ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第13話:彼という存在

シグレとの戦いの後。

 

 

「こんばんは、木綿季」

「あ…こんばんは詩乃さん」

 

 

知り合った病院近くのコンビニで挨拶を交わす二人。

シノン、改め朝田詩乃。

ユウキ、改め紺野木綿季。

GGOで共に戦った仲とはいえ、現実ではそれほど会ったわけでもないせいか、若干距離がある二人。

それでも、下の名前で呼ぶのがしっくりくる、といったこともあり、そう呼び合っている。

 

 

「じゃ、行きましょうか」

「は、はい…」

 

 

年上年下を気にしているのか、それとも別の理由か。

妙に大人しい木綿季に詩乃もどう接すればよいのか悩みながら、二人はマンションへと向かう。

GGOの中で一緒に行動する約束をしていた為の待ち合わせだった。

 

 

「……なんというか」

「?」

「向こうと違って、随分静かなのね」

「あ、えと…あんまり話したら迷惑かなって」

 

 

木綿季の言葉に詩乃は苦笑する。

 

 

「急に調子を変えられたら、そっちの方が私としてはどうしたらいいのか分からないのだけど?」

「あ、すみません…」

 

 

謝ってほしいわけではないのだけど、と苦笑。

 

 

「…なら、私から聞いてもいいかしら?」

「?」

「興味本位でごめんなさい。ただ、気になるのだけど…木綿季、あなた先輩と何があったの?謝らないといけない事って…」

 

 

詩乃の言葉に木綿季は一瞬考え。

 

 

「……皆がいるところで、ちゃんと話します。でも、ボクはあの人を犠牲にして、今こうして生きてしまってるんです」

「犠牲…?」

 

 

木綿季は頷きながら。

 

 

「もし時雨さんがボクに死ねというのなら、現実で刃を向けられたとしても……受け入れる。その覚悟を持って、時雨さんに話をしに来たんです」

「……」

 

 

事情こそ知らないが、強い覚悟を感じる。

けれど、それでも。

直接話をしたことはそれほど多くなかったとしても、自らが先輩と慕う彼ならば。

 

 

「……あの人は…先輩は、そんな事を言う人じゃないと思うわ」

「それは…ボクがやったことを、知らないから…」

 

 

詩乃は木綿季の言葉に溜息を一つ吐きながら。

 

 

「だとしてもよ。確かにあの人はいざとなれば人を殺してしまうかもしれない。実際にそれを見たから」

「っ…」

「それは許されないこと。だけど…やり方はどうあれ、あの人は結果として沢山の人を守ったわ」

 

 

あの場に先輩がいなかったら、あの場で手を汚していたのは、自分かもしれない。

あるいは、こうして今ここにいることも、出来なかったかもしれない。

そう、詩乃は続ける。

 

 

「……先輩は、誰かを守るために自分を犠牲にしてしまう人。それほどの人が、軽々しく貴女に死ね、なんていうとは到底思えないわ」

「そう、だといいな…」

「…いざとなったら、私も一緒に謝ってあげるわよ」

 

 

詩乃の言葉に木綿季はありがとう、とお礼を言いながら笑う。

その笑顔に、詩乃もまた笑顔で返す。

 

 

「…なんというか」

「?」

「詩乃さんって…どこか時雨さんに似てる気がします」

 

 

どこが、というわけでもない。

まして、ほとんど話したことがあるわけでもない。

それでも、なんとなく話した雰囲気が似ているような。

 

 

「……それは、すごく嬉しいことだわ」

 

 

木綿季の言葉に、詩乃は笑顔で返す。

同姓である木綿季ですら一瞬見惚れるほどの。

 

 

「私にとって、先輩は全て。あの人がいたから、私は今こうして生きている」

 

 

そんな憧れの存在に、手が届かないとしても。

せめて少しでも近づきたい。

その思いを、ずっと。

彼女の人生の半分以上もの間、胸の内に秘めて。

 

 

「……あの人が死ぬのなら、私も死んでも構わない。でも…叶うのならば、生きていてほしいから」

 

 

だから、私は行動する。

詩乃ははっきりと、そう言い切る。

 

 

「……詩乃さんは」

 

 

詩乃の言葉に、木綿季は詩乃を見て。

 

 

「時雨さんのこと…好きなの?」

 

 

なんとなく帰ってくる言葉を予想はしていたが、敢えて尋ねる。

それを知ってか知らずか。

 

 

「えぇ。私は…朝田詩乃は、華月時雨という人を…愛しているわ。たとえこの想いが届かないとしても、決してそれは変わらない」

 

 

そう、迷うこともなく、はっきりと答える。

 

 

 

…やがて、マンションは目の前だった。

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