ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第67話:私の想いは燻り続ける / Sinon

*** Side Sinon ***

 

 

 

……ぼんやりと、目を覚ます。

 

 

「……」

 

 

右手が温かい。

何だろうと思い、見てみるとアスナに握られていた。

当のアスナは眠っている。

 

 

「…」

 

 

見回せば、窓から見える景色は暗い。

夜になっていたのだと察するのに時間はかからなかった。

何があったのかを考える。

確か私はフィールドで、何かに足を掬われて、地面に伏して。

…違う。

倒れたんだ…私。

 

 

「っ…」

 

 

あの人を助ける、なんて意気込んで、周りの制止も振り切って。

その結果はどうだ。

私の事を気遣ってくれた人に迷惑をかけただけで、結局何もできてない。

 

 

「……」

 

 

悔しさに、泣きそうになる。

誰かに、所詮お前の強さはその程度、と言われているようで。

お前に助けられるわけがない、と言われているようで。

 

 

…今は、貴方の隣に並べなくてもいいから。

 

…いつか、いつかは必ず、貴方と共に戦えるくらいに強くなるから。

 

…だから、どうか。

 

 

「……先輩…!」

 

 

…どうか、死なないで。

 

…無事に、向こうに戻って、向こうでちゃんと、話をしたい。

 

…話したいことは、沢山ある。

 

…話さなければならないことも、沢山、ある。

 

 

「…まだ、私……貴方に、お礼の一つも言えてない…!」

 

 

貴方と、まだちゃんと何も話せていない。

お礼の一つもできていない。

助けられた時からずっと告げたいと、秘め続けてきた、たった一つの言葉すら、届けられていない。

 

 

…私は、貴方のおかげでこうして生きてこられたと、思っている。

 

…ずっと貴方が私にとっての心の支えで。

 

…いつからか、私の心の中には、貴方という存在が大半を占めていた。

 

…貴方が人殺しとなる場面を見ていたけれど。

 

…たとえ、貴方が犯罪者として誰からも蔑まれようとも。

 

…少なくとも、私は、私だけは貴方の味方であり続ける。

 

…だから。

 

 

「…どうか……!」

 

 

負けないで。

私のために、なんて烏滸がましい事は言わないから。

せめて、先輩自身の為に、生きて欲しい。

 

 

「……アスナ」

 

 

ふと、ベッドに突っ伏すように眠る栗色の髪の女性が目に入る。

それがアスナだと気づくのに時間はかからなかった。

そっと、髪に触れる。

羨ましいくらいにふわふわだった。

 

 

「駄目ね…私」

 

 

フィールドではあれだけ心配をかけて、結局ここまで迷惑をかけてしまっている。

あの時、ちゃんと話を聞いて無理をしていなければ、こんな事にはならなかったはずなのに。

 

 

「…ごめんね。ありがとう」

「ん…ぅ……」

 

 

そっとアスナの髪を撫でると、寝言だろうか声を漏らす。

その様子が少し可愛く見え、私は笑みが零れた。

女の私ですら、そんな風に思えるのだ。

男性なら、こんなアスナを見たら、ころっと落ちてしまうだろう。

…ひょっとしたら、先輩も。

だけど。

 

 

「…でも、先輩の事だけは、絶対に負けないから」

 

 

アスナの想いも分かっているからこその、宣戦布告。

これだけは、他の誰にも、譲れない。

たとえSAOが終わっても、私の、女としての戦いは、終わらない。

 

 

 

*** Side Sinon End ***


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