ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そうして向き直った先にいたのは、印象的な銀髪。
「……」
リズベットの真剣な表情に、皆も息を呑む。
そんなリズベットは対峙し、声を詰まらせながら。
「…えーと」
「……?」
言葉を続けないリズベットに訝しげな表情を浮かべる。
やがて、その無言に耐えかねてか。
「……誰だっけ?」
そのリズベットの一言に、言われた本人を含めた皆が呆気にとられる。
「ぷっ…ふふ……っ!」
堪えきれなかったアスナが噴き出し、それを皮切りに。
「そりゃないだろリズベットさん?…く、くく……」
「わ、笑っちゃ駄目だよおにいちゃ…ん…!」
そんな兄妹のやりとりに皆が笑い。
「……はぁ」
シノンは頭を押さえて溜息を吐く。
「自殺願望があると見ていいの…?」
わなわな、と震えながら光剣の柄をとる女性、改めヴェンデルガルト。
若干俯いた表情は窺えないが、なんとなくどんな表情なのかは想像できていた。
「わ、忘れてたわけじゃなくて!その、結構長い名前じゃない?だから、なんというかその…ね」
慌てて弁解するリズベットに、ヴェンデルガルトは一つ息を吐き。
「…貴女は」
「え…?」
「出るの?」
ヴェンデルガルトの声色が落ち着いた事に安心しながら、リズベットは頷く。
「…え、えぇ」
「そう」
ヴェンデルガルトはリズベットを睨みながら。
「…予選だろうと、本戦だろうと……見つけたら真っ先にあんたは殺す」
「だからごめんってば!」
半泣き状態のリズベットから視線を逸らし。
「……それはそれでいいとして、聞きたいことがある」
「何だ?」
「あいつは…出る?」
ヴェンデルガルトはキリトに問いかける。
あいつ、が誰を指しているをわからない人物は、ここにはいない。
「…聞いて、どうするの?」
一歩前に出て、ストレアが尋ね返す。
その視線は、真剣なものだった。
「……」
少しの視線の交錯の後に、ヴェンデルガルトが先に視線を逸らす。
「…知れたこと。私は復讐の為にずっと奴を追い続けてる。それが仮想世界だろうと、何も変わらない」
「アタシは……守るために、追い続けてる。それが仮想世界でも、ね」
そんなやり取りをする。
「違うよストレア」
「え?」
「私たち、でしょ?」
ストレアにフィリアがそんな訂正をしながら笑いかける。
そんなフィリアに、そっか、と彼女も笑う。
「……まずは、貴女達を倒さなくちゃならないということだけは、理解した」
二人の様子に、ヴェンデルガルトは溜息を吐く。
やれやれ、といった様子で。
「ちょ、ちょっと待って」
踵を返し、歩き出そうとするヴェンデルガルトをユウキが止める。
「…何」
「あの…その、ですね」
振り返らず、肩越しにユウキに視線を向けるヴェンデルガルト。
ユウキはそんな彼女に若干威圧感を受けながら。
「……ボクには、どうしても信じられないんです。あの人が…平気で人を殺す、なんて」
「信じる信じないは貴女の勝手。けど…あいつは、私の両親を殺した」
どうあっても、その事実は消えない。
どうあっても、許すことはできない。
そう、ヴェンデルガルトの眼は物語っている。
「でも、あの人は……どうあっても許されないことをしたはずなのに、ボクの命を救ってくれた」
たとえ本意ではなかったとしても、生かしてくれた。
たとえあの人が、人を殺すことができる人だとしても、最後まで信じる。
そう、ユウキの目は物語っている。
「………そう信じるのなら、信じればいい。別に私はそれを否定しない」
ユウキにとっては意外に感じたヴェンデルガルトの言葉。
ユウキの驚きに構わず、ただ、と言葉を続ける。
「どちらかが真実だとしても……その事実を見せるのは、私でも貴女でもない、あいつ自身」
その真実を知るために、私は追い続けている。
そう、はっきりと言い切る。
「…その真実を知った時、貴女はどうする?」
「……」
「私は、真実がどうであろうと…敵討ちの為に、奴を殺す。私はその為にこれまで生きてきた」
止められるものなら、止めてみればいい。
それを言い放ち、今度こそ視線をユウキから逸らした。
「……また明日。運が良ければ会いましょう」
それだけ言い残し、ヴェンデルガルトは歩き出した。
………
……
…
「…そこのピンク頭だけは、何があろうと必ず殺すけど」
「ひいぃ!?」
…そんな置き土産を残して。