ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第8話:新たな世界と、新たな目的 / Kirito

その頃。

リーファの勧めでキリト達はALOを拠点に集まるようになっていた。

今集まっているメンバーは、キリト、リーファに加え、アスナ、シリカ、リズベット、サチ、フィリア。

SAOの頃からすると、いくらか人数が減っているが、そこには各々の事情があった。

サチを除く黒猫団のメンバーは一時的にVRMMOを離れているらしい。

それが本人の意思なのか、周りに止められたのかは分からないが、いずれ戻る意思があるらしく、後者なのだろうとのこと。

クラインとエギルについては社会人ということもあって頻繁にはログインできず、今はこの場にいない。

ストレアについてはシグレのナーヴギアのローカルストレージに保存されていたこともあり、シグレがログインしていないため、ここにはいない。

そのこともあり、一時的にキリトのアミュスフィア…ナーヴギアの後継ハードのストレージに移動するよう、ユイが協力して作業中。

ユイの話だと、シグレのストレージから離れることにやや抵抗を示しているらしく、その説得にも時間を要しているらしい。

シノンについては、リーファが誘っていたのだが、ALOではない、別のVRMMORPGに行くとのこと。

それは、VRMMOの中で最も過酷と名高い、ガンゲイル・オンライン…通称GGO。

彼女曰く、シグレと肩を並べて戦える位の強さが欲しい、とのことだが、たまにはALOにも顔を出す、とのこと。

シノンの想いを知っていた事もあるが、別にそれを止める理由もなかったので、皆は応援するに留めていた。

 

 

そんな訳で、SAOの頃の皆が全員揃っているわけではないが、この場にいる皆に説明するように。

 

 

「…というわけなんだけど」

 

 

キリトとリーファが二人、皆に事情を説明する。

 

 

「確かに言ってる事は分からなくもないけど…」

 

 

実際にシグレの最期を見ていたフィリアはキリトの推測を疑いつつも、否定しきれなかった。

実際、彼女とて目の前でシグレが消滅するのを見たとはいえ、プレイヤーがHP全損した時のような光の粒を見ていたわけではない。

とはいえ、キリトの説明で全ての疑いがなくなるかといえば、そういうわけではない。

 

 

「……いいわ。キリトの話に賭けてみる」

「信じてくれるのか?」

 

 

言い出しっぺとはいえ、無茶苦茶な理論であることは間違いないと分かっていたからか、キリトはフィリアに尋ね返す。

それにフィリアは苦笑し。

 

 

「…正直、半信半疑よ。でも…心のどこかで、シグレがあの程度で死ぬはずがないって…信じてる部分がある。だから…可能性に賭けてみる」

 

 

それだけ、とフィリアは言葉を切る。

それ以上、言うことはない、と言わんばかりに。

 

 

「そうね…フィリアさんの言う通りかも」

 

 

それに続いたのはアスナだった。

 

 

「…彼にはいろいろと言わなきゃいけない事があるから。先に行かせなんてしない…勝手にどこかに行くなら、地の果てまでだって追いかけるわ」

 

 

SAOでフロアボスに対峙する時の気迫すら感じさせるアスナに。

 

 

「ひっ…」

「……こりゃあいつ、一回死ぬわ」

 

 

シリカが軽く悲鳴のような声を漏らし、リズベットが溜息交じりに言葉を漏らす。

 

 

「俺は知らないぞ…」

 

 

キリトも一言、そう言葉にする。

しかし、それ以上に。

 

 

「……」

 

 

SAOでも得意の獲物だった槍を手にしながら、一言も発せず、どこか俯き加減のサチが不気味さも相まって恐怖を掻き立てる。

 

 

「…あ、あの…サチ、さん……?」

 

 

そんな彼女に、恐る恐るリーファが声をかける。

すると僅かに視線をリーファに向け。

 

 

「……何?」

「ひぃっ!?」

 

 

虚ろな目の中に、どこか殺意すら感じさせる眼光が見え、リーファですら悲鳴を上げてしまうほどの恐ろしさを孕んでいた。

その悲鳴に我に返ってか。

 

 

「あ、あの…ごめんリーファ。ちょっと考え事しちゃって…」

「あ、あは…そ、そうですか…」

 

 

サチがリーファに咄嗟に謝る。

その様子はいつも通りのサチで、リーファもなんとか普通に対応していたが、どこか声が震えていた。

 

 

「……私もあいつに何か言ってやろうかって思ってたけど、やめとくわ」

 

 

アスナやサチの様子を見て、フィリアはそう溜息を吐いた。

 

 

「…それで、具体的にはどうするのよ」

「シノンがシグレが入院してた病院を知ってるらしくてな。シノンの報告待ちなんだ」

「そう…」

 

 

キリトの言葉に、なるほど、と頷くフィリア。

 

 

「……早くストレアも来ればいいのに」

 

 

彼女は最後に一つ、誰に聞こえるでもなく、呟いた。

 

 

「ん?…何か言ったか?」

「何でもないっ」

 

 

キリトがよく聞こえなかったのかフィリアに尋ね返すが、フィリアは笑顔で独り言を隠すのだった。


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