ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第26話:対峙

あまりに淡々と告げるシグレに、皆は一瞬言葉を失う。

 

 

「…それ、大丈夫なのかよ。こんな所にいて…」

 

 

医学にそれほど詳しくなくても重篤だと分かってしまう病名。

キリトが尋ねるが、シグレはいつものように、一つ溜息を吐き。

 

 

「まぁ、そう長くはないだろうな」

 

 

まるで他人事のように淡々と、そう告げる。

 

 

「そう考えるとSAOでの事も色々と合点がいく。ホロウ・エリアでの突然の制約、あの時におそらく発症していたのだろうな」

「…そう、なのかもしれないけど……!」

 

 

シグレの言葉に、ホロウ・エリアで最も長く一緒にいたフィリアが肯定しつつも言葉を詰まらせる。

本当に気にすべきところは、そんなことではないはずだ、と言いたかったのだが、何故か言葉にならない。

 

 

「…もういいか」

 

 

周りの様子を気に留める様子もなく、歩き出すシグレ。

 

 

「どこに行く気なの、シグレ」

「…お前には関係ない」

 

 

引き留めるストレアに止められながらも、シグレは止まろうとしない。

そんなシグレに対し。

 

 

「なくない!だって、アタシは…アタシ、は……!」

 

 

本当なら、止めたい。

止めて、病気なら治療をしてもらって。

少しでも、永く生きてほしい。

現実に対して何もできないとしても、かつて助けてくれたように、助けたい。

それだけなのに、その思いが、伝わらない。

 

 

「っ……!」

 

 

俯いて、それでも放さないストレアに一つ溜息を吐くシグレ。

振り払おうとしたシグレの前に。

 

 

「……何だ」

 

 

皆が、まるで入り口を塞ぐかのように。

 

 

「だいたい分かるだろ?話の流れで…さ」

 

 

キリトが。

 

 

「…そうね。どうやら、引っ叩いてでも、それこそ、斬ってでも止めなきゃいけないみたいだから」

 

 

アスナが。

 

 

「ホロウ・エリアで私とストレアが言ったこと、なんにも伝わってないみたいだから…力ずくででも、ってことね」

 

 

フィリアが。

 

 

「…先輩の敵になるのは不本意だけど、そうしないとならないっていうのなら…」

 

 

シノンが。

 

 

「ボクだって…まだ何も伝えられてない。まだ…終われない!」

 

 

ユウキが。

 

 

「……このままだと、シグレが死んじゃうっていうなら…アタシは全力で、シグレを止めるよ」

 

 

ストレアが。

皆が皆、シグレに立ちはだかる。

一瞬呆気にとられつつも、状況を理解し。

 

 

「………」

 

 

目を閉じ、一つ息を吐く。

そんなシグレに。

 

 

「どうする?どうやら、ここにいる誰もがお前のやることを止めようとするみたいだけど」

 

 

キリトが尋ねる。

そこには、数の理があるからか、あるいはSAOを生き抜くだけの実力者の集まりという事実があるからか。

勝ちを確信したような力強さのある言い方だった。

やれやれ、といった様子のシグレ。

 

 

「……まぁ、いいだろう。これ以上、障害になっても面倒だ」

 

 

言いながら、皆に視線を向ける。

その視線は、いつも通り。

いつも通りのはずなのに、本当に戦って、勝って、止められるのだろうかと疑問に思ってしまう。

 

 

「…もう少しくらいなら、付き合ってやる」

 

 

それでも、ここで止めなければ、取り返しのつかないことになる。

その確信は、シグレを除く誰もが持っていた。


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