ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

174 / 251
第60話:本当の戦い - III

そんなストレアの必死さを見ていたからか。

 

 

「多分…そんなストレアだから、じゃないかな」

 

 

フィリアは少しばかり、冷静に状況を見ていた。

戦いの場から離れたところで、動くことができない状況でも。

それでも二人を見ながら。

 

 

「きっと、ストレアだったらそう考えるって…あいつは分かってたんじゃないかな」

「……」

「私はシグレじゃないから、はっきりは分からないけど…」

 

 

これまで平和なんてほとんどない、このホロウ・エリアで共に行動してきて。

その中で、自分がどれだけシグレの背中を見ていたか。

どれだけ、戦いの矢面にシグレが立っていたかを見ていたからこそ、そう思う。

 

 

「あいつは、邪魔だから、って言ってたけど…きっと、それは違う」

 

 

シグレという一人の人の事は分からないことが多いけど、こと戦いに関しては、無知じゃない。

共に戦ってきたからこそ。

 

 

「きっと、あいつは…ストレアを守りたかったんだと思う。だからきつい事を言って、麻痺までさせて…この戦いに参加させなかった」

 

 

その言葉に、ストレアは思う。

考えてみれば、シグレはいつもそうだった。

75層で、アスナと戦った時も。

74層で、ボスに体を貫かれた時も。

かつて笑う棺桶のアジトに二人で向かった時も。

初めて会ったとき、雪の中でフィールドボスに一度は殺された時も。

シグレは、いつも、誰かと肩を並べていなかった。

あるいは、それよりもずっと前から。

 

 

「…そっか、そうかも。アタシ…ずっと、シグレに守られてたんだ…」

 

 

危険から遠ざけさせ、いざ危険が迫ったら、全力で助けようとする。

システムに消されそうになった時も、無茶苦茶な方法とはいえ助けてくれた。

だからこそ、今ここに、こうして生きていられる。

ストレアは、そう思う。

 

 

「あいつ…馬鹿だよね。本当に馬鹿。誰かを守る事ばっかなくせに、人の気持ちなんてちっとも考えやしない」

 

 

馬鹿というか、勝手というか。

そういう事に、いくら何でも疎すぎやしないだろうか。

そう、フィリアは思う。

 

 

「でも…きっと、フィリアの言う通りだと思うよ」

「ストレアが言うなら、間違いないかな?」

「うん。それと、シグレはフィリアも守ろうとしてるんだね」

 

 

アタシとおんなじだもんね、とストレアは少しだけ辛そうに笑う。

 

 

「…そう、かな」

 

 

ストレアの言葉に、少し恥ずかしげに返すフィリア。

だとすれば、どれだけ素直じゃないのだろう。

でも、どれだけ素直じゃないとしても、全力で誰かを守る優しさを持ってるシグレだからこそ。

 

 

「何が、人殺しよ…」

 

 

シグレが人殺しである事は事実なのだろう。

少なくとも、シノンが言っていたことは間違いではないはず。

だとしても、それも結局、彼女を含めた、その場にいる人を守るためにやった事。

それが正しい、とは口が裂けても言えないけど、それで守られた人がいるのも事実。

だからこそ。

 

 

「…ただ、不器用なだけじゃない……」

 

 

今回のことを含めても、もう少しやり方があったんじゃないかとフィリアは思う。

そのやり方は分からないとしても、これだけの戦いができるくせに。

それだけの力があるくせに、それを自分の為に使わない、そのやり方が。

 

 

「本当に、もう…!」

 

 

怒りのようなものがこみ上げる。

けれど、何とか奴に勝って、生き残ってほしいと思う。

 

 

「バカ、なんだから…」

 

 

生き残って。

もう一度話をして、文句を言わせて。

今のやり方じゃ、少なくとも私の…私達の心は瀕死の重傷だと。

もう少し、考えて、と。

それがいかに勝手な事なのかは、分かっている。

けれど、そう、言ってやりたいと思うのは、悪いことだろうか。

…依然、麻痺は解けそうにない。

自分のステータスを表示する箇所に表示される、麻痺を表す雷のマークが鬱陶しい。

それを歯痒く思っていると。

 

 

「…随分、あいつのこと見てるじゃねェか」

 

 

背後から聞こえる、どこかで聞いたような声。

そして、歩み寄ってくる、足音。

 

 

「あのFool Guyに言いたいこと言ってやりな。Crazy Girls?」

 

 

そして、次の瞬間、鬱陶しい雷のマークが消え、体が軽くなる。

フィリアがストレアを見れば、ストレアも同じなのか、体が動いていた。

いったい誰が。

そう思い、声のした方を見て。

 

 

「え…?」

「なんで……!?」

 

 

驚きと警戒を露に、二人は声の主を見る。

そこにいたのは、今シグレが戦っているはずの。

 

 

 

…笑う棺桶のリーダーであり、シグレが討とうとしている、PoH本人だったから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。