ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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Chapter-4 : Murderers' Past
第1話:変わらぬ事実


突然刃を向けるヴェンデルガルト。

 

 

「家族を…殺された?」

 

 

そんな彼女に、キリトが鸚鵡返しで尋ねる。

 

 

「…あいつは、私の両親を、殺した。私は忘れない…あいつの足元で血を流す家族の姿を。あいつの刀から滴り落ちる、家族の血を…!」

「シグレが…か」

「あれから私は、剣を学んだ。あいつが家族を殺したのと同じ…それ以上の方法であいつを殺すために」

 

 

家族の仇討ち、ということなのだろうと彼女以外の皆は察する。

 

 

「…憎しみは憎しみしか生まないって、知ってるか?」

「そうね。だからあいつは私という復讐者を生んだ…けど、だからどうした。あいつは人を殺す事しかできないような奴だ」

 

 

殺したところで、それ以上の憎しみなんて生まない。

ヴェンデルガルトはそう言い切る。

 

 

「…残念ながら、そうはならないだろうな」

「……?」

「分からないか?あいつがお前に殺されれば、今度は俺たちが憎しみの刃を向けることになるだろうからさ」

「な…」

 

 

信じられない、といった表情のヴェンデルガルトに、キリトは言葉を続ける。

 

 

「俺たちは昔のあいつを知らない。だから、平気で人を殺すような奴だったといわれても、それを否定することはできないさ」

「だったら……!」

「…けど、あんたは…今のあいつの何を知ってるんだ?」

 

 

キリトの言葉にヴェンデルガルトは押し黙る。

 

 

「……そうね。確かに私が知っているのは昔のあいつだけ。それは認める」

「だったら…!」

「それでも、あいつは私の家族を殺した。それは紛れもない事実……だから、私は復讐の為に、あいつを殺す」

 

 

それが、私が今生きる意味だから。

言いながら、ヴェンデルガルトは武器を収める。

それを見て、アスナも剣を収める事で、緊迫した空気は収まる。

 

 

「……」

 

 

しかし、先ほどのような会話を交わせる雰囲気ではなくなっていた。

その空気からか。

 

 

「…」

 

 

ヴェンデルガルトは踵を返し、建物の中へと入っていった。

その様子を見送りつつ、後は追わない。

 

 

「……危なかったね」

「あぁ…リーファも、そう思ったか」

「うん…」

 

 

キリトとリーファが言葉を交わす。

神妙な様子の二人に。

 

 

「危ないって…さっきの人が?まだMMOに慣れてないように見えたけど…」

 

 

剣を向けられる前の派手な転倒のことを言っているのだろう。

アスナの言葉に。

 

 

「…あぁ。多分MMOを始めて間もないとは思う」

「だったら…」

「けど…慣れてないからこそ、助かった、というべきかもしれないな」

 

 

キリトはそう言葉を返す。

それは言い換えれば、彼女がもし、MMOでの身のこなしに慣れていたら。

 

 

「……さっきの気迫というか威圧感というか…どこかシグレに似てた、気がする」

 

 

剣を直接つきつけられたフィリアもそんな風に言葉にする。

実際戦ったらどうなのかが分かるわけではないが。

 

 

「出来れば、相手にはしたくない…かな」

 

 

ゲームとしてのただの力比べならいいが、それで済むかどうかと思ったキリトは、そう言葉を漏らす。

それについては異論がなかったのか、誰も何も言わない。

 

 

「……見覚えのある顔を見つけたからついてきてみりゃ、また懐かしい顔ぶれだなぁ?」

 

 

そんなキリト達の背後からかけられる声。

振り返り、その場にいた4人は息を呑む。

 

 

「なんで…」

 

 

キリトが何とか言葉を紡ぐ。

 

 

「…なんでお前がここにいるんだ」

 

 

息が詰まるような表情は徐々に警戒心に変わる。

無理もない。

そこにいたのは、かつてSAOを混乱に招いたギルド『笑う棺桶』のリーダー。

 

 

「…PoH!」

 

 

キリトが名を呼ぶ。

 

 

「随分見た目が変わったが、黒の剣士か。覚えててくれて嬉しいぜ?HAHAHA…!」

 

 

4人を目の前にしても飄々とした、あるいは余裕なのか。

PoHはフードで目を隠したまま、ただ、嗤う。


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