ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第28話:影は嗤う - I

そうして、数分の戦いの後。

 

 

「…」

 

 

シグレは刀を納める。

もうその場に、モンスターはいなくなっていた。

 

 

「…行くか」

 

 

石畳の床を進み、扉に向かう。

シグレのHPは殆ど減っていなかった。

 

 

 

そうして、建物の外に出て、中庭のような場所に出る。

次の瞬間。

 

 

「っ……」

 

 

入ってきたというべきか、出てきた扉が結界のようなもので閉じられる。

しかし、辺りは静かで、草木がさらさらと揺れるのみ。

とはいえ、閉じ込められた以上、何かが起こる。

そう考え、刀の柄を握ったまま、警戒は解かない。

 

 

…次の瞬間、自分の影が突然大きくなっていく。

その影は毒々しい何かを吹き出す。

 

 

「…ちっ」

 

 

刀を抜き、その場から飛び退く。

しかし、それが若干遅かったのか。

 

 

「くっ…」

 

 

毒の状態異常を受けてしまう。

初めは道具を持っていたのだが、攻略の中で使い果たしてしまっていた為、毒の回復はできなかった。

つまりは、一定のダメージを受け続けながら、自分のHPが尽きる前に。

 

 

「…これを、倒せということか」

 

 

先ほどまで自分がいた場所に現れた、四本足の漆黒の魔物。

形は大きさを除けば狼のような獣に近いが、顎はどちらかというと鰐に近く見える。

所々に宝石のような物質が生えている様子が、非現実な存在であることを余計に強調する。

全身に鎖のようなものが巻かれ、動きを阻害しているようだが、それでもこの場を縦横無尽に駆け回るには十分なようだった。

 

 

「……一人できて、正解だったようだな」

 

 

大きな咆哮を上げる魔物を、HPを少しずつ減らしながら刀を構えるシグレ。

シグレが単独行動を主とする理由。

それは、人に合わせた戦い方が苦手というのがあるのは事実だった。

しかし、それ以上に考えるのは、組んだ相手の、万が一の事態。

手の届きそうな場所にありながら、救えなかったら、という仮定。

シグレは、それを現実にしてしまったことがあった。

だからこそ、そんな思いは、もう、したくない。

それが、シグレを突き動かす、衝動。

だからこそ、シグレは一人であろうと。

自分の命の危機ともいえる状況であろうと、戦い続ける。

それこそが、守ることだと、シグレは思い続けてきた。

 

 

「……俺には、こういう戦い方しか、出来ない」

 

 

刀を構える。

仮にここで死んでも、後に繋がれば、それでいい。

キリトに、自分が死ねば悲しむ者がいる、と言われたことを思い出す。

そんな相手を守るには、どうすればいいかを、シグレは知らない。

 

 

「…それほど、時間がない…か」

 

 

仮にここでボスを倒しても、毒がその身を蝕み、やがて自分は消える。

安全エリアへの進入が許されないその身は、いずれ滅びるのかもしれない。

或いは、自然に毒が癒えるのが先か。

それでも、ここでこの敵を倒し、それが誰かを守ることに繋がるのなら、やるだけ。

何をしたわけでもないのに、HPはじわりじわりと減っていく。

相手の速度は速いが、シグレには追えないほどではない。

ならば。

 

 

「…距離を詰めて戦えばいいだけのこと」

 

 

言いながら、シグレは地を蹴る。

シグレの命のタイムリミットがある戦いが、始まる。

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