ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第56話:決意 - III

それ以上はないと思っていたシグレ。

そして、これ以上の問答も、全てが不要だと言わんばかりに。

 

 

「……これが最後の通告だ」

 

 

シグレはそう、言葉を続ける。

その視線は殺気こそ抜けているが、冗談などない口調で。

 

 

「…俺は奴を殺すつもりでここにいる。邪魔をするつもりなら…たとえお前たちだろうと、俺は容赦なく切り捨てる。それが嫌なら、ついて来ないことを勧める」

 

 

シグレは容赦なく言い放つ。

ストレアは、何も言わない。

シグレが本気だと察したのか、それとも別の理由か。

それはストレア自身にしか分からないことだが。

 

 

「……」

 

 

シグレはそもそも大所帯にするつもりもなく、離れるならむしろそちらの方がいいと思っていた。

これまで、シグレは一人だったからこそ。

誰かと肩を並べて戦うことを知らない。

だからこそ、とシグレは考えていた。

 

 

「…何、それ」

 

 

それに反応したのは、フィリア。

その口調からは、少しばかり怒りが汲み取れる。

それを隠すつもりもないのか、シグレに勢いよく歩み寄り。

 

 

「っあんたは…なんで、なんでそうなのよ!?」

 

 

勢いよくシグレの胸倉を掴む。

突然の行動にシグレも反応しきれずに言葉を失う。

 

 

「そりゃ私も驚いたわよ!あんたは私を守ってくれた、助けてくれた…けど!」

 

 

一瞬言葉が詰まるフィリア。

シグレは何も言わず、フィリアに視線をやる。

しかし、少しばかり俯いており、表情は窺えない。

 

 

「今は…シグレっていう存在が、よく分からないよ」

 

 

フィリアの中で、いつの間にか少しだけ大きくなっていた、シグレという存在。

自分を危険から救ってくれたことは紛れもない事実。

その一方で、人を殺したことがあるという伝え聞いた事実。

フィリアには真逆な側面を併せ持つように見えていた。

だからこそ、どちらが本当のシグレなのか。

 

 

「…ねぇ、教えてよ。私を助けてくれたシグレ。人を何人も殺したシグレ……どっちが本当のシグレなの」

 

 

縋るようなフィリアの問い。

シグレはただフィリアを見る。

いつの間にかフィリアの視線はシグレに向けられていた。

 

 

「俺は…」

「……いい、やっぱり言わないで」

 

 

しかし、フィリアは自分で投げかけた問いに対する答えを遮る。

 

 

「どうせ、あんたの事だから。助けたことは全力で否定すると思ってる」

「……」

 

 

シグレは押し黙る。

やっぱり、とフィリアは呆れ半分、苦笑半分といった様子だったが。

 

 

「どうせシグレの事だから。そうやって私たちを遠ざけようとすることぐらい、いくら付き合いが短くても分かるよ」

 

 

今までそうやって振り回されてたんだから。

そう、フィリアは続ける。

その表情はどこか吹っ切れていたというべきか、あるいは悟っていたというべきか。

 

 

「……それにね。私は、あんたが人殺しだとしても、それを信じる理由がない」

 

 

この世界に限っていえば、私だって同じことをした。

そう、自分のカーソルを指しながらフィリアは言う。

 

 

「だから…見極めたい。あんたが本当に狂った殺人鬼なのか、そうじゃないのか」

「……」

「…だから、私はあんたと一緒に進む。進んで…真実を見つける」

 

 

ただ、見極めるために。

シグレの本当を見つけるために。

 

 

「…それに、ストレアに負けてばっかりはいられないしね」

「言うねぇフィリア。アタシだって負けないよ?」

 

 

シグレから視線を外し、そんな会話を交わすフィリアとストレア。

さっきまでの雰囲気はどこへ行ったのか。

シグレはまた一つ、溜息を吐いた。


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