ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

204 / 251
第6話:新たな出会いと繋がり / Sinon

もうこの病院に来るのは何度目だろうと、不意に考える。

あれ以来、毎日…とはいかずとも、かなり頻繁に訪れていた。

そのせいか、どこか懐かしさすら感じていた。

 

 

「……」

 

 

まずは受付へと向かう。

ある程度勝手知ったる、とはいえ自分の家ではない。

 

 

「…すみません、少しお伺いしたいのですが」

「はい。何でしょうか?」

「先ぱ…じゃなかった。華月時雨さんについてですが…」

「…あぁ、貴女はいつもの。分かりました、少々お待ちください」

 

 

どうやら顔を覚えられていたようで、予想以上に早く話が進む。

それならそれでいい。

受付の人がコンピュータの操作を開始し、何も言わずに待つ。

 

 

「…お待たせ致しました。華月さんは二日前に退院されていますね」

「……そうですか。ちなみにその後については何かありませんか?」

「すみませんが、そこまで家族でない方にお話しすることは…」

「そうですよね…ありがとうございます」

 

 

やっぱり無理か、と諦める。

そうなると、完全に手詰まりになってしまう。

彼が住んでいたはずの部屋は完全に引き払われている。

 

 

「……」

 

 

溜息一つ。

家族ならその後の話も聞けたのかもしれないが、所詮は他人なのだから仕方がない。

諦めて帰ろうとした、その時。

 

 

「お願いします、教えてください!」

 

 

私と同じくらいの年だろうか、そんな声が聞こえてくる。

病院の受付のホールで話すにしては大きい声に、思わず視線を向ける。

 

 

「そう言われましても、ご家族の方でないと…」

「…うぅ、でも…でも…ボクは…どうしても、あの人に…会わなきゃ…!」

「あ、あの…」

 

 

よほど訳ありなのだろう。

受付の人は、詰め寄られ、宥めるので精一杯といった様子。

受付の人には悪いが、頑張ってください、と心の中で思いながら帰ろうとする。

 

 

「…お願いです。どうしても、あの人に…華月さんに会わなくちゃいけないんです!」

「っ…!」

 

 

しかし、次の言葉に私は足を止めた。

今、あの子は何と言った?

それ以上の言葉を続ける前に。

 

 

「……あの」

 

 

私の足は、そっちに向いていた。

私の…違う、私達の目的は、きっと同じなのだ。

だったら、形振りなんて構っていられない。

 

 

「…?」

 

 

声をかけると、女性がこちらに振り替える。

少し訝しげに視線を返される。

無理もない反応だと思う。

私だって同じ反応をするだろうし。

 

 

「急にごめんなさい。実は…」

 

 

だから、かいつまんで事情を説明する。

具体的には、同じ人を探しているのでは、ということ。

あとはSAOに彼がいて、私も同じくその場にいたということ。

SAOの中で何があったかは軽く濁しておいた。

話すには時間がかかりすぎるし、話すメリットをそれほど感じない。

 

 

「…そう、なんですね」

 

 

そんな継ぎ接ぎのような説明でも、真剣に聞いてくれた。

大体の事情は説明できただろう。

 

 

「…聞いてもいい?」

「何を…ですか?」

「貴方が…どうしてその人を探しているのか」

 

 

無理にとは言わないけど、と付け加えて尋ねると、俯いてしまう。

これはさすがに聞いちゃまずかったかな、なんて思う。

 

 

「…ごめんなさい。そう簡単に言えることじゃないわよね」

「いえ…いいんです。形振りを構っていられないのは…ボクも、同じですから」

「…」

 

 

どこか悲痛な感じが漂う笑顔を向けられ、胸が痛くなる。

なんて私は無神経だったのだろう。

数分前に無神経な質問をした自分を引っ叩いてやりたくなる。

そんな事、できないのだけれど。

 

 

「……ボクは、紺野木綿季っていいます。ボクはあの人に…決して許されないことを、してしまったんです」

 

 

そう、彼女…紺野さんは話し始めてくれた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。