ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
翌日。
BoB参加メンバー待合所にて。
「……」
シグレは一人、誰と会話するでもなく、一人中継モニタに目を向けていた。
決勝に至るまでに何度か行われ、参加者を振るいにかける予選。
試合をいち早く終え、一足先に待合室に戻っていた。
その佇まいは、疲れを一切感じさせないものだった。
「…」
周りで観戦しているプレイヤー達は誰も彼も、そんな彼に声をかけようとはしない。
BoBを勝ち抜く強者ともなれば有名人になることが多く、必然的に声をかけられることも多くなっていく。
しかし、シグレの場合は、賞金首として何人ものプレイヤーを手にかけてきたという事実があり、それは大きく広まっていた。
そのため、ある者にとっては、畏怖の対象。
ある者にとっては、復讐の標的。
いずれにせよ、友好的に彼らに接しようというものは、その場にはいなかった。
「やっほ、シグレー!」
「……」
…一部を除いて。
予選を勝ち抜いたのか、ストレアが待合室に戻り、シグレの姿を見つけ、名前を呼びながら駆け寄る。
そんな彼女を一瞥し、シグレは溜息一つと共にストレアに背を向けて歩き出す。
「あ、ちょ…聞こえてないのかな。シグレー!シーグーレー!!」
「……」
良くも悪くもストレアは空気を読まず、シグレの名を呼びながら駆け寄る。
その様子に、まさかあの賞金首に彼女が!?といった様子でざわつく周囲。
次の予選がある手前ログアウトもできず、かといってこれ以上目立つのも本意でなかったシグレ。
そんな彼が次にとった行動は。
「……人違いです」
他人の空似。
しかし。
「あー…それ、アタシにやる?よりによって?」
人のような振る舞いであっても、彼女はAI。
プレイヤーネームやら、システム上の情報から本人確認を取るのは、彼女にとっては容易い事。
結局、今のシグレに彼女から逃れる術はなく。
「……何の用だ」
「何って、お話ししたいな、って」
「今更、何を話す必要がある」
彼女を含めた、SAOの頃に行動を共にした皆に、剣を向けた。
結果として、シグレがその時は勝利を収めたが。
「話すこと、一杯あるよ」
「自分を害した敵相手に、か」
自らを嘲りながらのシグレの言葉に、ストレアは首を横に振る。
「……違うよ。シグレは、敵じゃない」
「…」
どこか真剣な口調のストレアに、シグレもまた表情を消す。
そんなシグレに臆せず、ストレアは言葉を続ける。
「……なんでかな。アタシには、無理やり孤立しようとしてるように見えるんだ」
「随分と知った口を利く……俺の何を知った」
「分からないよ?」
シグレの問いに、ストレアは何言ってるの、とばかりに彼の予想外の答えを返す。
シグレは言葉を失う。
「……だから、知りたいんだ。どうしてこんな風に、アタシ達を突き放すのか。だから…話がしたいんだよ」
「…」
「それはやっぱり…病気のせい?」
ストレアの質問責めに、シグレはどうしたものかと目の前のストレアを見るが、どうやら逃がしてくれそうにはないと悟り。
「……それもなくはない」
「ってことは、他にもあるんだ?」
曖昧に濁そうとするシグレに、ストレアは鋭く切り返す。
その切れ味は、かつて彼女が振るっていた大剣での戦い方とは真逆の、相手の急所を突く一撃のように。
しかし、その会話は。
「おーおー、仲がいいことで?HAHAHA…」
招かれざる客によって、少なくともストレアにとっては不本意な終わり方をするのだった。