ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第47話:厄介な仲間 / Kirito

*** Side Kirito ***

 

 

 

ユイと話をしてからというもの、シグレ達とは会っていない。

理由は大きく二つ。

一つは、こちらの攻略が本格的に進み始め、ホロウ・エリアに行く時間が減っていること。

もう一つは、ホロウ・エリアに行ってもシグレ達がいなかったこと。

皆の余計な心配を減らすため、シグレの事は皆には伝えていない。

その為、シグレを探すのは基本的に一人だった。

その事もあり、管理区から外に出る危険を考えると、管理区で遭遇できなかった場合は諦めるのが妥当だと考えていた。

 

 

「……ふぅ」

 

 

あれから攻略はそれなりに順調で、現在は86層まで攻略が進んでいた。

幸運なことに、被害者は今のところ出ていない。

しかし攻略自体が楽なわけではなく、危ないことも何度もあった。

 

 

「…戻るか」

 

 

街中で一つ息を吐き、エギルの店に戻ることにした。

 

 

 

そうして、戻ってみると、耳に入るのは。

 

 

「だから、彼は私達の敵ではないと!」

「…っなら75層で奴はあんたに剣を向けた!あんたがあいつを殺してなかったら、敵を増やしていたことになるだろ!」

「くっ…」

 

 

言い争いの声だった。

聞き覚えのある女性の声と、聞き覚えのない男性の声。

聞き覚えのある声はアスナで、両方とも攻略組であることは分かっていた。

 

 

「…なぁ」

「ん?」

「なんで言い争ってるんだ、あいつら…」

 

 

近場にいたケイタに尋ねると。

 

 

「…あぁ、ここでちょっとシグレの話題が出てて。75層の事であいつを敵だと思ってる人が言いがかりをつけてる…ってところかな」

「なるほど」

 

 

やれやれ、といった感じのケイタだが、やや視線は厳しい。

 

 

「…もういい。もしあいつが入るのなら俺…いや、うちのギルドは抜けさせてもらう。余計な面倒ごとは、ごめんだからな」

「っ……」

 

 

相手の方も、そこそこに名が通る実力者。

それが故に、ポリシーのようなものがあるのだろう。

それ自体はどうこう言うつもりはない。

けど、今戦力が削られるのは痛いな…

 

 

「…お前は確か、『月夜の黒猫団』…だったか」

「どうも」

「お前達も、俺達に協力する気はないか?あんな敵をあてにせずとも我々なら攻略を進められるだろう」

 

 

ケイタを見ると、少し悩んだ素振りを見せていた。

現実として、月夜の黒猫団は少人数ギルドながら、ここにきてかなり実力を上げており、それが攻略組の目に留まっていることも知っていた。

 

 

「……悪いけど、遠慮するよ。攻略を貴方達で進めるなら、貴方達だけでやってくれ」

「何?」

 

 

ケイタの言葉に、相手は少しだけ顰め面をする。

返事が気に入らなかったのだろう。

けれど、ケイタもそれに怯むことなく。

 

 

「…理由を聞いても?」

「簡単さ。貴方が、ともに戦う仲間すら信頼できない人だから」

 

 

はっきりと返していた。

 

 

「こうして攻略組に加わる事は確かに目的だった。けど俺にとっては…一番は仲間の安全だ」

「それは私達だってそうだ。だからこそ敵になりうる存在を遠ざけるために…」

「……なら貴方は、彼の何を知ってると?」

「奴が何であろうと、75層で我々の前に立ち塞がった。それこそが全てだろう」

 

 

お互い平行線の言い合いだった。

 

 

「…確かにシグレはあの時は敵だったかもしれない。けど、シグレがいなかったら、今ここに『月夜の黒猫団』はなかった」

 

 

ケイタが言っているのは、27層の迷宮区のトラップの話だろう。

あの時、俺達が突入した時、あいつは本当に死ぬ寸前だった。

まさに、命を懸けてこのギルドを守ったシグレ。

それはケイタもちゃんと理解していた。

 

 

「…それにシグレは、俺達のギルドのメンバーなんだ。うちのメンバーを貶すような事はやめてもらいたいね」

「……どうやら、相容れぬようだな」

「そのようで」

 

 

それを最後に、ケイタと言い争っていた男は店を出て行った。

 

 

「…あそこまではっきり言いきるとは、思わなかったな」

「いや、攻略組としてはまずかったとは思ってるんだけど…ごめん。仲間を貶されて頭に血が上っちゃって」

 

 

ごめんごめん、といった感じのケイタに思わず笑みが零れた。

ギルドのメンバーを、仲間を本当に大切に思うケイタ。

そしてその仲間の中に、周りから敵だと思われる奴がいたとしても見捨てない。

それどころか仲間の為に、自分から敵になる。

 

 

「全く…あいつが戻ってきたら、少し首輪でもつけておこうかな?」

「その時は何かアイテムを見繕っておくよ。厄介なメンバーを持つと苦労するな?」

「全くだ」

 

 

ケイタと笑いながらそんな会話を交わす。

お前を仲間だとはっきり言いきって、信じてる人がいるってこと。

 

 

…まさか、気づいてるよな?

 

 

 

*** Side Kirito End ***


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