ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第26話:目的を果たすために

シグレ達は、現在ある場所を目指していた。

その場所の名は『遺棄された武具実験場』。

フィリアの武器の強化素材の収集の目的だった。

 

 

「……」

 

 

為すべき事がある、とはいっても目的地がないシグレ。

シグレを追う目的のみでこの場にいるストレア。

二人に目的地がないため、フィリアに目的地があれば自ずとその場に赴く形になる。

敵を穿ちながら先陣を切って進むシグレにストレアとフィリアが続く形になっていた。

それが、フィリアは何となく居心地が悪かった。

自分の目的で来ているというのに、自分は楽をしている。

 

 

「…ねぇ、シグレ」

 

 

自分も前に出ると申し出ようとするフィリア。

しかし、そんな彼女の前に、シグレが何かを突き付ける。

 

 

「な、何?」

「…これは、お前が探しているものか」

 

 

その手に握られていたのは、シグレが倒したモンスターからドロップしたと思われる素材。

その素材は、シグレの言う通り、フィリアが探しているもので。

 

 

「う、うん」

「…そうか。ならこの辺りでもう少し粘れば数は揃うか」

「ん…」

「これは持っていろ」

「わかった…」

 

 

有無を言わせず素材を渡すシグレに、フィリアはただ受け取るしかなかった。

それでもパーティを組んでいるため経験値は入るので、自然にレベルが上がっていく。

 

 

「…ねぇ、ストレア」

「ん?」

「あいつって、いつもあぁなの?」

 

 

フィリアとて、熱狂的なゲーマーではないにせよ、ここにいる以上、ゲームとして楽しむつもりだった。

だからこそ、自分なりにどう楽しむかという考えがあった。

しかし、シグレの戦い方に違和感があった。

それはまるで。

 

 

「ゲームをしてるっていうか、むしろ戦うためにここにいる、みたいな…」

「うーん…」

 

 

そんな会話をしながら、シグレがその場のモンスターを一掃し、刀を納める。

次の瞬間。

 

 

「う…くっ……」

 

 

シグレが突然、刀を持っていなかった方の手で頭を押さえ、その場によろめく。

 

 

「シグレ!?」

 

 

突然の様子にストレアが駆け寄るが、シグレはその場に倒れるでもなく踏み止まる。

しかし、頭を押さえる手に力が入っているのか、髪の毛が手の中で乱れる。

シグレは何かに耐えるように息を整えながら、痛みに耐えているのか目を閉じる。

 

 

「……大事はない」

 

 

ストレアの心配げな表情を見ながら体勢を整える。

やがて、フィリアに向き直り、先ほどの戦いで手に入れたのか、素材をフィリアに見せる。

 

 

「…これで、足りるか?」

 

 

目の前に見せられたのは、10近くの素材。

それを見せられ、驚いたことが半分。

シグレの様子の変化に対する心配が半分で。

 

 

「あ、うん…大丈夫」

 

 

反射的にそう返事をする。

実際に数は足りていたので、嘘は言っていないが、言いたいことを言う機会を逃してしまっていた。

 

 

「…なら、二人は管理区に戻れ」

「え?シグレは?」

「忘れたか。俺はそこには入れない」

 

 

シグレの提案にストレアが言い返すが、シグレは冷静に返す。

 

 

「というか、なんで私達だけ…」

「…何のために素材を手に入れたんだ」

「あ…」

 

 

素材を手に入れたのはフィリアの武器の強化のため。

ふと思い出させられ、フィリアは抜けたような声を漏らす。

その様子にシグレは溜息を吐き。

 

 

「武器強化をするなら一度向こうに行く必要がある。この中でそれが出来るのはストレアのみ。加えて、強化の間はフィリアは武器がなくなるため安全地帯からは出られない」

 

 

なら、二人で管理区に戻ればいい。

シグレの言葉は、正論だった。

フィリアには、言い返す材料がなかったが。

 

 

「…シグレは?」

「俺はそもそも管理区に入れない…近くで待つより他あるまい」

「でも、さっき具合悪そうだったのに、モンスターがいるところで一人じゃ危ないよ…」

 

 

シグレが事実を淡々と述べるが、ストレアの心配は止まらない。

そんなストレアに対しシグレは溜息を吐き。

 

 

「…大事ない、と言ったはずだが」

「信じて…いいんだよね?」

「あぁ」

 

 

ストレアにそう告げると、ストレアはやがて顔を上げ。

 

 

「…分かった。できるだけ早く戻るから…待ってて」

「あぁ」

「行こ、フィリア」

「え、えぇ…」

 

 

いっそ、早く終わらせればいいだけ、と思ったのか、慌てるようにストレアがフィリアを引っ張っていく。

シグレはそんな二人についていくように歩を進めるのだった。


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