ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第65話:あいつが守れていないもの / Kirito

*** Side Kirito ***

 

 

 

狩りの途中、シノンが倒れ、急遽95層の街、セイレスに戻る。

街までは俺がおぶって帰り、看病はアスナをはじめとした女性陣に任せることにした。

 

 

「…で、大丈夫なのかよ?」

「あぁ、一応今は落ち着いてるみたいだ。熱があるみたいで、疲れだろう、ってさ」

 

 

クラインに聞かれ、俺はアスナから伝え聞いたことを答える。

その答えと、シノンが無茶をしていた事実を知っていた事があり、クラインはやや大げさに溜息を吐く。

 

 

「ったく…無茶しすぎだろ」

「…気持ちは分からないでもない、けどな」

 

 

クラインの呆れに、俺は少しだけフォローを入れる。

シノンにとっては、それだけあいつが大切なのだろう。

 

 

「…なぁキリト」

「何だよ」

「とりあえずあいつ戻ってきたら、一発ぶん殴ったほうがよくね?」

「それについては異論はない」

 

 

クラインの言葉に俺は大きく頷いた。

あいつは、なにかと突っ走りすぎだ。

あいつは確かに、皆を守ろうとしたのだろう。

75層の時も、わざと討たれてSAOを終わらせようとしていた。

結果としてそれは失敗に終わったが、今も、自分の犠牲を顧みずに戦っている。

傍から見れば美談かもしれないし、実際それで救われた人もいるだろう。

けど、あいつは自分が死んだら、という事を何も考えてない。

その辺りのことを、もっと自覚すべきだと思う。

 

 

「…サチ?」

「あ…キリト」

 

 

そんなことを話していたら、部屋からサチが出てきた。

手に桶を持っているあたり、水を取り替えに行くのだろう。

 

 

「シノンの様子は…どうだ?」

「うん…まだ熱が下がってなくて、少し魘されてる」

「そうか…」

 

 

心配そうなサチの表情。

そんなサチを励ます言葉が、分からなかった。

 

 

「ずっと…うわ言のように呟いてるの。『先輩、ごめんなさい』…って」

「…シノンが気に病むことじゃないのにな」

「うん…でも、気持ちは分かるかな、私」

 

 

サチの何かを思い出すような言葉に、言葉を止める。

 

 

「…キリト、覚えてる?私達が初めて会った時」

「あぁ。仲間を助けてくれって…声をかけてきたんだったよな」

 

 

俺が答えると、サチはうん、と頷く。

 

 

「本当は、私一人でも、助けたかった。だけど私だけじゃどうにもならないって…分かってた。だから…辛かったの」

 

 

思い出す事も辛そうに、サチは続ける。

 

 

「みんなを助けたくても、私は力も心も弱くて、一人じゃ何にもできなくて。キリト達がいてくれたから助かったけど…もしいなかったらって思うと、今でも夢に出るくらい…怖いの」

 

 

夢の中で、どれだけ手を伸ばしても届かなくて。

届きそうになったところで、バラバラに砕け散ってしまう。

暗闇の中に、一人取り残される夢。

 

 

「今だって…不安なんだ。未知の場所に放り出されて、大丈夫なのかな…って。でもね、シグレなら大丈夫って思っちゃう私もいるんだ」

 

 

なんか矛盾してるね、なんて言いながら、サチは少し悲しげに笑う。

アスナにも、サチにも、シノンにもこんなに想われて。

こんなに悲しませておいて、お前は一体、何をやってるんだよ。

早く戻ってきて、彼女たちを守ってやれよ。

 

 

「…とりあえず、戻ってきたらビンタ一発して、抱きついて泣いてやるんだから」

「そりゃ大変だ」

 

 

サチの言葉に、思わず笑みが零れる。

アスナも泣くだろうし、リズは間違いなく制裁の一つや二つは加えるだろう。

シノンは…どうなるかな。

いずれにしても、お前が犯した罪の清算は、大変な事になりそうだけど、そこは助けないからな?

 

 

 

*** Side Kirito End ***

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