ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
*** Side Kirito ***
狩りの途中、シノンが倒れ、急遽95層の街、セイレスに戻る。
街までは俺がおぶって帰り、看病はアスナをはじめとした女性陣に任せることにした。
「…で、大丈夫なのかよ?」
「あぁ、一応今は落ち着いてるみたいだ。熱があるみたいで、疲れだろう、ってさ」
クラインに聞かれ、俺はアスナから伝え聞いたことを答える。
その答えと、シノンが無茶をしていた事実を知っていた事があり、クラインはやや大げさに溜息を吐く。
「ったく…無茶しすぎだろ」
「…気持ちは分からないでもない、けどな」
クラインの呆れに、俺は少しだけフォローを入れる。
シノンにとっては、それだけあいつが大切なのだろう。
「…なぁキリト」
「何だよ」
「とりあえずあいつ戻ってきたら、一発ぶん殴ったほうがよくね?」
「それについては異論はない」
クラインの言葉に俺は大きく頷いた。
あいつは、なにかと突っ走りすぎだ。
あいつは確かに、皆を守ろうとしたのだろう。
75層の時も、わざと討たれてSAOを終わらせようとしていた。
結果としてそれは失敗に終わったが、今も、自分の犠牲を顧みずに戦っている。
傍から見れば美談かもしれないし、実際それで救われた人もいるだろう。
けど、あいつは自分が死んだら、という事を何も考えてない。
その辺りのことを、もっと自覚すべきだと思う。
「…サチ?」
「あ…キリト」
そんなことを話していたら、部屋からサチが出てきた。
手に桶を持っているあたり、水を取り替えに行くのだろう。
「シノンの様子は…どうだ?」
「うん…まだ熱が下がってなくて、少し魘されてる」
「そうか…」
心配そうなサチの表情。
そんなサチを励ます言葉が、分からなかった。
「ずっと…うわ言のように呟いてるの。『先輩、ごめんなさい』…って」
「…シノンが気に病むことじゃないのにな」
「うん…でも、気持ちは分かるかな、私」
サチの何かを思い出すような言葉に、言葉を止める。
「…キリト、覚えてる?私達が初めて会った時」
「あぁ。仲間を助けてくれって…声をかけてきたんだったよな」
俺が答えると、サチはうん、と頷く。
「本当は、私一人でも、助けたかった。だけど私だけじゃどうにもならないって…分かってた。だから…辛かったの」
思い出す事も辛そうに、サチは続ける。
「みんなを助けたくても、私は力も心も弱くて、一人じゃ何にもできなくて。キリト達がいてくれたから助かったけど…もしいなかったらって思うと、今でも夢に出るくらい…怖いの」
夢の中で、どれだけ手を伸ばしても届かなくて。
届きそうになったところで、バラバラに砕け散ってしまう。
暗闇の中に、一人取り残される夢。
「今だって…不安なんだ。未知の場所に放り出されて、大丈夫なのかな…って。でもね、シグレなら大丈夫って思っちゃう私もいるんだ」
なんか矛盾してるね、なんて言いながら、サチは少し悲しげに笑う。
アスナにも、サチにも、シノンにもこんなに想われて。
こんなに悲しませておいて、お前は一体、何をやってるんだよ。
早く戻ってきて、彼女たちを守ってやれよ。
「…とりあえず、戻ってきたらビンタ一発して、抱きついて泣いてやるんだから」
「そりゃ大変だ」
サチの言葉に、思わず笑みが零れる。
アスナも泣くだろうし、リズは間違いなく制裁の一つや二つは加えるだろう。
シノンは…どうなるかな。
いずれにしても、お前が犯した罪の清算は、大変な事になりそうだけど、そこは助けないからな?
*** Side Kirito End ***