ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第13話:伸ばした手は、届かない / Yuuki

ユウキは剣を構え。

 

 

「やあぁぁぁっ!!」

 

 

再度、斬りかかる。

それに反応するように銃をしまい、再度剣を構え。

 

 

「……」

 

 

言葉を発することなく、ユウキに斬りかかる。

その速度は、どちらが勝るとも劣らず。

 

 

「くっ…」

 

 

けれど、今度はユウキは退かず、剣での突きを繰り出す。

 

 

「…」

 

 

たとえ、どれだけ止められたとしても、必ず隙が生じると信じて、ユウキは攻撃を続ける。

一方の相手は、ユウキの攻撃を受け止める。

とはいっても、致命的なものを確実に止められてはいるが、掠る程度の攻撃は命中していた。

状況だけ見れば、ユウキが優勢だった。

しかし。

 

 

「…はぁ、はぁ……!」

「……」

 

 

手数の多い攻撃と、最低限の防御、どちらが体力の消耗が激しいか。

その差が、現れ始めていた。

 

 

「っ…!」

「…」

 

 

徐々にユウキの息が乱れ、それに合わせるように攻撃に乱れが現れ始める。

それに合わせるように、相手に対し攻撃が当たらなくなっていた。

 

 

「……」

 

 

それを察したのか、相手が徐々に攻撃を始める。

 

 

「うっ…!?」

 

 

疲労が現れ始めたところに突然の斬撃。

さすがのユウキも一瞬怯んでしまう。

 

 

「……」

 

 

その一瞬の怯んだ瞬間を見逃さないかのように、けれど意表を突くかのように。

 

 

「え…?」

 

 

相手はユウキに足払いを仕掛ける。

全く意識がなかったのか、バランスを崩し、背中から地面に落ちる。

それでも剣を手放さなかったのは偶然か。

 

 

「…うぅ」

 

 

負けた悔しさに呻きながら、ユウキは相手を見上げる。

相手はユウキの首筋に剣の切っ先をあてる。

 

 

「っ…」

 

 

それに臆することなく、ユウキは相手を見上げる。

いつか、リベンジをするために、顔と名前くらいは覚えたい。

そう思ってのことだった。

 

 

「……」

 

 

揺れる前髪の隙間から覗く、ユウキを見下ろす視線は、冷たさを感じる。

もう少しだけ視線をずらし、相手の名前を見るユウキ。

それを見て。

 

 

「え……?」

 

 

表示された名前を見て、ユウキは目を見開く。

リアルとVRで同じ名前であるとは限らない。

たまたま、目の前の相手が、自分が探している相手の名前と同じ。

それだけ、のはずなのに。

相手の容姿すら、知らないはずなのに。

 

 

「しぐ、れ…さん……?」

 

 

少し、泣きそうな声でユウキがその名前を呼ぶ。

 

 

「……」

 

 

その名前を聞いたからか、それとも別の理由か、シグレ、という名の戦っていた相手は剣を納め、メニューを操作する。

転移の光に包まれていた。

GGOには転移はないとのことだから、ログアウトだろうと察する。

 

 

「ま、待って……!」

 

 

ユウキは縋るように呼び掛けるが、少しだけ遅く。

無意識に伸ばされた手が、力なく地に落ちた。


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