ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
その頃、PvP用のフィールドにて。
「やああぁぁぁっ!!」
「っ…くっ!」
リーファの光剣をキリトが光剣で受け止める。
その背後から。
「そこっ!」
フィリアがキリトの背後から銃撃。
更に。
「せやあぁぁっ!!」
アスナが銃弾の背後から持ち前の速度を活かして近づき、追撃をする。
「くそ、っ…!」
いくらSAO生還者のキリトとはいえ、同じく生還者であるリーファ、フィリア、アスナを同時に相手にするのは厳しいらしく。
「っまたやられた…さすがにきついな、これは…!」
その場に大の字に倒れて負けを認めるキリト。
「やっぱり1対3はきついんじゃ…」
リーファが困ったように言う。
「…はは、そうかもな…」
それにはキリトも笑って返す。
その反応にリーファは一つ溜息を吐いた。
現在、4人はキリト対他、というチーム型のPvPを行っていた。
当然ながら、リーファ、アスナ、フィリアの攻撃は互いには当たり判定がない。
その為、キリトは3人の攻撃を全て捌ききらなければ勝てない。
「……でもさ。この状況で勝てるくらいじゃなきゃ、あいつには勝てないだろ?」
キリトは立ち上がりながら、そう答える。
彼の言いたい事は、三人も理解していた。
シグレとの戦い。
あの時は、シグレに対し、自分たち四人に加え、ストレア、シノン、ユウキもいた。
その状況であっても。
「全然、敵わなかったからね…」
アスナがそう、続ける。
彼女が言う通り、7人がかりでも、シグレには勝てなかった。
それが、惜しくも敗北、ならまだいい。
「……全然、歯が立たなかった。正直…あそこまで強いとは思ってなかったわ」
フィリアが思い出すように言う。
シグレ以外が地を這う中、シグレは殆ど息を乱さずに立っていた。
「ねぇ、お兄ちゃん。ずっと気になってたんだけど…」
「ここではその呼び方は…ってのは野暮か。なんだよリーファ」
リーファがふと、キリトに問いかける。
「……お兄ちゃんが、そこまでしてシグレさんを追いかける理由って…何なの?」
「え…?」
何を言っているんだ、と言いたそうなキリトに慌ててリーファが取り繕うように。
「も、もちろんあの人がSAOで仲間だったっていうのは知ってるよ?でも、今は…」
リーファにとっては、シグレが完全に敵に見えているのだろうとキリトは悟った。
同時に無理もない、とキリトは思っていた。
リーファとしてSAOにログインしたのは、シグレがホロウ・エリアに入り込んだ後。
その後、シグレはアインクラッドに戻ることなく終わった。
つまり、会話をしたことすらまるでない。
そこに、今回の対峙である。
敵だと思うな、という方が無理だとキリトは思う。
「……今のあいつを見たら、そう思っても仕方ないかもね」
キリトが何かを言おうかとする前に、フィリアが答える。
「私だって、今のシグレしか知らなかったら、貴女と同じだと思う。けど…それでもね」
どれだけ自分が苦しい状況になっても、私達を助けてくれた。
そう、フィリアは続ける。
彼女とて、そう付き合いが長いかと言われれば、そういうわけではない。
それでも、シグレが共に戦ってくれた、その時を知っているから。
だからこそ。
「私は、シグレの力になりたいって思える理由があるから」
だから、私は私にできることをやる。
そう、フィリアははっきりと告げた。
それに続くように。
「…私も」
アスナが言葉を続ける。
「シグレ君には謝らなくちゃいけないから。彼は私を助けて、導いてくれたのに…私は、自分の剣で、あの人を…」
アスナが思い出すように、苦い顔をしながら自分の利き手を見る。
その意味をこの中で理解しているのはキリトのみだったが。
「……だからこそ」
あの人を、救いたい。
想い人をその手で、傷つけてしまった過去は、どうあがいても消えない。
だとしても。
否、だからこそ。
「…助けたいの。彼を」
アスナも、はっきりと告げる。
何からか、なんて分からないけれど。
「まぁ…俺もさ。二人とはちょっと違うかもしれないけど…あいつとは勝率半々でさ。このままじゃ終われないってのもあってな」
「…ふぅん」
最後のキリトの言葉に、なんとなく、といった感じで頷くリーファ。
「だからまぁ、無理にこっちに付き合わなくても…」
「……何言ってるの、お兄ちゃん。私もちゃんと最後まで、付き合うよ」
キリトの提案に苦笑するリーファ。
「だって…ここで私が抜けたら悪者みたいじゃない」
そんな風に笑うリーファに、三人もつられて笑うのだった。