ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第2話:取り戻した平穏の中で / Kirito

とある、民家。

広めの敷地に佇む、古風さを感じさせるその家の庭で。

 

 

「はっ、やっ、せやっ!!」

 

 

一人の少女が、竹刀を振るう。

早朝の自主的な素振り。

その堂に入った素振りは、美しさすら感じさせるものがあった。

 

 

「……ふぅ」

 

 

朝、何本の素振りを行っていたか。

それを知るのは、おそらく彼女のみだろう。

目標の本数に達したのか、素振りをやめ、息を整える。

 

 

「朝から精が出るな、スグ」

「ひゃあっ!?」

 

 

突然軒先からした声に驚く、スグと呼ばれた少女。

本名、桐ヶ谷直葉。

SAOではリーファ、と名乗っていた。

声をかけた主は、驚きように少し笑いながら。

 

 

「…おはよう」

「え、あ、お、おはよう…お兄ちゃん」

 

 

笑われたことか、あるいは驚いてしまったことに対してか。

直葉の言葉は尻すぼみになり、最後の方はほとんど聞こえなくなっていた。

 

 

「…っもう、そんなに笑わないでよ!」

「いや悪い悪い、つい、な」

「むぅ…」

 

 

朝、流れる、兄妹の穏やかな時間。

兄、と呼ばれた、どこか中性的な顔立ちの男性…桐ヶ谷和人。

SAOではキリトと呼ばれていた、トッププレイヤーの一人。

 

 

「…そんなことより」

「ん?」

「大丈夫なの…?体、まだ本調子じゃないんでしょ?」

 

 

直葉は和人を気遣う。

そうなるのも無理はない。

彼女は、自らSAOに入ったとはいえ、その期間は精々数ヵ月。

一方、兄の方は二年以上。

その期間の差で、回復にかかる時間が変わるのは当然といえば当然で、直葉よりも和人の方が体力の回復は遅れていた。

 

 

「あぁ…大丈夫だよ」

「無理しちゃヤダよ?これ以上、お兄ちゃんに何かあったら…」

「大丈夫だって。心配性だなぁ」

 

 

とはいえ、病院から退院し、少しずつ体力が回復しているのも事実。

実際、日常生活を送る分には問題ない程度までは体力が戻っていた。

軒先に座って見てくる和人の隣に、腰かける直葉。

 

 

「ん?素振り…終わったのか?」

「うん。ちょうどキリがよかったし…」

「そっか」

 

 

男女とはいえ、気恥ずかしさよりも安らぎが感じられる、そんな時間。

その少しの間を置いて。

 

 

「…何か考え事?」

「ん?」

「なんか…少し、難しい顔してる」

 

 

そうか?と尋ね返せば、そうだよ、と返される。

そんなやり取りの後。

 

 

「……シグレの事だよ」

「シグレさん?」

「あぁ…」

 

 

SAOの中で死んだと聞かされた、共に戦っていたという男性。

直葉はそこまで面識があるわけではなかったが、仲間の死を悼んでいるのだろうか、と思う。

 

 

「……何か引っかかるんだ」

「え?」

 

 

直葉の問い返しに、和人は彼女の顔を見て。

 

 

「あいつは…本当に死んだのか?」

 

 

そう、疑問を口にした。


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