ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
その頃。
「…」
「あいつ、ずるい…!」
皆が息を切らしながら応戦する相手。
こちらは宙に浮いた円形の足場の上から攻撃するのみ。
それに対し。
「っ危ない!」
フィリアの一声で皆が下からの攻撃を回避する。
相手はシグレ達の足場の下からも攻撃をかけていた。
当然といえば当然だが、シグレ側はそんな事はできない。
どちらが不利か、言うまでもなかった。
「ちっ…」
更に言えば、シグレはステータスに制限がかかった状態。
実際、ストレアやフィリアのような立ち回りをするには力不足だった。
とはいえ。
「…ダメだよ、シグレ」
件のスキルを発動しようとすれば、止められる。
「……分かっているのか。この状況では長引くほど危険だ」
「分かってる。分かってるけど!」
シグレが諭すように言うが、それでも。
「…怖いんだよ、シグレ。死んじゃうつもりなんじゃないか…って」
「……」
不安を隠そうともしないストレア。
おそらくこのSAOという世界で共にいた時間が最も長いからこその、推測、あるいは直感。
シグレは少し考える。
「…」
何かを言いかけたシグレだったが、敵がそんな状況を待つはずもなく。
『ガアァァァァァアアァァァ!!』
地面が震えるほどの咆哮。
そして、何か強い力を溜め始める。
「……」
刀を構え、シグレは警戒する。
「…とりあえず…話は、奴を倒してからだ」
「っ…!」
シグレに続くようにストレアとフィリアも警戒する。
とはいえ、いくら警戒したところで、溜められる力は際限がないようにも見える。
このままでは。
「ちっ…!」
そう考えたシグレは、前に出る。
例のスキルを、発動して。
二人が止めるよりも、早く。
「シグレ!?」
「駄目、戻って!!」
ストレアとフィリアの制止も聞かず、シグレは駆ける。
これまで戦い続けてきたからこそ培われた勘が、目の前の攻撃がいかに危険かを伝えてくる。
だからこそ、止まるわけにはいかなかった。
「………っ」
足場の端からシグレは飛び、敵に向けて刀を突きたてる。
武器の使い方として誤っているとしても、今はそんなことを構う余裕はない。
「……せめて、最期くらいは…!」
放たれる攻撃をその身に受けながらも、飛び込んだ勢いのままに敵を貫くシグレ。
多数の命を奪い、それでも守りたかったものを守れなかった。
その過去は変えられない事はシグレも分かっていた。
…決して長くはない、けれど現実離れした人生を送ってきたシグレ。
…言われるがままに、奪い続けてきた人生。
…自分には、何かを守る力はない。
…それでも、せめて、かつて自分を守ってくれた父のように。
…この仮想世界で出会った、大切にしたいと思える存在くらいは。
「守る力を……!」
そんなシグレの思いは、敵の攻撃の爆音に掻き消され。
爆散する光と共に、モンスターとシグレの姿は消えていた。
…静かな空間に、ストレアとフィリア、二人の人影が残る。
そんな二人の傍に、一振りの刀が落ちる。
地面が土であれば、突き刺さっていたかもしれない。
けれど地面は固く、突き刺さることがなかった。
その代わりに持ち主を失った刀は、甲高い金属音を立てて地面に落ちた。