ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第3話:深まる疑問 / Kirito

少しの間を置いて。

 

 

「え…ちょ、だって…そうなんじゃないの?フィリアさんとストレアさんが言ってたじゃない。シグレさんは…」

「…そう、そこなんだよ」

 

 

直葉の反論に和人は切り込む。

何を馬鹿な、といった感じの直葉に和人は至って真剣に。

 

 

「俺達は聞いただけだ。本当にシグレが死んだところを見たわけじゃない。当の二人だって、光に包まれて消滅したって言ってたけど、シグレが死ぬときのエフェクトを見たわけじゃない」

「…それは、そうかもしれないけど。でも…それを言ったら、どうとでも言えちゃうんじゃない?」

「それだけなら、な」

 

 

けど、と和人は続ける。

 

 

「…俺が一番引っかかってるのは、ストレアの事なんだよ」

「ストレアさん?」

 

 

ストレアの名を挙げる和人に疑問符を浮かべる直葉。

 

 

「…少し話したろ?あいつはAIで、いろいろあって、自分をオブジェクト化してシグレのナーヴギアに保存されたって」

「う、うん…」

「もしシグレが死んだのなら、キャラクターデータが消えて、当然所持していたアイテムも消える」

 

 

そこまで言われて、直葉はハッとする。

 

 

「シグレさんが死んで、オブジェクト化したストレアさんが消えたのなら…!」

「…ストレアも、消えてたはずなんだ。シグレと一緒に。けど…ストレアは最後まで俺たちと一緒に戦った」

 

 

つまり。

 

 

「シグレさんのキャラクターデータは消去されていない」

「…そう、つまり、SAOの仕様上、死んでないはずなんだ」

 

 

死んだのなら、削除される。

削除されていないのなら、死んでいない。

簡単な数学論理。

もともと理系に強い和人は、容易にそれに気づいた。

勿論、それだけでシグレが死んだと断定はできない。

 

 

「そのこと…他の人には?」

「…言ってないよ。そもそも確証がない話だ。皆に話して希望を持たせて、本当に死んでいたら…なんてことはしたくない」

 

 

余計に辛い思いをさせちゃうかもしれないしな。

そう言いながら、和人はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「でも…どうするの?」

「…リハビリついでに、シグレの事を少し追ってみるよ」

 

 

直葉の問いに、右肩をぐるぐると回しながら、居間の方へと戻っていく和人。

 

 

「ちょ、ちょっと…もう!」

 

 

手がかりもないのに、どうやって。

もう少し問い詰めてやろう。

そんな事を思いながら、道着のままで和人を追い、直葉も居間に上がる。

 

 

「お兄ちゃんってば!」

「ん?」

「追いかけるって言っても…どうするの?シグレさんが住んでたところとか入院してた病院とか、知ってるの?」

「俺は知らないさ。でも、知ってる奴がいるだろ?」

 

 

スグだって知ってるだろ?

そう言われ。

 

 

「あ…詩乃さん!」

「そういうこと」

 

 

ハッとしてこの場にいない人物の名を呼ぶ直葉。

その答えに、和人は笑みを浮かべて返す。

 

 

「…そこで、スグに頼みがあるんだが」

「私に話したの、確信犯でしょ。全くもう……とりあえず着替えるから、その後でいい?」

「あぁ、悪いな」

 

 

最後の最後で締まらない和人に、やれやれといった感じで着替えに向かう直葉。

 

 

「…それと」

「?」

「シグレさんの件、私も手伝うから。いいよね?」

「…分かった」

 

 

有無を言わせない直葉にやれやれ、と思う和人だった。


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