ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第5話:戦う意味

その頃、PvP用のフィールドにて。

 

 

「やああぁぁぁっ!!」

「っ…くっ!」

 

 

リーファの光剣をキリトが光剣で受け止める。

その背後から。

 

 

「そこっ!」

 

 

フィリアがキリトの背後から銃撃。

更に。

 

 

「せやあぁぁっ!!」

 

 

アスナが銃弾の背後から持ち前の速度を活かして近づき、追撃をする。

 

 

「くそ、っ…!」

 

 

いくらSAO生還者のキリトとはいえ、同じく生還者であるリーファ、フィリア、アスナを同時に相手にするのは厳しいらしく。

 

 

「っまたやられた…さすがにきついな、これは…!」

 

 

その場に大の字に倒れて負けを認めるキリト。

 

 

「やっぱり1対3はきついんじゃ…」

 

 

リーファが困ったように言う。

 

 

「…はは、そうかもな…」

 

 

それにはキリトも笑って返す。

その反応にリーファは一つ溜息を吐いた。

現在、4人はキリト対他、というチーム型のPvPを行っていた。

当然ながら、リーファ、アスナ、フィリアの攻撃は互いには当たり判定がない。

その為、キリトは3人の攻撃を全て捌ききらなければ勝てない。

 

 

「……でもさ。この状況で勝てるくらいじゃなきゃ、あいつには勝てないだろ?」

 

 

キリトは立ち上がりながら、そう答える。

彼の言いたい事は、三人も理解していた。

シグレとの戦い。

あの時は、シグレに対し、自分たち四人に加え、ストレア、シノン、ユウキもいた。

その状況であっても。

 

 

「全然、敵わなかったからね…」

 

 

アスナがそう、続ける。

彼女が言う通り、7人がかりでも、シグレには勝てなかった。

それが、惜しくも敗北、ならまだいい。

 

 

「……全然、歯が立たなかった。正直…あそこまで強いとは思ってなかったわ」

 

 

フィリアが思い出すように言う。

シグレ以外が地を這う中、シグレは殆ど息を乱さずに立っていた。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。ずっと気になってたんだけど…」

「ここではその呼び方は…ってのは野暮か。なんだよリーファ」

 

 

リーファがふと、キリトに問いかける。

 

 

「……お兄ちゃんが、そこまでしてシグレさんを追いかける理由って…何なの?」

「え…?」

 

 

何を言っているんだ、と言いたそうなキリトに慌ててリーファが取り繕うように。

 

 

「も、もちろんあの人がSAOで仲間だったっていうのは知ってるよ?でも、今は…」

 

 

リーファにとっては、シグレが完全に敵に見えているのだろうとキリトは悟った。

同時に無理もない、とキリトは思っていた。

リーファとしてSAOにログインしたのは、シグレがホロウ・エリアに入り込んだ後。

その後、シグレはアインクラッドに戻ることなく終わった。

つまり、会話をしたことすらまるでない。

そこに、今回の対峙である。

敵だと思うな、という方が無理だとキリトは思う。

 

 

「……今のあいつを見たら、そう思っても仕方ないかもね」

 

 

キリトが何かを言おうかとする前に、フィリアが答える。

 

 

「私だって、今のシグレしか知らなかったら、貴女と同じだと思う。けど…それでもね」

 

 

どれだけ自分が苦しい状況になっても、私達を助けてくれた。

そう、フィリアは続ける。

彼女とて、そう付き合いが長いかと言われれば、そういうわけではない。

それでも、シグレが共に戦ってくれた、その時を知っているから。

だからこそ。

 

 

「私は、シグレの力になりたいって思える理由があるから」

 

 

だから、私は私にできることをやる。

そう、フィリアははっきりと告げた。

それに続くように。

 

 

「…私も」

 

 

アスナが言葉を続ける。

 

 

「シグレ君には謝らなくちゃいけないから。彼は私を助けて、導いてくれたのに…私は、自分の剣で、あの人を…」

 

 

アスナが思い出すように、苦い顔をしながら自分の利き手を見る。

その意味をこの中で理解しているのはキリトのみだったが。

 

 

「……だからこそ」

 

 

あの人を、救いたい。

想い人をその手で、傷つけてしまった過去は、どうあがいても消えない。

だとしても。

否、だからこそ。

 

 

「…助けたいの。彼を」

 

 

アスナも、はっきりと告げる。

何からか、なんて分からないけれど。

 

 

「まぁ…俺もさ。二人とはちょっと違うかもしれないけど…あいつとは勝率半々でさ。このままじゃ終われないってのもあってな」

「…ふぅん」

 

 

最後のキリトの言葉に、なんとなく、といった感じで頷くリーファ。

 

 

「だからまぁ、無理にこっちに付き合わなくても…」

「……何言ってるの、お兄ちゃん。私もちゃんと最後まで、付き合うよ」

 

 

キリトの提案に苦笑するリーファ。

 

 

「だって…ここで私が抜けたら悪者みたいじゃない」

 

 

そんな風に笑うリーファに、三人もつられて笑うのだった。


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