ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第28話:拒絶と決意

キリト達が決意新たにしていた頃。

 

 

「……」

 

 

溜息交じりに現実に戻るシグレ。

 

 

「やぁ、お疲れ様」

「……モニタしていたのか」

「あぁ。君がどれだけ『使える』のかを知る、いい機会だからね」

「…」

 

 

シグレに話しかける、どこか裏がある、けれどそれを悟らせない笑みを眼鏡越しに浮かべる男。

それが誰かは、言うまでもなく。

 

 

「……それで、結果は」

「…あぁ、合格だとも。あれだけ戦える相手をあの人数相手に完封できるほどだ。見事、の一言に尽きるね」

 

 

拍手をしながらの菊岡。

 

 

「これなら、彼らに依頼せずとも、プロジェクトは進められるかもしれないね」

「…」

「もっと喜べばいいだろう。君が力を示したことで、僕は彼らに依頼をすることなく事を進められる…君のおかげで、彼らは平穏な生活を送れるのだからね」

 

 

君が望んだことだろう?

そう、菊岡は続ける。

 

 

「…よく言う。貴様があいつらを人質にしただけのことだろう」

「人質とは人聞きの悪い。別に命の危険があるわけでもないんだがね」

 

 

いずれ詳細は告げる。

それまで、少しでも体調がよくなるように療養してくれ。

それだけ告げ、菊岡は部屋を出ていく。

 

 

「……」

 

 

一人となった室内で、時雨は一人、自らの手に視線を落とす。

SAOを始める前から比べると、やつれた手。

軽く拳を握ってみるが、力の入りはそれほど良くなかった。

それでも。

 

 

「……俺があいつらに返せる事はもう、これくらいしかない」

 

 

いくらVR慣れしているからといっても。

得体の知れないものに、巻き込むわけにはいかないと思っていたから。

自分なんかを仲間だと呼ぶお人好しを、巻き込みたくないという、時雨なりの贖罪。

それを完遂するためにも。

 

 

「…これが終わるまで持てば十分だ」

 

 

そうなれば、たとえ自分の命が尽きたとしても、どうでもいい。

それで、彼らが平穏に、時にゲームを楽しみながら生きられるのなら。

そう思いながら、時雨は立ち上がり、部屋を後にする。

 

 

「余計な気を、起こしてくれるなよ…?」

 

 

そう、願いながら、診察室へと向かう。

自分が置かれた病名についても告げた。

突き放す言葉もぶつけた。

ここまですれば、いくらあいつらでも、もう関わってこないだろう、と思いながら。

 

 

「……紺野、か」

 

 

ふと、ユウキと名乗る少女から告げられた苗字。

時雨にとっては、懐かしい苗字だった。

だからこそ、ユウキが何を言おうとしていたかも、おおよそ察しはついていた。

謝りたいこと、と言っていた。

 

 

「……」

 

 

どうせもう少しで、その罪悪感を感じる相手はいなくなる。

この身体に限界が来れば。

そうなれば、きっと彼女は救われる。

そう、時雨は確信めいた何かを持っていた。

 

 

「…」

 

 

自分の事など風化させてしまえばいい。

自分のような人間など、誰かに仲間と言ってもらえる筋合いなどない。

ああいう奴らが歩く光の下を、自分は歩けない。

自らの罪は、それを許さない。

 

 

 

…だからこそ、彼らの仲間と言うことは、時雨にはできない。

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