ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
シグレとの戦いの後、キリトをはじめとした皆は、キリトのプライベートルームに来ていた。
「…ユイ」
「はい、パパ!」
キリトが名前を呼ぶと、ユイが答える。
戦いの前に何かを打ち合わせていたのか。
「皆さんも、一緒に聞いてください…シグレさんについてです」
ユイの言葉に、皆が黙り、彼女を見る。
その注目に動じることなく、ユイは宙にスクリーンを表示させ、話を続ける。
「先ほどの皆さんの決闘の間に、シグレさんがどこから接続を行っているのかを検索しました」
逆探知に近いもの、でしょうか。
ユイはそう続けた。
「それで…場所は分かったの?」
「はい。座標は…ここです」
シノンの問いに、ユイが答えると、ユイが指し示す先に赤い×の印がつく。
その場所は。
「…ここ、私が住んでるマンション?」
「はい。正確な部屋の位置までは分かりませんでしたが、間違いないと思います」
「だとしたら、ここに行けば…」
ユイの言葉にアスナが皆を促そうとするが。
「…ちょっと待って」
「フィリア?」
「それって変じゃない?シグレは自分が白血病だとか言ってたじゃない。なんで自宅からインしてるのよ」
フィリアの言葉にユイが頷く。
「シノンさん。ここは病院では…ないですよね」
「…流石に違うわ」
「先ほどのモニターからも、シグレさんが重篤な病に冒されている可能性は非常に高いです。であれば、このような場所からのログインは不自然です」
「…それがあるから、SAOでの事が説明がついちゃってるからね」
誰もが、シグレが正常ではない、という事は疑っていない。
だからこそ、これは。
「……おそらくだけど、ここは多分先輩が住んでた部屋」
「だとすると、本当に自宅からログインしているか…」
「…偽装しているか、です。シグレさんの状況を鑑みるに、偽装の可能性が非常に高いと思いますが…」
確証がないのか、言い切らないユイ。
その様子を見て。
「…なら私が、先輩の部屋に行ってみる。同じマンションだもの、私が一番近いわ」
「……頼む」
シノンが立候補する。
皆も異論がないのか反論はせず、キリトが代弁するように言うと、シノンは頷いた。
「でも、もし偽装だとしたら…追いようがないんじゃ」
そんな皆のやる気を削ぎかねない不安要素。
それをリーファが口にする。
誰もが考えていたことではあるが。
「…そっちは、アタシが調べるよ」
「ストレア?」
「忘れたの?アタシだってAIだよ。ユイみたいには上手くいかないかもだけど、やれるだけのことはしたいから」
ストレアの言葉にフィリアが名を呼ぶと、苦笑しながら答える。
フィリアはそういえば、と思い直すように言う。
「…なら、私は一足先にログアウトするわ。ユウキはどうする?」
「あ、ボクも行く!」
「そう……そういうことだから、お先に」
言いながら、シノンとユウキが先にログアウトしていく。
それを見送りながら。
「じゃあストレア。私たちも行こ?」
「あ、うん。じゃあ皆、またねー」
ログアウト、という言い方は違うかもしれないが、ユイとストレアがその場から消えるのだった。
「…皆はどうする?俺はもう少しGGOの中で情報収集しようと思ってるけど」
「私は、お兄ちゃんと一緒に行こうかな」
キリトとリーファがそう言葉にする。
「…って言ってるけど、半分はレベリングとかじゃないの?」
「バレたか」
「全くもう…まぁいいわ。現実に戻ってもシグレ君の事は分からないし、ここで調べるのが妥当かもしれないわ」
悪びれる様子のないキリトにアスナが溜息を吐く。
それは今この場に残っている皆が同じようだった。