ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第57話:決意 - IV

少しの静寂の後。

 

 

「なら、私は…アインクラッドに、戻る」

「…いいのか?シグレと一緒じゃなくても」

 

 

そう、告げたのはシノンだった。

その発言に、キリトは少なからず驚いたようにシノンを見る。

無理もない反応だった。

何故なら、半ば自棄ともいえるペースで自分を強化したのは、シグレに会うため。

そう、本人が言ったのだから間違いはない。

そのシノンが、シグレから離れるという選択をしたのだ。

多少は驚きもするというもの。

 

 

「…言っておくけど、ちゃんと考えてるわよ?」

 

 

キリトの視線に心外、と言わんばかりのジト目を向けながら、シノンは続ける。

 

 

「さっきの話が本当なら、今先輩は危険な状態、ということでしょう?なら少しでも早く終わらせるために、キリトに協力したほうがいいと判断しただけ」

「そうか。そうだな…」

 

 

シノンの言葉にキリトも頷く。

そんな二人に、シグレをはじめ、ストレアもフィリアも、何も言わない。

シグレの事を置いても、ゲーム攻略は実力ある攻略組にとっては最優先事項。

実力をつけるために活動する中で、シノンもその域に至ったのか、とキリトも内心驚いていた。

 

 

「…それに」

 

 

シノンに思うところはまだあるらしく、言葉が続く。

 

 

「今ここで先輩に甘えてもいいけど、どうせなら現実に戻ってからの方がいいから。その方が時間が沢山とれそうじゃない?」

「……?」

 

 

少し空気が変わった感じに、シグレはシノンを少しばかり訝しげに見る。

その視線に気づいてか。

 

 

「…先輩以外の男なら私の矢の餌食にするけど、先輩ならむしろどんどん見てほしいわね」

「……」

 

 

シノンの言葉に、シグレは一つ溜息。

どうにも、締まらないというか、何というか。

 

 

「呆れてる先輩も、素敵……」

 

 

割と本気に言っているように見えるシノン。

 

 

「そ、それはともかく…シノン。現実に戻ったらっていっても、シグレと住んでるところ近いかどうかも分からないんじゃ…」

 

 

キリトが持ち直し、シノンに尋ねるが、シノンはといえば何も問題がないといわんばかりに。

 

 

「大丈夫よ。だって、同じ場所だもの」

「……は?」

「もう、これは運命といってもいいかもしれないわ。きっとそう」

 

 

シグレの反応もどこ吹く風といった感じで、どこか自分の世界に入っているシノン。

どこか宙を見上げるシノンの目には何が映っているのだろうか。

少なくともシグレは思考を放棄することにしていた。

とはいえ、放置するわけにもいかず。

 

 

「…シノン」

 

 

シグレがそう声をかけると、シノンはそれに反応し。

 

 

「あ…先輩。子供は何人がいいかしら」

「……」

 

 

その瞬間、声をかけなければよかった、とシグレは一瞬思う。

キリトに視線を向けるシグレだが、あっさりと視線を逸らされてしまう。

ストレアとフィリアに至っても、ほぼ同じ反応で。

 

 

「……その話は後にしろ。とりあえず、戻って攻略をするなら戻ったらどうだ」

「…えぇ」

 

 

シグレに諭され、ようやく現実に戻った感じのシノンに、シグレは一息をつく。

 

 

「…とりあえず、戻るから。またな、シグレ」

「とにかく…無茶は程々にしてよね、先輩」

「……」

 

 

またな、というキリトの挨拶。

それは、再会を前提とした挨拶。

それにシグレは返さない。

シノンの言葉にも、シグレは返さない。

それに対し、キリトは呆れるような苦笑で。

シノンは心配そうな表情で、シグレを見ながら、転移をしようと転移門に近づく。

 

 

「…キリト」

「?」

「あいつらに伝えておけ。俺のことは忘れろ…とな」

 

 

シグレの言う、あいつら。

それがキリトには大体想像はついていた。

だからこそ。

 

 

「お断りだ。伝えたいことがあるなら、ちゃんと生き残って…自分で伝えろ」

 

 

キリトはそう返す。

やれやれ、と何もかもを見透かしたようなキリトのその視線に。

 

 

「……」

 

 

シグレはそれ以上は何も言わず、キリトに背を向ける。

それにキリトはもう一つ苦笑をしながら、シノンと共にアインクラッドへと戻っていくのだった。

暫く無言のシグレ。

 

 

「……」

 

 

目を閉じ、何かを考えているようにストレアとフィリアには見えた。

何を考えているかまでは分からない。

ただでさえ考えを表に出さないシグレだから尚更ではあった。

そんなシグレに何か声をかける間もなく。

 

 

「…行くぞ」

 

 

誰に言ったでもなく、まるで自分自身に言うようにシグレは呟きながら、転移門へと歩いていく。

それに少し遅れながら二人もついていく。

直後、転移門から三つの光が発し、その場からは誰もいなくなった。

 

 

「…」

 

 

直後に管理区に響く足音。

その音を聞いた者は、誰もいない。

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