ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第77話:遺された者達 - I

モンスターが消え、シグレが消え、静寂が戻った空間。

そんな中で。

 

 

「シグレ…?」

 

 

虚空を、シグレが飛び込んだ方を見上げながら、茫然とストレアは呟くように、問いかけるように彼の名を呼ぶ。

けれど、答えは返ってこない。

呆れるような溜息すらも、何も。

 

 

「っ…」

 

 

自らの短剣を握りしめ、悔しそうに目を伏せるフィリア。

光に包まれた瞬間に起こった出来事を見ていたわけではない。

直視がまともにできない程の光の中での出来事であったから、見えなかった、という方が正しい。

しかしそれでも。

 

 

「…馬鹿……!」

 

 

何が起こったのかを理解するのは容易だった。

それは、これまで行動を共にしていたから。

シグレという人物があの状況でどう動くかが分かる程度には、知っていたから。

だからこそ、察してしまった。

 

 

「……」

 

 

一方のストレアはといえば、両手剣を持ったその手をだらんと垂らし、力なく宙を見上げている。

そこに広がるのは、静寂を取り戻した空間が広がるのみ。

 

 

「シグレ……どこ、いったの…?」

 

 

震えるような声を出すストレア。

その問いに答える声は、彼女が望む答えを持つ者は、その場にはいない。

否、どこにもいない。

 

 

「…シグレ…」

 

 

ふらふらと、歩き出す。

シグレが飛び込んでいった方向へ。

当然、その先に足場があるわけがなく。

 

 

「っストレア!」

 

 

そのまま進めば、転落する。

そう感じたフィリアが慌ててストレアを後ろから抱きしめ、止めさせる。

 

 

「…離して、フィリア。シグレを…迎えに行かなくちゃ…」

「そっちに行っちゃダメだよストレア…分かってるんでしょ?シグレは…」

「…嫌、やめてよフィリア!聞きたくない!」

 

 

フィリアが告げようとしたことを、大声で遮るストレア。

ストレア自身、頭では理解していた。

何が起こったのかを。

まして、AIという、演算能力に長けた存在なら猶更である。

けれど、それを受け入れることができるかは全くの別問題。

 

 

「……嫌だよ、シグレ…戻って来てよ…!」

 

 

やがて、肩を震わせるストレアは、脚の力が入らないのか、その場にへたり込む。

フィリアもつられながらも、何とかストレアを支えながら一緒にその場にしゃがむ。

 

 

「…ねぇ、アタシ…何か、シグレを怒らせるようなこと…しちゃったかな?…あはは…ダメだ、心当たりありすぎるよ…」

 

 

声を震わせ、自嘲するようなストレアの言葉に、フィリアはただ抱きしめることしかできない。

彼女が、どれだけシグレを想っていたのかを、間近で見ていたから。

何を言っても、上っ面の慰めになってしまうと思ったから。

だから、少しでも落ち着けるように、抱きしめることしかできない。

 

 

「ごめんね、いっぱい、いっぱい…謝るから…許さなくていいからぁ……!」

 

 

ストレアの言う、怒らせるようなこと、というのはおそらく彼女にしか分からない。

その罪を許すことができる者がいないとしても。

 

 

「…シグレ……お願いだから、戻ってきてよ…シグレ……!!」

 

 

涙を隠さぬ声で、只管に名を呼び続ける。

それが決して届かないとわかっていても。

ストレアの涙を止めることは、誰にも出来なかった。

 

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

ストレアの悲痛な叫びは、仮想世界の虚空へと吸い込まれるように、消えていく。

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