提案する。
キリトの提案に、シノンは一瞬呆けるが、少し考える。
ここからだいたい、レベルを30ちょっと上げなくてはならないことになる。
「…そのレベルになるのに、どのくらいかかるかしら?」
「ん?んー……」
シノンの問いに、キリトは少し考える。
自分は二年間でようやく100なのだ。
普通に考えれば、半年近くはかかるだろう。
とはいえ、ここでシノンを手伝えば、最初はかなりレベルは早く上がっていくだろう。
それを考えると。
「…俺も確証はないけど、少なくとも2~3ヶ月は…かかるんじゃないかな」
「そう…」
そう、キリトは告げる。
それが妥当な数字かどうかはわからないが、少なく見積もってもそのくらいは、というキリトの意見。
その言葉に、シノンは少し考え、やがて人差し指を立てる。
「……なら、一ヶ月」
「………は?」
シノンの言葉に、一瞬呆けるキリト。
「一ヶ月で…レベル90になって見せてあげるわ」
「いやいや…シノン。いくらなんでもそれは…」
無茶苦茶を言っている、とキリトは苦笑しかけ、すぐに言葉に詰まる。
シノンの視線は、本気だった。
「…かなり大変だぞ、それ?」
「……私はゲームを楽しみたくて、ここに来たわけじゃない。そのくらいの覚悟はとっくにしてる」
折れる様子のない、強い意志のシノンにキリトは苦笑する。
「…わかった。アドバイスとか手伝ったりはするから、いつでも言ってくれ」
「あら。最初から手伝わせるつもりだったのだけど?」
条件を突きつけたのは貴方なんだから、当然でしょう?
そう言われ、キリトは笑う以外の選択肢がなかった。