ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第19話:罠、そして崩壊

それからさらに数日。

 

 

「じゃ、行ってくるよ」

 

 

言いながら、リーダーのケイタが一人、始まりの町への転移をする。

これまでの狩りで資金がたまり、ギルドホーム、自分たちの家を購入することにしたのだ。

 

 

「…な、ケイタが戻ってくるまでの間、少し稼ぎに行かないか?」

「なら少し、上の層に行ってみようぜ」

 

 

残ったメンバーの中でそんな話題になる。

 

 

「…このあたりでいいんじゃないのか?」

「でも上なら、もっと稼げるだろ?今の俺たちなら大丈夫だって。何より、シグレもいるしな」

「……」

 

 

こうなってくると、きっと彼らは止まらないだろう。

サチは少しだけ不安そうに見えたが、普段の臆病さが災いしてか反論しなかった。

 

 

 

 

そうして、ケイタを除いた5人で、第27層迷宮区へ。

 

 

「…な、大丈夫だろ?」

「そのうち最前線で活躍もできるかもな」

 

 

談笑しながら進んでいくテツオ、ササマル、ダッカーに不安を残しながら後に続いていく。

そうして進んでいくと、たまたま見つけた隠し部屋。

 

 

「……こんな場所に、隠し部屋…?」

 

 

そうして、あからさまに部屋の真ん中に設置された宝箱。

 

 

「トレジャーボックスだ!」

「…よせ、そいつは…!」

 

 

シグレが止めるが、もう遅い。

部屋が赤く染まり、警報が鳴り響いた。

 

 

「…ちっ!」

 

 

シグレは舌打ちをしながら、近くにいたサチを入口の方に向かって勢い良く押し出す。

 

 

「シグレ!?」

 

 

突然のシグレの行動に、サチは抵抗することもできずにされるがままで。

けれど、それが幸いし、扉が閉まる直前にサチを部屋から出すことに成功した。

 

 

「…三人、中央で背中を寄せて守れ。絶対に目の前の敵を近づかせるな」

 

 

部屋に入りきらなくなる程のモンスターが現れる中、シグレは指示を飛ばす。

 

 

「そんなこと言ったって、この数じゃ捌ききれないって!」

「…誰が捌けと言った。俺は『守れ』と言ったはずだ。全員、自分のHPに常に気を配れ。半分を切ったらすぐに回復…忘れるな」

「お、おう…!」

 

 

言いながら、シグレは剣を抜き。

 

 

「敵の数を減らすのは…俺がやる」

「俺たちを守りながら、1人でやる気かよ!?」

「…俺の回復アイテムはそっちに預ける…死ぬなよ」

「りょ、了解!」

 

 

その返事を聞いてか、シグレは黒猫団の皆からモンスターに視線を戻す。

 

 

「……行くぞ」

 

 

シグレは、モンスターの群れを見据える。

 

 

「っ…!?」

 

 

その表情がたまたま見えたテツオは、時雨の表情に一瞬だけ恐怖した。

それは、今までテツオが、あるいは黒猫団の皆が見たことのない。

敵を殲滅せんとする明らかな殺意。

口元は笑っていたが、それすら恐怖に感じた。

それを知ってか知らずか、シグレは剣を手にモンスターの群れに斬り込んでいく。

 

 

「…やるぞ!」

「「おぉ!」」

 

 

シグレに感じた恐怖を振り払うようにテツオは声を上げる。

ササマル、ダッカーもそれに応える。

 

 

文字通り、命を賭けた戦いが始まった。


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