ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第74話:戦い、思い

僅かな蟠りを残したまま、転移した先は。

 

 

「……」

 

 

空間の中に、円形の足場があるのみの、孤立した空間だった。

 

 

「コンソールなんて…ない…!?」

 

 

フィリアが慌てたように言う。

恐らくPoHの話から、最深部に何かがあると聞いていたのだろう。

しかし、実際はコンソールはおろか、転移してきた場所すらない。

進むことも、退くことも許されない空間だった。

 

 

「…落ち着いて、フィリア。多分…来る」

 

 

そんなフィリアを落ち着かせるように、ストレアが言う。

次の瞬間。

 

 

「っ…!」

 

 

突然地響きが起こる。

シグレが刀を抜き、それに合わせるようにストレアとフィリアも武器を構える。

次の瞬間、空から突き抜けるように急降下していき、すぐに浮き上がり姿を見せる、異形のモンスター。

 

 

「……」

 

 

―ガアアァァァァァッ

 

 

シグレ達が立っているその足場だけでなく、空間全体を震わせるような咆哮と共に、背に魔法陣のようなものを背負い、明らかに臨戦態勢になる。

 

 

「…」

 

 

シグレはただ、相手の出方を窺う。

すると、相手は突撃してくるでもなく、後退すると、シグレ達が立つ地面の下に潜り込む。

 

 

「…ちっ」

 

 

次の瞬間、足場の中央辺りに自らの尾のようなものを突き出し、衝撃波を放つ。

シグレは反応し、ストレアとフィリアも少し遅れて反応する。

 

 

「……」

 

 

相手が元居た場所に戻り、攻撃の隙と見たところで、シグレは再度スキルを発動しようとする。

それは、二人の様子を見て、というところもある。

今の状態の二人は、戦うのが厳しいと、そう思っていた。

 

 

 

…しかし。

 

 

「「やああぁぁぁっ!!!」」

 

 

シグレの両脇からほぼ同時に前に出て、息の合った連携というべきか、ソードスキルでの攻撃を行う二人。

その連携にさしものボスも一度後退する。

 

 

「…アタシ達だって、護られるだけじゃないよ、シグレ」

「そういう事。私達も…シグレを護る。あんたが言う結末は…認めない。必ず変える」

 

 

そう言いながら振り返る二人の目に、迷いはない。

そんな彼女らに少しばかり驚きながら、けれどすぐに苦笑でそれを隠し。

 

 

「……出来るものなら、やってみろ。だが今は…」

 

 

言いながら、シグレは刀を構える。

その視線の先は、ストレアでもフィリアでもない。

 

 

「…うん、分かってるよ」

「まずは…あいつから、だね」

 

 

そんなシグレの意図に気づいたように二人も武器を構える。

三人の視線の先には、自らが戦うべき、異形の姿。

 

 

「…行くぞ」

 

 

シグレが先陣を切り、ストレアとフィリアも続く。

皆が皆、それぞれの思いを抱えながら、戦う。


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