ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
シグレは、どこに行ったのか。
最初の頃は日本人らしい、というか、少なくともちょっと変わった服装に見えていたが、今は周りに馴染んでおり、なかなか見つからない。
「…」
なんとなく歩き出したはいいが、そもそもこっちに来たという保証も無かった。
そうなると、いよいよ探すのは無理があるかもしれない。
もしもう少し探して見つからなかったら帰った方がいいのかもしれない。
「…なんで私、こんなことしてるんだろ」
ふと思う。
考えてみれば、何だかんだで彼はちゃんと夜には帰ってきていた。
皆が寝静まるくらい遅くではあったが。
私は平日は学校に通っている。
シグレもホームステイなら通えばいいのに、とも思うが、通っていない。
何のためのホームステイなのだろう。
その綻びが広がるように、シグレに対する興味と疑問が出てきていた。
だから今日、こうしてシグレを尾けてみようと考えたのだが。
「……だめ、か」
家を出てどのくらい経つだろうか。
そこそこ人の多い通りなら、人混みに紛れたシグレが見つかる確率が高いかと思ったが、そう上手くはいかなかった。
帰ろうか。
そう思い、来た方向へと戻ろうと振り返ろうとしたとき。
――きゃああぁぁぁぁぁぁっ!!!
女性の悲鳴。
声がした方を見れば、人だかりが出来ていた。
ざわざわ、と皆が何かを言い合っている。
よくは聞き取れないが、顔色を見ると、驚いている人、青ざめている人、口を押えている人と様々だった。
何だろう。
そう思い、人だかりに近づき、隙間を通してもらいながら、中心に近づく。
「っ…見ちゃだめだ!」
近くにいた見知らぬ男性が必死に私に呼びかける。
しかし、それは、ほんの少しだけ遅かった。
「っ…う……!?」
目の前には、胸のあたりを真っ赤に染めた男性が、建物を背にして事切れた姿。
それほど時間が経っていないのか、服を濡らす赤いそれは、まるで小さな噴水のように服を揺らしながら溢れだし続け、赤い染みを大きくしていく。
突然だったのか、男性の目は大きく見開かれ、口はだらしなく開いていた。
私とて、死を理解できないほど子供ではない。
とはいえ、こんなものを見たことは今までにあるわけもない。
私にはあまりにも、刺激が強すぎた。
何か、嫌なものがこみあげてきて、吐き出しそうになるのを何とか両手で押さえる。
頭が、痛い。
体に力が入らない。
「……ぅ…?」
その場に崩れ落ちそうになるが、誰かに腕を支えられ、何とか踏みとどまる。
後ろにいた大人の人が支えてくれたのだろうかと思ったが。
「…平気か」
「シ、グレ……?」
ぼんやりと、声がした方を見れば、シグレが私を支えていた。
視界が霞み、表情はよく見えなかったが。
「……目を閉じて、楽にしていい。家まで連れていく」
「う、ん……ごめ、ん、私……」
謝らなくていい。
シグレはそう言ってくれた。
けれど、いつも夜遅くまで何かをしているシグレの邪魔をしてしまった。
私の好奇心という、自分勝手な理由で。
「……気にしなくていい。今日の用事は済んだ」
「そ、っか……」
「…そんなことを気にするくらいなら、お前の親が戻るまでに調子を戻しておけ。心配をかけたくはないだろう」
「ん……」
その言葉を最後に、私は意識を手放した。
その時は、私は疑問に思っていたはずの事を、聞くことができなかった。
…どうして、シグレは普通にしていられるの。