ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第58話:本当の戦い - I

管理区から出て、どれくらい歩いただろうか。

 

 

「…ねぇ、どこまで行くの?」

 

 

敵を軽く倒しながら進むシグレ。

ただ無心に歩き続けるシグレに、フィリアが声をかける。

シグレは答えるでもなく、また少し歩き。

 

 

「……」

 

 

答えることなく立ち止まる。

 

 

「…?」

 

 

ストレアとフィリアもつられて立ち止まり、シグレを見る。

シグレは、一点に集中し、いつでも戦闘に入れるようにか、刀に手をかける。

それを見て反応するようにシグレの視線の先を追うが、二人には何も見えない。

 

 

「…さすがにあんたにゃ気付かれるか」

「よく言う。隠す気もなかったのだろう」

「HAHAHA」

 

 

やれやれ、といった感じで警戒もせずに物陰から現れるPoH。

素性を知らなければ友好的にすら見えるPoHにシグレは警戒を解かない。

 

 

「さぁて…こうしてまた会えたからには、早速…始めるか?」

 

 

PoHは楽しそうに、実に楽しそうに武器を構える。

何度か見た、包丁の形をした武器。

その形は、シグレが知る、過去を思い出させる形でもあった。

 

 

「……そうだな。俺はその為に来た」

 

 

一方で、シグレは武器を抜かない。

その代わりに。

 

 

「だが…何事にも準備は必要だ」

「ほう?」

 

 

言いながら、シグレは二振りの短剣を構え、それを放つ。

放った先は。

 

 

「えっ…」

「…な、んで……」

 

 

ストレアとフィリアだった。

短剣自体はそれほど強い武器でもなく、それほど投擲を極めていたわけでもないシグレ。

致命傷どころか、かすり傷もいいところ。

まして、彼女らの防具で、一桁のダメージになっていれば十分といったところだった。

けれど、二人はその場に蹲る。

その理由は。

 

 

「麻、痺…?」

 

 

ストレアが呟くように言う。

二人は蹲り、やがて耐え切れず俯せに倒れてしまう。

シグレはそんな二人に視線を向けることもなく。

 

 

「……ここからは、本当の意味での殺し合いだ。余計な手出しは邪魔になる」

「っ…」

 

 

シグレの言葉に、ストレアもフィリアも言い返せない。

ストレアは多少事情が違うとはいえ、二人とも元を正せばSAOというゲームのプレイヤー。

それ以前は平和に暮らしていた、一般市民。

一方で、シグレは自らの手で、自らの意思で人を殺したことがある、犯罪者の罪を背負い続けている。

だからこそ、せめて自分を想う者くらいは、守る。

その思いが、シグレの行動の根本だった。

 

 

「What a crazy! HAHAHA!!」

 

 

一方でPoHはシグレの行動を、笑いながら称賛する。

なんて狂っている、と。

揶揄する笑いに、シグレは冷静さを崩さない。

 

 

「…いいぜ。お前のその狂いっぷりに、これをやるよ」

「……?」

 

 

PoHが放り投げる袋を、シグレは受け取る。

中には、見慣れた回復薬。

 

 

「…情けのつもりか?」

「No、そんなわけないだろ?」

 

 

視線を強めるシグレにPoHは笑う。

 

 

「お前さんのその刀。SPを喰われるんだろ?ならそいつを使って、少しでも長く楽しめるようにしてくれや…安心しろ、毒なんか入っちゃいねぇよ」

「……」

 

 

PoHの言葉に一瞬疑う。

しかし、楽しむチャンスを自ら不意にするような男だろうか、とシグレは考え。

 

 

「…ふん」

 

 

精々、後悔しないことだ、と想いを込め、シグレは刀を抜き放つ。

妖しく輝く刀を構える。

 

 

「…It's time to go to hell together!」

 

 

PoHが言い切った瞬間。

PoHとシグレがいた場所には軽く砂煙が上がる。

その場には、二人の姿はなく。

 

 

「HAHAHAHA!!」

「……」

 

 

ストレアとフィリアが目で追い切れない速度のPoHの斬撃を、シグレは刀であっさりと受け止める。

シグレにとって、自らを壊しながらも、ただ願い続けた復讐の時。

本当の意味でのシグレにとっての戦いが始まった。

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