ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第29話:できる限りのこと

シグレとの戦いの後、キリトをはじめとした皆は、キリトのプライベートルームに来ていた。

 

 

「…ユイ」

「はい、パパ!」

 

 

キリトが名前を呼ぶと、ユイが答える。

戦いの前に何かを打ち合わせていたのか。

 

 

「皆さんも、一緒に聞いてください…シグレさんについてです」

 

 

ユイの言葉に、皆が黙り、彼女を見る。

その注目に動じることなく、ユイは宙にスクリーンを表示させ、話を続ける。

 

 

「先ほどの皆さんの決闘の間に、シグレさんがどこから接続を行っているのかを検索しました」

 

 

逆探知に近いもの、でしょうか。

ユイはそう続けた。

 

 

「それで…場所は分かったの?」

「はい。座標は…ここです」

 

 

シノンの問いに、ユイが答えると、ユイが指し示す先に赤い×の印がつく。

その場所は。

 

 

「…ここ、私が住んでるマンション?」

「はい。正確な部屋の位置までは分かりませんでしたが、間違いないと思います」

「だとしたら、ここに行けば…」

 

 

ユイの言葉にアスナが皆を促そうとするが。

 

 

「…ちょっと待って」

「フィリア?」

「それって変じゃない?シグレは自分が白血病だとか言ってたじゃない。なんで自宅からインしてるのよ」

 

 

フィリアの言葉にユイが頷く。

 

 

「シノンさん。ここは病院では…ないですよね」

「…流石に違うわ」

「先ほどのモニターからも、シグレさんが重篤な病に冒されている可能性は非常に高いです。であれば、このような場所からのログインは不自然です」

「…それがあるから、SAOでの事が説明がついちゃってるからね」

 

 

誰もが、シグレが正常ではない、という事は疑っていない。

だからこそ、これは。

 

 

「……おそらくだけど、ここは多分先輩が住んでた部屋」

「だとすると、本当に自宅からログインしているか…」

「…偽装しているか、です。シグレさんの状況を鑑みるに、偽装の可能性が非常に高いと思いますが…」

 

 

確証がないのか、言い切らないユイ。

その様子を見て。

 

 

「…なら私が、先輩の部屋に行ってみる。同じマンションだもの、私が一番近いわ」

「……頼む」

 

 

シノンが立候補する。

皆も異論がないのか反論はせず、キリトが代弁するように言うと、シノンは頷いた。

 

 

「でも、もし偽装だとしたら…追いようがないんじゃ」

 

 

そんな皆のやる気を削ぎかねない不安要素。

それをリーファが口にする。

誰もが考えていたことではあるが。

 

 

「…そっちは、アタシが調べるよ」

「ストレア?」

「忘れたの?アタシだってAIだよ。ユイみたいには上手くいかないかもだけど、やれるだけのことはしたいから」

 

 

ストレアの言葉にフィリアが名を呼ぶと、苦笑しながら答える。

フィリアはそういえば、と思い直すように言う。

 

 

「…なら、私は一足先にログアウトするわ。ユウキはどうする?」

「あ、ボクも行く!」

「そう……そういうことだから、お先に」

 

 

言いながら、シノンとユウキが先にログアウトしていく。

それを見送りながら。

 

 

「じゃあストレア。私たちも行こ?」

「あ、うん。じゃあ皆、またねー」

 

 

ログアウト、という言い方は違うかもしれないが、ユイとストレアがその場から消えるのだった。

 

 

「…皆はどうする?俺はもう少しGGOの中で情報収集しようと思ってるけど」

「私は、お兄ちゃんと一緒に行こうかな」

 

 

キリトとリーファがそう言葉にする。

 

 

「…って言ってるけど、半分はレベリングとかじゃないの?」

「バレたか」

「全くもう…まぁいいわ。現実に戻ってもシグレ君の事は分からないし、ここで調べるのが妥当かもしれないわ」

 

 

悪びれる様子のないキリトにアスナが溜息を吐く。

それは今この場に残っている皆が同じようだった。


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