ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
少しの間を置いて。
「え…ちょ、だって…そうなんじゃないの?フィリアさんとストレアさんが言ってたじゃない。シグレさんは…」
「…そう、そこなんだよ」
直葉の反論に和人は切り込む。
何を馬鹿な、といった感じの直葉に和人は至って真剣に。
「俺達は聞いただけだ。本当にシグレが死んだところを見たわけじゃない。当の二人だって、光に包まれて消滅したって言ってたけど、シグレが死ぬときのエフェクトを見たわけじゃない」
「…それは、そうかもしれないけど。でも…それを言ったら、どうとでも言えちゃうんじゃない?」
「それだけなら、な」
けど、と和人は続ける。
「…俺が一番引っかかってるのは、ストレアの事なんだよ」
「ストレアさん?」
ストレアの名を挙げる和人に疑問符を浮かべる直葉。
「…少し話したろ?あいつはAIで、いろいろあって、自分をオブジェクト化してシグレのナーヴギアに保存されたって」
「う、うん…」
「もしシグレが死んだのなら、キャラクターデータが消えて、当然所持していたアイテムも消える」
そこまで言われて、直葉はハッとする。
「シグレさんが死んで、オブジェクト化したストレアさんが消えたのなら…!」
「…ストレアも、消えてたはずなんだ。シグレと一緒に。けど…ストレアは最後まで俺たちと一緒に戦った」
つまり。
「シグレさんのキャラクターデータは消去されていない」
「…そう、つまり、SAOの仕様上、死んでないはずなんだ」
死んだのなら、削除される。
削除されていないのなら、死んでいない。
簡単な数学論理。
もともと理系に強い和人は、容易にそれに気づいた。
勿論、それだけでシグレが死んだと断定はできない。
「そのこと…他の人には?」
「…言ってないよ。そもそも確証がない話だ。皆に話して希望を持たせて、本当に死んでいたら…なんてことはしたくない」
余計に辛い思いをさせちゃうかもしれないしな。
そう言いながら、和人はゆっくりと立ち上がる。
「でも…どうするの?」
「…リハビリついでに、シグレの事を少し追ってみるよ」
直葉の問いに、右肩をぐるぐると回しながら、居間の方へと戻っていく和人。
「ちょ、ちょっと…もう!」
手がかりもないのに、どうやって。
もう少し問い詰めてやろう。
そんな事を思いながら、道着のままで和人を追い、直葉も居間に上がる。
「お兄ちゃんってば!」
「ん?」
「追いかけるって言っても…どうするの?シグレさんが住んでたところとか入院してた病院とか、知ってるの?」
「俺は知らないさ。でも、知ってる奴がいるだろ?」
スグだって知ってるだろ?
そう言われ。
「あ…詩乃さん!」
「そういうこと」
ハッとしてこの場にいない人物の名を呼ぶ直葉。
その答えに、和人は笑みを浮かべて返す。
「…そこで、スグに頼みがあるんだが」
「私に話したの、確信犯でしょ。全くもう……とりあえず着替えるから、その後でいい?」
「あぁ、悪いな」
最後の最後で締まらない和人に、やれやれといった感じで着替えに向かう直葉。
「…それと」
「?」
「シグレさんの件、私も手伝うから。いいよね?」
「…分かった」
有無を言わせない直葉にやれやれ、と思う和人だった。