ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第12話:非現実 / Sinon

しかし、そんなシノンの思惑を裏切るように。

 

 

「……」

 

 

相手は光剣を一振り。

たった一振りで、銃弾を反らす。

見られてすらいないのに、躱されてしまう。

それがまるで自分が未熟だと突きつけられるようで、シノンは若干冷静さを失い。

 

 

「っこの…!」

 

 

銃弾を確認し、再度スコープで狙いを定める。

その先には、こちらに目をくれず、けれどハンドガンの銃口を向ける相手の姿。

それはまるで、見なくてもお前くらい狙える、と、そう言われているようで。

 

 

「っ馬鹿に……!」

 

 

シノンは苛立ちを隠しもせずにトリガーに指をかけ。

 

 

「……しないでよ!!」

 

 

容赦なく発砲し、それに合わせて相手も発砲する。

シノンが放った銃弾は、真っすぐに相手に向かう。

一方で、相手の銃弾は若干シノンから見て右側に逸れていた。

 

 

「っ…よし……!」

 

 

この逸れ具合なら、避ける必要はない。

逆に、こちらの弾は、このままいければ、当たる。

剣も構えていなければ、さっきのように弾かれることもない。

そう、半ば確信していた。

しかし、次の瞬間。

 

 

「がっ……!?」

 

 

銃弾が、肩を貫く。

シノンの、肩を。

 

 

「な、んで…!」

 

 

撃ち抜かれた肩を空いた手で押さえながら、相手を見る。

相手は動いていない。

にも拘らず、被弾した様子がない。

強いて言うなら、相手の、シノンから見て右側の地面から土煙が上がっていた。

それが、余計にシノンを混乱させる。

弾道予測線も、実弾の弾道も、完全に捉えていたはず。

ここまで逸れるはずがない。

なら、どうしてこうなっている。

何が、起こった。

 

 

「…………っまさか、でもそんなのありえない…!」

 

 

ありえないことを、シノンは考える。

しかし、何故自分の銃弾が逸れたか。

何故、逸れていた相手の銃弾が命中したか。

 

 

「まさか…私の銃弾に命中させて、弾道を曲げた…!?」

 

 

初めから、シノンを狙っていたわけではなかった。

シノンが撃った銃弾が自らに被弾することを見越して。

自らの銃弾を命中させ、かつシノンの銃弾を逸らすために。

へカートIIから放たれた銃弾に自らの弾丸を命中させ、そこを起点に反射させることで、シノンに銃弾を命中。

合わせて、シノンの銃弾に側面から命中させることで、軌道を自分から強制的にずらす。

ありえないことだが、そうでもなければ説明がつかない。

しかし、もしそれが本当だとしたら。

 

 

「っ……」

 

 

勝てない。

そう、悟ってしまった。

銃弾も残っている、HPが全損したわけでもなし。

しかし、相手が放った銃弾は、シノンの戦意を明らかに貫いていた。


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