ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そんなこんなで、三人は管理区に戻る。
このホロウ・エリア唯一の安全地帯。
「…」
あれから、PoHから話を聞いたストレア、フィリアの先導でこの場所に来ていた。
ここからどこかに転移するのかとシグレは思っていたのだが、コンソールに用があるようでもなく、どうするのかと疑問に思っていた。
その間にも、刻々とカウントダウンは進んでいた。
女性陣に伝えてこそいないもの、そのカウントダウンは常にシグレの視界の端に写っていた。
「…それで、ここからどうすればいい」
「……こっち」
それを少しも意に介さずに先を促すシグレに、フィリアは不安を感じながらも先導する。
向かった場所は何もない…ようにこそ見えたが。
「…これは」
地面に文様が浮かんでおり、近づくと管理区地下への転移を行うかどうかを尋ねるシステムメッセージが表示される。
「…地下、か」
シグレがその転移先を読み上げると、フィリアは頷いた。
なんでも、この先にある中央管理コンソールを目指せばいい、との事らしい。
情報源が情報源だけに疑わしい部分があったが、他に手掛かりがないため、従うより他なかったとも言える。
それよりも気になるのは。
「……なぜ奴は、俺達に情報を流す真似をした。これで奴に何の得がある」
転移を了解しながら、シグレが疑問を口にする。
それは、アインクラッドで共に行動したストレアも、同じくアインクラッドで攻略をしていたフィリアも同意見だった。
彼らにとって、PoHは犯罪者ギルドのリーダーで、殺人者。
その彼らが、生きるための手がかりを残した理由。
「…アタシ、あの場から離れるとき、ちらっと聞こえたんだ」
「?」
「……ここであいつが殺されたら、約束が果たせなくなる…って」
ストレアの言葉に、シグレもフィリアも疑問符が浮かぶ。
いくら普段がどうであれ、周りの雰囲気を明るくする事が得意であれ、この状況でこういう冗談を言う性格ではない。
そう思っていた二人は、その言葉を嘘とは思わなかった。
思わなかったのだが。
「…何の事だ」
「さぁ…」
シグレも、フィリアも、心当たりがなかった。
あるとすればシグレなのだが、彼にとっては父の仇でしかなく、それ以上の事は分からない。
何かを見落としているのか。
一瞬そう考えこそしたが。
「……だが、考えるのは後だ」
言いながら、シグレは刀を抜く。
転移した先は、魔法陣のようなもので遮られてこそいるものの、奥にはモンスターがひしめく部屋がいくつもある。
そんな考え事をする余裕はない。
シグレの言わんとすることを理解したのか、ストレアも両手剣を、フィリアも短剣を抜き、体勢を整える。
「シグレ」
ストレアがシグレの隣に並び、分かってるよね、と言わんばかりにシグレを見る。
フィリアにも似たような視線を向けられ、二対一では勝ち目もなく、シグレは溜息を一つ吐き。
「…分かっている。あれを使うな、ということだろう」
「……それを含めて、無理は禁止って事だよ?」
フィリアの念押しに、シグレは分かっている、と返す。
「だが…枷をかけられた状態でどの程度動けるかを知るには丁度いい機会だ」
言いながら、シグレは幾つかある魔法陣のうちの一つに近づく。
シグレに続くように、ストレアもフィリアも魔法陣に近づき。
「……行くぞ」
魔法陣を開き、部屋の中へ突入する。
中にいたモンスターがそれに気付き、三人に迫る。
このホロウ・エリアでの最後のダンジョン。
…その戦いが、火蓋を切る。