ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第63話:生を阻む物

シグレは言うが、ストレアとフィリアからは表情は窺えなかった。

どんな表情をしているのかは興味があったが。

 

 

「…シグレ、一応言うけど」

「何だ」

「シグレも脱出する『全員』の中に入ってるよね?」

 

 

ストレアが念を押すように言う。

それにシグレは少し考え。

 

 

「…俺はどうせ、この制限がある」

 

 

自らに表示された時間制限を指す。

時間制限は、無情にも止まることなく時間を刻んでいた。

 

 

「こいつが0になれば、少なくともこの世界の俺は消える。現実の方は…こんな表示が出るくらいだ。生存の期待は持てまい」

「っ……」

 

 

シグレの言葉に、ストレアもフィリアも返せない。

突きつけられたそれは、明らかな現実。

 

 

「…どれだけ望んでも、叶わない現実はある」

 

 

二人に背を向けたまま、シグレは宙を見上げ、呟くように続ける。

その視線の先には、何があるのだろうか。

 

 

「どれだけ想いが強かったとしても、抗えない現実。消えない後悔…俺はずっと、それに振り回されっぱなしだ」

 

 

おそらく、最期まで。

 

 

「…そして、挙句の果てには、俺を助けると言ったお前たちに同じ傷を負わせようとしている」

 

 

すまない、と自嘲しながら言う。

結局、守るべき存在を守ることすらできず、自分すらまともに守れず。

父親の言う強さを身につけることすらできず。

シグレは、そんな自らの弱さに自嘲する。

 

 

「っ…なら、諦めないで生きようとして!」

 

 

そんなシグレを叱咤するように、フィリアが言う。

 

 

「まだ間に合うよ……ううん、私達が間に合わせるから!」

「そうだよ。それにシグレを助けたいのは…アタシ達だけじゃない。その位はもう…分かってるでしょ?」

「……」

 

 

ストレアの問いかけに、シグレは何人かの顔が浮かぶ。

それは勿論、この仮想世界における、ではあるが。

 

 

「……容赦のない奴らだ。どいつもこいつも」

 

 

溜息を一つ吐きながら、シグレは二人に振り返る。

 

 

「…しかしそうしなければ、お前達を傷つけることになるのなら…やるしかない、か」

 

 

その表情は、いつもと変わらない、シグレのもの。

それでもどこか、憑き物が落ちたような。

そんな風に、二人の目には映っていた。

 

 

「……吹っ切れた?」

「………ふん」

 

 

笑みを浮かべて尋ねてくるストレアに、シグレは視線を逸らす形で答える。

絆された事に対する気恥ずかしさ、なのだろう。

それを察し。

 

 

「かわいい反応だね、シグレー。うりうり~」

「っ…」

 

 

頬を突いて揶揄うストレアに、シグレは言い返せない。

その空気を断ち切るように。

 

 

「…そんな事より、だ。この後はどうする」

 

 

シグレがそう、フィリアに問いかける。

そこには若干の逃げがあったが、それに言及することなく。

 

 

「あ、うん…さっき、あいつに聞いた話なんだけど…」

 

 

フィリアが、先の戦いから逃げる直前に、信頼はできない相手から聞いた情報を思い出す。

そしてそれを告げようとして。

 

 

「…シグレ?」

 

 

言葉を止め、シグレの名を呼ぶ。

というのも。

 

 

「っ…ぅ……」

「シグレ…しっかりして!」

 

 

苦しそうに頭を押さえながらふらつき、なんとか倒れずに耐えていたから。

ストレアもそんなシグレには気づいていて、なんとか倒れないように支えていた。

 

 

「これ、は…」

 

 

シグレは痛みに耐えながら、ふと思い出す。

その痛みは、この時間制限が始まった時と同じ。

あの時のものだったから。

 

 

「っ……」

 

 

シグレは再び襲われたそれに抗えず、再度気を失い倒れる。

 

 

「シグレ!?」

「しっかりしてよ、シグレ!」

 

 

フィリアが、ストレアが必死に名を呼び、シグレを揺するが反応はなく。

その代わりといわんばかりに。

 

 

『Expiration: 9day 23hour 59min 45sec.』

―使用期限:9日23時間59分45秒。

 

 

『Using rate of alternate/backup module reached 50%.』

―代替モジュールの使用率が50%に達しました。

 

 

『Status restriction is migrated to phase 2 (Player ID: Sigure)』

―プレイヤー:シグレのステータス制限をフェーズ2に移行します。

 

 

『Part of battle skill/ability is restricted.』

―戦闘における一部の能力/スキルが制限されます。

 

 

『Unrecoverable bad status is granted.』

―スキルによる治療不可能なバッドステータスが付与されます。

 

 

まるで、シグレが生を望むことを許さないかのように。

システムは淡々と、メッセージを表示するのだった。

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