ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第19話:決勝に向けて - I

翌日。

BoB参加メンバー待合所にて。

 

 

「……」

 

 

シグレは一人、誰と会話するでもなく、一人中継モニタに目を向けていた。

決勝に至るまでに何度か行われ、参加者を振るいにかける予選。

試合をいち早く終え、一足先に待合室に戻っていた。

その佇まいは、疲れを一切感じさせないものだった。

 

 

「…」

 

 

周りで観戦しているプレイヤー達は誰も彼も、そんな彼に声をかけようとはしない。

BoBを勝ち抜く強者ともなれば有名人になることが多く、必然的に声をかけられることも多くなっていく。

しかし、シグレの場合は、賞金首として何人ものプレイヤーを手にかけてきたという事実があり、それは大きく広まっていた。

そのため、ある者にとっては、畏怖の対象。

ある者にとっては、復讐の標的。

いずれにせよ、友好的に彼らに接しようというものは、その場にはいなかった。

 

 

「やっほ、シグレー!」

「……」

 

 

…一部を除いて。

予選を勝ち抜いたのか、ストレアが待合室に戻り、シグレの姿を見つけ、名前を呼びながら駆け寄る。

そんな彼女を一瞥し、シグレは溜息一つと共にストレアに背を向けて歩き出す。

 

 

「あ、ちょ…聞こえてないのかな。シグレー!シーグーレー!!」

「……」

 

 

良くも悪くもストレアは空気を読まず、シグレの名を呼びながら駆け寄る。

その様子に、まさかあの賞金首に彼女が!?といった様子でざわつく周囲。

次の予選がある手前ログアウトもできず、かといってこれ以上目立つのも本意でなかったシグレ。

そんな彼が次にとった行動は。

 

 

「……人違いです」

 

 

他人の空似。

しかし。

 

 

「あー…それ、アタシにやる?よりによって?」

 

 

人のような振る舞いであっても、彼女はAI。

プレイヤーネームやら、システム上の情報から本人確認を取るのは、彼女にとっては容易い事。

結局、今のシグレに彼女から逃れる術はなく。

 

 

「……何の用だ」

「何って、お話ししたいな、って」

「今更、何を話す必要がある」

 

 

彼女を含めた、SAOの頃に行動を共にした皆に、剣を向けた。

結果として、シグレがその時は勝利を収めたが。

 

 

「話すこと、一杯あるよ」

「自分を害した敵相手に、か」

 

 

自らを嘲りながらのシグレの言葉に、ストレアは首を横に振る。

 

 

「……違うよ。シグレは、敵じゃない」

「…」

 

 

どこか真剣な口調のストレアに、シグレもまた表情を消す。

そんなシグレに臆せず、ストレアは言葉を続ける。

 

 

「……なんでかな。アタシには、無理やり孤立しようとしてるように見えるんだ」

「随分と知った口を利く……俺の何を知った」

「分からないよ?」

 

 

シグレの問いに、ストレアは何言ってるの、とばかりに彼の予想外の答えを返す。

シグレは言葉を失う。

 

 

「……だから、知りたいんだ。どうしてこんな風に、アタシ達を突き放すのか。だから…話がしたいんだよ」

「…」

「それはやっぱり…病気のせい?」

 

 

ストレアの質問責めに、シグレはどうしたものかと目の前のストレアを見るが、どうやら逃がしてくれそうにはないと悟り。

 

 

「……それもなくはない」

「ってことは、他にもあるんだ?」

 

 

曖昧に濁そうとするシグレに、ストレアは鋭く切り返す。

その切れ味は、かつて彼女が振るっていた大剣での戦い方とは真逆の、相手の急所を突く一撃のように。

しかし、その会話は。

 

 

「おーおー、仲がいいことで?HAHAHA…」

 

 

招かれざる客によって、少なくともストレアにとっては不本意な終わり方をするのだった。

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