ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

222 / 251
第24話:再会の剣

キリトの光剣による斬撃を、シグレは自らの光剣で受け止める。

互いに片手で光剣を握っていたが、純粋な力ではキリトに軍配が上がる。

現に、拮抗していた鍔迫り合いも徐々にシグレが押され始める。

とはいえ。

 

 

「っ…」

 

 

シグレがそのままなわけもなく、空いている手で銃を取り出し、キリトに向ける。

しかし、それはキリトも分かっていたのか、自らの腰に手をやり、武器を手に取る。

手に取ったのは、二本目の光剣。

それを躊躇なく振るう。

 

 

「おおぉぉっ!」

 

 

シグレはそれを後ろに飛んで避ける。

結果として、キリトの剣は宙を斬る。

 

 

「っ…!」

 

 

着地したところで、シグレはキリトとは別の方向を見る。

向かってくる、別の影。

 

 

「はああぁぁっ!」

 

 

光剣を構え向かってくるのは、アスナ。

その速度は、先ほどのキリトとは比べ物にならない速度。

それでいて正確にシグレを捉え、連続での剣突。

 

 

「ちっ…」

 

 

突きは斬りと違い、範囲こそ狭いが、それは逆に言えば受け止めるのが難しい。

さすがにシグレも無傷とはいかず、僅かに攻撃を受けながらそれを受け止めつつ後退する。

 

 

「そこっ!!」

「…!」

 

 

そんなシグレの背後から、それを隙と捉えたフィリアの銃撃。

そのままでは捌ききれないと踏んだシグレは、横に躱し、アスナとフィリアを正面に捉え、対峙する。

そのほんの一瞬。

 

 

「…取った!」

 

 

そこにシグレが来ることをまるで予測していたかのように、シノンの放つ銃撃が襲い掛かる。

以前は、銃弾を銃弾で弾くという技を見せつけられたが、今はシグレはシノンに背を向けている。

躱しようがない。

 

 

「……」

 

 

はずだった。

しかし。

 

 

「な…!」

 

 

シグレは左手に持った自らの銃を、右脇の下から背後に向け、一発だけ放つ。

それが、シノンの銃弾を捉える。

その銃弾は、あの時と同じように、シノンの銃弾の弾道を逸らす。

それは、シグレの数十センチ右隣に着弾する。

その銃弾の勢いは生きており、更に言えば地形のせいか、砂塵が舞い上がる。

 

 

「……」

 

 

シグレは更に、自分の左隣数十センチに銃弾を数発撃ちこみ、砂塵を舞い上げる。

すると、やがて砂塵はシグレを覆い、その姿はシノンはおろか、直近に対峙していたアスナやフィリアでも捉えられない。

けれど、そうなればシグレからも見えていないはず。

そう思い、目の前の砂塵が晴れるのを待つ。

その瞬間、いかにシグレより早く反応するか。

その瞬間を狙い、二人は集中する。

やがて砂塵が晴れ、二人の意識が一層前方に集中する。

その瞬間。

 

 

「……二人とも、後ろ!」

 

 

どこからか聞こえる、叫ぶようなユウキの声。

その声にいち早くアスナが、僅かに遅れてフィリアが振り返る。

そこには。

 

 

「なっ…!」

 

 

こちらに駆け、自らの剣を振るう構えのシグレ。

そんなシグレの目は、SAOの時に見ていたシグレの目とは別人と思えるほどの、殺意を感じさせた。

本気で向けられる怒りなど比べ物にならないほどの、畏怖を与える何か。

いくらSAOで戦い続けたといえど。

 

 

「ひっ…!」

「っ…!」

 

 

アスナもフィリアも怯む。

躊躇のない、殺意。

SAOでのシグレしか知らない彼女らにとって、今のシグレは恐ろしさの象徴だった。

 

 

「……」

 

 

そんな彼女らに対し、シグレは容赦なく剣を振るい、アスナの光剣を弾き飛ばす。

弾き飛ばされた光剣は故障したのか、微かな電気音とともに刀身が消えてしまった。

シグレは次の瞬間すぐにフィリアに向き直り、銃弾を放つ。

その銃弾はフィリアの銃を捉え、それを破壊し、無効化する。

それを見届け、二人を背に駆け出す。

その先は。

 

 

「……くっ!」

 

 

ユウキの元だった。

シグレの斬撃をユウキは自らの光剣で受け止める。

シグレはすぐに後退し、銃をユウキに向ける。

合わせるようにユウキもシグレに銃を向ける。

わずかな膠着。

その後、二つの銃撃音が響く。

互い違いに放たれた銃弾は、互いの銃を捉え、それを破壊する。

 

 

「っ…!」

 

 

ユウキはすぐに壊れた銃をしまい、自らの光剣を構える。

一方でシグレは銃をしまわないまま、光剣を構える。

次の瞬間。

 

 

「な…っ!?」

 

 

シグレは壊れた銃をユウキに投げつける。

予想外でこそあったが、その程度なら、とユウキはそれを光剣で防ぐ。

しかし、その僅かな動作は、シグレにとっては十分な隙。

 

 

「……」

 

 

アスナの時と同じように、ユウキの光剣を自らの光剣で弾く。

互いに銃を失い、もう光剣に頼るのみ、となった状態でのシグレの一撃は、戦いを決定づけていた。

しかし、それでも終わらないのは。

 

 

「…今だよ、ストレア!」

 

 

そんなシグレの隙を突き、ユウキのフォローをする存在がいたから。

その声は、シグレも覚えていた。

SAOで最も長く共にいた、特徴的な紫髪。

 

 

「やああぁぁぁっ!!」

「っ…」

 

 

そんな彼女の『刀』を、シグレは受け止める。

このGGOでは存在するはずのない、SAOで自らが振るっていた刀。

それが何故ここにあるのか、という疑問が過る。

しかし、シグレはそんな考えを振り払い。

 

 

「っ…」

 

 

鍔迫り合いでは不利と判断し、後退する。

ストレアは構えを崩しこそしないが、追撃をせず。

 

 

「……久しぶり、シグレ。会いたかったよ」

 

 

まるで、SAOからの続きであるかのように、ストレアは声をかける。

シグレは光剣を構えたまま、ストレアを見据える。

 

 

「シグレを見倣って、刀の練習してみたんだけど…どう?」

「……余裕だな、敵を相手に教えを請おうとするか」

 

 

シグレの言葉に、ストレアは首を横に振る。

 

 

「ううん、敵じゃない」

「…これだけの事をされても、か?」

「でも……今は誰も、倒されてない。それはシグレが、そうしたくないって、そう思ったからでしょ?」

 

 

シグレはストレアの言葉に一度目を閉じる。

そして一つ息を吐いて、ストレアを見据え。

 

 

「……俺を揺さぶるつもりか」

「違う。アタシが言いたいのはそうじゃない」

 

 

光剣を構えるシグレに、ストレアは刀を構える。

その構えはまるで、シグレのそれだった。

 

 

「……たとえそれが無意識だとしても…自分に、嘘をつかないで」

 

 

届くかどうかわからない、ストレアの言葉。

そうして、動き出そうとした瞬間。

 

 

「っ…!ダメです!」

 

 

誰かが叫ぶ。

それは、ストレアも、シグレも知っていた声。

 

 

「ユイ…?」

 

 

振り返れば、ストレアの姉にあたる少女。

普段は戦場に出ることのないその少女は、必死に訴えていた。

あまりに必死そうな声に、さすがのストレアも振り返る。

…その一瞬、目を離した隙に。

 

 

「…このままでは……本当に、死んでしまいます!」

「っ!?…何を」

 

 

言っているの、とストレアは聞き返そうとしたが、それ以上は続かなかった。

 

 

「え…?」

 

 

視線を戻せば、先の戦いで無傷、あるいはせいぜい掠り傷程度だったはずのシグレが。

 

 

「っ…シグレ!?」

 

 

仮想世界の中とはいえ、その手から光剣を手放し、地に伏せていた。

ストレアが呼びかけるが、反応がない。

 

 

「…とりあえず、街まで運ぼう!俺がシグレを背負うから、道中頼む!」

 

 

いち早く反応したキリトがシグレを背負い、皆に指示を飛ばす。

それに反論する者は、その中にはいなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。