ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第43話:罪人の邂逅

あれから、どれくらい敵を倒し。

どれくらい、この地を駆け回っただろうか。

途中、大型の敵も何度か見た。

 

 

「ちっ…」

 

 

武器の刀は刃零れを起こし、そう長くは持たないであろう事を予測させる。

このまま進めば、いずれ武器を失い、戦う術を失えば、待っているのは死。

それは容易に想像できる。

しかし、シグレに戻る、という選択肢はなかった。

 

 

「…」

 

 

もしそうすれば、今直面している危険からは逃れられるだろう。

けれど、そうすれば、いずれあの二人を巻き込んでしまう。

シグレは自分の死よりも、その事を懸念していた。

人ですらない、人格プログラム、AI。

この世界で人を殺したと語る、オレンジカーソル。

何も知らない者からすれば、二人の命は、通常のプレイヤーのそれより軽んじられる者かもしれない。

しかし、シグレからすれば、そんな事は些細なことだった。

一度守ると決めたものを、最期まで守り通す。

一度、失敗してしまった。

だからこそ、もう失敗をしないために。

 

 

「…俺は、間違っていない」

 

 

何も、間違っていない。

あの二人も、ここにはいない、皆も。

俺と同じ世界に来るべきじゃない。

 

 

「……」

 

 

すっかりガタガタになった刀の柄を握り締め、一歩、また一歩と歩を進める。

その瞬間。

 

 

「くっ…」

 

 

シグレの目の前の視界が霞む。

そして、もはや見慣れたシステムのメッセージ。

 

『Disconnected. Retry connection...』

 

―接続失敗。再接続を試行―

 

『Connection established successfully.』

 

―接続成功―

 

徐々に頻度が上がってきているとは思いつつ。

 

 

「ガアァァァッ!!」

「っ…!」

 

 

背後から襲ってくる魔物に間一髪で反応し、刀を振るう。

ギリギリで間に合い、魔物を光の粒に変える。

今回は間に合ったから、いい。

…しかし、もし気を失った瞬間に魔物に襲われたら。

 

 

「…考えても無駄か」

 

 

軽く額に手をやり、溜息。

何かが変わるわけでもない。

それでも、少し落ち着いただけでも、意味がないわけではなかった。

そうして、また歩き出そうとした瞬間。

 

 

「…そうそう。考えたって無駄なんだからよォ…愉しもうぜ?」

「っ!!」

 

 

突然背後から聞こえた声に反応し、刀を抜いて振り返る。

 

 

「シッ!」

「…くっ」

 

 

振り下ろされた包丁を、刀で受け止める。

勢いよく振り下ろされた武器と、それを受け止める武器。

重力の助けがある分、包丁の方に分があり、シグレは若干押される。

そうでなくとも。

 

 

「おいおい、随分ボロボロじゃねえか…そんなんで戦う気か?この俺と」

「……そうだ。俺はその為にここまで来たんだからな」

 

 

ニヤリと笑みを浮かべるPoHに、シグレは面白くなさそうに返す。

それでも、何もしないよりは、とシグレは空いている方の手で、近くの草を数本毟り、それをPoHめがけて投げつける。

いくらダメージを受けないとはいえ、目の前を舞えばさすがに鬱陶しかったのか。

 

 

「ちっ…」

 

 

包丁を振り下ろす力が一瞬緩む。

シグレはその隙を見て、後ろに反射的に飛び、距離をとる。

 

 

「賢しい真似してくれるじゃねェか?HAHAHA」

「っ……」

 

 

笑いながら言うPoHに、シグレはすぐに距離を詰め、今度はシグレが刀を横薙ぎに振るう。

しかし。

 

 

「…っと。危ねェな」

 

 

PoHはあっさりとそれを自分の武器で受け止める。

その瞬間。

 

 

「っ……!」

 

 

シグレの刀が、根元から折れてしまい、光の粒になってしまう。

限界が来てしまっていた。

完全に丸腰の状態になってしまったシグレ。

しかも相手はそこらの魔物ではなく、プレイヤーを殺す事に長けたPK専門のプレイヤー。

PoHの口元が、歪む。

 

 

「…終わったな」

 

 

振り下ろされる、包丁。

万事休す、という言葉がシグレの脳裏に浮かぶ。


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