ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
*** Side Philia ***
「はぁっ!!」
短剣を振るい、私は一体ずつ敵を倒していく。
使っている武器の特性上、ストレアのような広範囲な攻撃はできないし、シグレのような立ち回りが出来るほど戦いというものに慣れているわけでもない。
きっと、この中では私が一番不利なのだろう。
だけど、それがどうした。
「っ…甘い!」
背後から迫るモンスターの攻撃を躱す。
…私以上に、シグレは酷い状態のはずなのに、戦い続けてる。
「はぁぁっ!!」
モンスターが武器を再度振り上げる隙をついて懐に潜り込み、脚を狙う。
…一番辛いはずのシグレが戦っているのに、不利だからって諦めるほど、私は弱くない!
モンスターはよろけ、隙が大きくなる。
この瞬間…逃さない!
「…っせやああぁぁぁっ!!」
一気に攻勢に出て、ダメージを与える。
ここで…倒す!
「…っ次!」
振り抜いた短剣は相手のHPを削り切り、モンスターを光の粒に変える。
けれど、まだ止まれない。
敵は…まだいる。
「……」
敵が多い中で偶然シグレと居合わせ、背合わせになり辺りの様子を窺う。
まだ、敵は多い。
「……少し飛ばしすぎだな」
私が息が上がっているのを見抜かれ、シグレにそんな事を言われる。
そんなの、当たり前でしょう。
だって。
「…私達が苦戦したら、あんた迷わず『アレ』使うでしょ」
アレとは言うまでもないだろう。
私の言葉に、シグレは答えない。
無言は肯定と受け取らざるを得ない。
「気にする必要があるか?」
「…大いに気にするわよ。だって…」
こんな所で、シグレを死なせたくない。
理由は私にとっては、言うまでもない。
けれど、こいつは言ってやらなきゃ、絶対に伝わらない。
言ったって、伝わるか分からないんだから。
「…好きな人一人守れないで、恋する乙女は名乗れないでしょうが!」
私は駆け出す。
狙いを定めて、モンスターに駆け寄る。
けれど、それ以上に恥ずかしくてシグレにくっついていられなかった。
なんか、とんでもなく恥ずかしい事を言った気がする。
けれど、事実だ。
だから言った事に後悔はない。
「……馬鹿を言う余裕はあるようだな」
何か言われたような気がするけど、聞こえなかったことにする。
馬鹿でもいい。
本気だから。
「っ…せやあぁっ!!」
私は、現実にいても、ずっとシグレと一緒にいたいと思ってる。
たとえ、現実で後ろ指を差されるような人だとしても、一緒に後ろ指を差されてもいい。
知らないうちに、それほどまでに好きになってた。
自分の変化に、驚きながら、けれど全然嫌じゃなくて。
ストレアの話だと、ライバルは多いらしいけど、知ったことか。
…私は、負けない!
*** Side Philia End ***