ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
奴の知り合いと別れてから。
一人、街の中を歩く。
「……」
ヴェンデルガルト。
彼女の銀髪は、この荒廃した世界では良くも悪くも目立っていた。
そんな彼女が持っている装備は、初期装備とほぼ変わらないもので、それだけ見れば、それほど実力が無いようにも見えてしまう。
それが理由で。
「おう、嬢ちゃん一人でどこ行くんだい?」
「外に行くなら俺たちが護衛してやろうか?へへっ…」
下卑た笑みを浮かべて近寄ってくる屈強な男二人組。
世界観もあり、どうあっても治安が悪いこのMMOの中では、それほど珍しくない。
そのせいか、ショップで人目があるにも関わらず、こうして近寄ってくるものも多い。
「……」
ふと、周りを見渡せば、こちらに興味津々なのか、好奇の目を目を向けてくる輩が多い。
そう、彼女は感じていた。
そんな彼女が最初に思うのは。
「……邪魔」
それだけだった。
やれやれ、と溜息を吐いて、男達の脇を通り過ぎる。
それが、男達にとっては苛立たしかったのか。
「っ…舐めてんじゃねぇぞ女ぁ!俺達が誰なのかわかって…!」
その中の一人が、通り過ぎた彼女の肩に掴みかかる。
「…」
しかし、それは適わなかった。
何故なら。
「が……!?」
いつの間にか彼女が逆手に持った光剣が男の腹部を貫いていたから。
無残にも光剣が男の腹を貫き、背中に突き出していた。
「……」
振り返りざまに光剣を引き抜くと、男は力を失いその場に倒れこむ。
「…本当に舐めていたのは」
ヴェンデルガルトは男の傷口を容赦なく抉るように踏みつけながら、男に顔を寄せる。
声をかけた相手の異性が自分に顔を寄せてくれる状況。
彼女の目の前の男にとっては、願ったりな状況かもしれない。
しかし。
「……どっち?」
目の前に武器が突き付けられているわけでもない。
力を入れて振り払えば、おそらく簡単に形勢逆転できるだろう。
それでも、そうする気力が起きない。
それほどまでに、男は目の前の彼女に畏怖していた。
彼女が特別表情を作っていたわけではない。
それどころか、どんな感情なのかすら見えない。
それがより一層、男の恐怖を煽っていた。
「…」
やがて、彼女は顔を離し、刃をしまった光剣の出力部分を男の口の中に突っ込む。
もしここで刃を出されれば、喉奥が焼かれてしまうだろう。
その恐怖に、男は惨めにも目尻に涙を溜める。
「んー、んーっ…!!」
首を横に振り、何とか逃れようとするも、逃れられるわけもなく。
男に許しを請うことすら、彼女は許さない。
そんな男に、情が湧くどころか、感情一つ乱さず。
「…」
ブン、という光剣特有な音と共に、男は動きを止めた。
男の動きが止まったのを確認し、彼女は立ち上がり。
「……」
引き抜いた光剣の鞘についた男の唾液だろうか、それが気になったのか。
光剣を持ったまま、もう一人の男に視線を向ける。
「ひっ…わ、悪かった…許し……!」
後ずさりしようとしながら許しを請おうとする男に。
「…あげる」
光剣を投擲する。
その光剣は男の胸を貫き、その場に倒れた。
現実であれば、そこは肺か心臓がある位置。
そんな事が出来るのは、ここが仮想世界だから。
だから、彼女は表情一つ崩さずこんなことができるのだ、と。
そう、周りは思い込む事にした。
現実でこんなことができるわけがない。
出来るのだとしたら、狂っている。
「……武器、買わなくちゃ」
ショップに向けて歩き出す彼女を、今度は誰も邪魔しない。
それどころか、邪魔にならないように道を開ける。
彼女はそれを気に留めることもなく、買い物を終えてショップを去っていった。