ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第10話:賞金首

そんなことはいざ知らず、フィールドに出たシノンとユウキ。

初めてのGGOともなれば、そう最初からうまく立ち回るのは難しいだろうと、シノンは考えていたが。

 

 

「せやぁっ!」

 

 

手近なモンスターを一薙ぎで倒し。

 

 

「せぇいっ!」

 

 

背後から迫るモンスターにも敏感に反応し、振り返って見えない速度での乱れ突き。

この辺りのモンスターでは、まるでユウキの相手になっていない。

ALOで剣が得意と言っていたが、これは相当ではなかろうか、とシノンは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。

 

 

「…やるわね、ユウキ」

「えへへ…」

 

 

はにかむユウキだが、やっていることは相当の手練れである。

この分なら、と。

 

 

「もう少し先に行ってみましょうか」

「はいっ!」

 

 

シノンの言葉に、ユウキは剣を持ったまま、どこか楽しげに戦場を駆けるのだった。

 

 

 

 

そうして、どれだけ戦っただろうか。

大分街から離れてしまい、弾薬も尽きかけるほどに戦い。

 

 

「一度、戻りましょうか。そろそろ弾薬を補充しないと…」

「え?あぁ…そうですね」

 

 

ユウキは殆ど光剣で戦っていたため、それほど弾薬の意識はないが、シノンはスナイパーの為そうはいかない。

ユウキもそれを察し、シノンに同意する。

そうして、踵を返そうとしたが。

 

 

「…あれ?」

 

 

ユウキが何かに気づき、駆けていく。

 

 

「ちょ、ちょっとユウキ!?」

 

 

シノンも慌ててユウキを追う。

シノンからすればユウキの移動は予想以上に速く、若干遅れながらついていく。

そうして、二人が駆けた先では。

 

 

 

 

シノンからしても予想外な光景が広がっていた。

 

 

「う、ぅ…」

「…嘘、だろ……!」

 

 

そこには、軽く20を超えるプレイヤーが、ダメージを負って倒れていた。

皆が皆、部位欠損をしており、動けるが銃を握れない者、足を欠損し動けない者と様々だった。

ただ皆に共通しているのは、皆が戦意喪失をしていることだった。

 

 

「…何があったの?」

 

 

その中の一人、倒れてこそいないが蹲っているプレイヤーにシノンが話しかける。

その話し声に反応するように。

 

 

「…なんてこたぁねぇよ。賞金首討伐クエストさ」

 

 

それだけなら、このGGOでは珍しいことではない。

実際、シノン自身もそういった事をしたりされたり、ということはあった。

とはいえ、この人数である。

 

 

「……何、仲間割れでも起こしたの?」

 

 

シノンは訝しげにそう尋ねる。

しかし、そのプレイヤーは。

 

 

「っ違う…俺達は全員で、一人のプレイヤーを狙ってたんだ」

「この人数で!?」

 

 

いくら何でもやりすぎではなかろうか、と考え、シノンは次の瞬間、一瞬背筋を冷やす。

ここにいる全員が一人のプレイヤーを狙って、結果的に全員倒れている。

ということは。

 

 

「まさか…この人数全員が一人に倒されたとでも?」

「っ…あぁ、その通りだ。あんな奴がニュービーなんて…嘘だろ……!」

 

 

シノンの予想は当たっていたが、それ以上に。

ニュービー…すなわち、新人プレイヤーが、少なくともそれなりにGGOをプレイしているプレイヤー全員をここまで痛めつけた、ということになる。

 

 

「…あんた、無駄に絶望したくなけりゃ早く離れたほうがいい。下手すりゃまだ近くにいるだろうからな」

「忠告どうも」

 

 

そのプレイヤーの忠告を軽く流しながら、辺りを見回す。

シノンはゲームを楽しむというより、強くあるためにここにいる、という部分がある。

だからこそ、逃げるという選択肢はなかった。

しかし、一つだけ懸念が。

 

 

「…ユウキ?」

 

 

シノンが見回すが、辺りには倒れ伏すプレイヤーばかり。

その中に、ユウキの姿はない。


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