ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
僅かな蟠りを残したまま、転移した先は。
「……」
空間の中に、円形の足場があるのみの、孤立した空間だった。
「コンソールなんて…ない…!?」
フィリアが慌てたように言う。
恐らくPoHの話から、最深部に何かがあると聞いていたのだろう。
しかし、実際はコンソールはおろか、転移してきた場所すらない。
進むことも、退くことも許されない空間だった。
「…落ち着いて、フィリア。多分…来る」
そんなフィリアを落ち着かせるように、ストレアが言う。
次の瞬間。
「っ…!」
突然地響きが起こる。
シグレが刀を抜き、それに合わせるようにストレアとフィリアも武器を構える。
次の瞬間、空から突き抜けるように急降下していき、すぐに浮き上がり姿を見せる、異形のモンスター。
「……」
―ガアアァァァァァッ
シグレ達が立っているその足場だけでなく、空間全体を震わせるような咆哮と共に、背に魔法陣のようなものを背負い、明らかに臨戦態勢になる。
「…」
シグレはただ、相手の出方を窺う。
すると、相手は突撃してくるでもなく、後退すると、シグレ達が立つ地面の下に潜り込む。
「…ちっ」
次の瞬間、足場の中央辺りに自らの尾のようなものを突き出し、衝撃波を放つ。
シグレは反応し、ストレアとフィリアも少し遅れて反応する。
「……」
相手が元居た場所に戻り、攻撃の隙と見たところで、シグレは再度スキルを発動しようとする。
それは、二人の様子を見て、というところもある。
今の状態の二人は、戦うのが厳しいと、そう思っていた。
…しかし。
「「やああぁぁぁっ!!!」」
シグレの両脇からほぼ同時に前に出て、息の合った連携というべきか、ソードスキルでの攻撃を行う二人。
その連携にさしものボスも一度後退する。
「…アタシ達だって、護られるだけじゃないよ、シグレ」
「そういう事。私達も…シグレを護る。あんたが言う結末は…認めない。必ず変える」
そう言いながら振り返る二人の目に、迷いはない。
そんな彼女らに少しばかり驚きながら、けれどすぐに苦笑でそれを隠し。
「……出来るものなら、やってみろ。だが今は…」
言いながら、シグレは刀を構える。
その視線の先は、ストレアでもフィリアでもない。
「…うん、分かってるよ」
「まずは…あいつから、だね」
そんなシグレの意図に気づいたように二人も武器を構える。
三人の視線の先には、自らが戦うべき、異形の姿。
「…行くぞ」
シグレが先陣を切り、ストレアとフィリアも続く。
皆が皆、それぞれの思いを抱えながら、戦う。