ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
*** Side Kirito ***
第1層、ボス部屋前。
昨日のボス攻略会議の参加者は皆、今ここにいる。
ボスを倒し、上を目指すために。
そして、解放の時に向けて歩みだすために。
「…皆、俺から言えることはたった一つだ…勝とうぜ!」
ボスの扉の前に立ち、皆を鼓舞するリーダーのディアベル。
その言葉が、これから命をかけた戦いが始まることを意味している事に息を呑む。
「……」
隣にいるアスナは、フードを目深に被っていて表情が窺えない。
人を探してる、って言ってたっけ。
けど、ここに来るまでの間、いたのはモンスターばかり。
人影は見なかった。
最悪の予想が脳裏を過る。
「なぁ…」
探している人物について尋ねようとしたが。
「行くぞ!」
気合を入れるように声を上げ、扉を開くディアベルに、俺の言葉は中断された。
そうして、扉を開けた先にあるのは、ステンドグラスのような色遣いで彩られた大きな部屋。
その奥には玉座があるが、そこにボスの姿はない。
「…?…どこだ…?」
誰かが呟く。
あまりに妙だった。
ボスの部屋にこれだけの人数で押し入ったのに、ボスとの戦闘が開始しない。
それでも、場所が場所だけに油断できず、誰も武器を納めない。
「……?」
360度、部屋中を見渡す。
すると、その中で唯一見つかったのが。
「おい、これ…確かボスが使うって情報にあった武器じゃないか!?」
誰かが驚くように言う。
明らかにプレイヤーが装備できるサイズを超えた斧武器。
それが誰が持つでもなく、地面に落ちているという事実。
ボスが倒された、と認識するまでにそう時間は要らなかった。
「まさか…」
あの時会った、あいつが…?
「……」
アスナもその結論に至ったのか、あたりを見回している。
とはいえ、その人物はこの場にはいないようだが。
すると。
「…なんや、次の階層への扉、開いとるやないかい!」
次階層への扉が開かれていることに気づき声を上げる。
声の主はボス攻略会議で、βテスターに意見をしていたからよく覚えている。
確か、キバオウとかいう男だ。
「っ…!」
その言葉に反応するように、アスナは駆け出す。
その先は、第2層への扉の先。
「お、おい…!」
慌てて追いかけるが、さすがに速い。
これまでの戦いを見て、アスナが速度重視なのは分かっていたが、戦闘以外でそれを活かさなくてもいいだろうに。
「…何が、どうなってるんだ……?」
気合を入れていたディアベルが、わけが分からないといった感じで呟いているのが耳に入る。
…俺もよく分からないけど、多分あいつがやったんだろう、という根拠のない確信があった。
*** Side Kirito End ***