ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第29話:影は嗤う - II

シグレは即座に敵…シャドウファンタズムに距離を詰め、刀を振るう。

しかし、相手の素早い動きに、決定打を与えられずにいた。

 

 

「ちっ…」

 

 

その間も、じわりじわりとHPは減り続ける。

毒の効果が続いていたのもあるが、敵に接近する以上、流石に無傷というわけにはいかなかった。

これまでであれば、それほど強大とはいえない敵で、攻撃を凌ぐのも容易であった。

しかし、今のようなボス相当の敵相手ではそうもいかなかった。

 

 

「ガアァァァッ!!」

 

 

咆哮を上げながら、前足を叩きつけてくる。

シグレはそれを見切り、回避するために動く。

 

 

「っ…!」

 

 

後ろではなく、前に。

シグレは懐に飛び込み、下からボスの下腹部に斬撃を入れる。

しかし、隙をついても結局は通常攻撃の範疇。

相手の体力を削りこそすれ、決定打にはならない。

更に言えば。

 

 

「ちっ…」

 

 

シグレ自身のHPの減少が止まらない。

相手のHPゲージはようやく3本中1本を削り取った程度。

しかし、自分のHPは半分を切っていた。

このままでは、先に力尽きるのはシグレだということが火を見るより明らかだった。

 

 

「……っ!」

 

 

しかし、シグレは止まらない。

どちらかが倒れなければここからはいずれにしても出られない。

ならば戦う以外の選択肢はない。

何より、自分が守ると決めたものを、守れないかもしれない。

シグレは何より、それが許せない。

だからこそ、シグレは再度刀を手に相手に突撃する。

 

 

「そう簡単に…落とせると思うな」

 

 

シグレは近づき、一閃。

決して決定打にはなりえない斬撃。

 

 

「ガアアァァッ!!」

 

 

しかし、相手もやられっぱなしではなく、鎖に拘束されたその身を翻しながら、シグレに反撃をしていく。

 

 

「ちっ…」

 

 

即座に後ろに飛んで回避するが、それでも体格差があり、無傷では躱せなかった。

それが幾度となく繰り返されている。

シグレがボスに与えるダメージは刀による斬撃のみ。

一方、シグレが受けるダメージは毒と、ボスの攻撃。

どちらが不利かは言うまでもない。

ましてや、ボスはHPゲージ3本、シグレは1本。

その差を埋めることは容易ではなかった。

 

 

「…あと、半分か……!」

 

 

ボスのHPゲージの2本目が半分に近くなる。

全体の半分を削る頃、シグレのHPは1/4近く。

事態の好転など見込めるはずもなく、シグレの不利が変わるわけではない。

しかしそれでも、シグレは止まらず。

 

 

「っ…!」

 

 

シグレはボスとの距離を詰める。

そうして、スキルに頼らない、普通の斬撃。

もう、どれだけそれを繰り返したか分からない。

やがて、2本目のHPゲージがもう少しで削り切れそうという頃。

 

 

…突然、ボスがその場で咆哮を上げる。

 

 

「っ…!?」

 

 

今までと違う行動に、シグレは一度距離を取ろうとする。

しかし、懐に潜り込んでいたシグレは間に合わず。

 

 

「ガアアァァァァァッ!!!」

 

 

一際大きな雄叫びを間近で聞き、次の瞬間、ボスを縛っていた鎖が弾けるほどの衝撃が辺りを襲う。

それほどの衝撃を、シグレは回避しきれず、直撃してしまい。

 

 

「がっ…!?」

 

 

吹き飛ばされ、崩れた柱のような残骸に背中から直撃してしまう。

シグレはその衝撃に耐えきれず、その残骸の近くに崩れ落ち。

 

 

「ぁ……ぐ…!」

 

 

立ち上がろうにも、仮に痛覚が遮断されているとしても、体が言うことを聞かない。

俯せになった身体を、自分の腕で起こそうとするが、腕に力が入らずに崩れ落ちてしまう。

シグレに残ったHPは数ドットとでもいうべき量で、当然ながらレッドゾーン。

あと一撃を食らえば、死であることを直感的に理解するシグレ。

しかし身体は言うことを聞かず、一方でボスは鎖が外れ、先ほどより悠然とした動きでシグレに近づく。

 

 

「ちっ…!」

 

 

舌打ちをしながら、腕を振り上げるボスを見上げ、睨みつける。

鎖から解放され、不気味に避けた口元は、どこか愉悦が浮かんでいるようにも見える。

そんな怪物の前足が振り上げられ、シグレを捉える。

 

 

…シグレはそんな最後の一撃を受ける覚悟と共に、目を閉じる。

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