ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第20話:決勝に向けて - II

SAOの時とは違い、フードを外したその顔を、シグレは忘れていない。

忘れようがない。

 

 

「…PoH」

 

 

ストレアがSAOでの彼の名を呼ぶ。

SAOにおける人殺しギルド、笑う棺桶のリーダー。

その悪名は、SAOが終わった今でも、VRMMOプレイヤーの中で、史上最悪の名前として知れ渡っていた。

そんなPoHと、GGOで悪くも目立つシグレの対峙に周りも息を呑む。

 

 

「……違うな」

 

 

シグレがストレアが呼んだ彼の名を否定する。

 

 

「ここはSAOじゃない。PoHの名でいる理由もない……そうだろう、ヴァサゴ」

「くく……SAOのおかげでその名で呼ばれるのも久しぶりだ。お前みたいに実名でやりゃよかったなぁ、シグレ君?」

「……」

 

 

相変わらずの話し方に、シグレは言葉を返さない。

いくらシグレとて、ヴァサゴとは雑談をするような間柄ではない。

 

 

「…この後も予選がある。用件は何だ」

「あ?あぁ、さっきの会話が少し聞こえてな……病気がどうとか」

「……お前には関係ないことだ」

 

 

ヴァサゴの言葉に答えず、シグレはその場から去ろうと背を向ける。

 

 

「……まさかとは思うが、AMLか?」

「っ…」

 

 

AML、すなわち急性骨髄性白血病。

シグレは病名をピタリと言い当てられ、歩みを止める。

ヴァサゴからすれば、それは肯定の返事で。

 

 

「HAHAHA、まさかとは思ったが本当にAMLだとはな。こうも親子ってのは似るもんかね。HAHAHAHA!!」

「……どういう事だ」

 

 

面白そうに嗤うヴァサゴにシグレは向き直り、静かに尋ねる。

静かなのだが、内に押さえ込んでいるであろう殺気のような何かが抑えきれていなかった。

現に、その手は光剣の柄にかかっていた。

 

 

「……あ?なんだ、知らなかったのか。こりゃうっかり口が滑ったか」

「御託はいい。さっきのは…」

 

 

シグレが問い詰めようと言葉を続けたが。

 

 

『…それでは、次の予選を開始するため、対象者を転送します』

 

 

それを遮るように行われたアナウンスとともに、シグレは光に包まれた。

 

 

「…水を差されちまったな」

 

 

舌打ちしながらヴァサゴは去っていく。

 

 

「勝ち上がったらあいつに伝えといてくれや……決勝で話の続きでもしようや、ってな」

「まっ…!」

 

 

去っていくヴァサゴを止めようとするストレアだったが、ヴァサゴは応じなかった。

 

 

「お前らと決勝で会うのを…楽しみにしてるぜ?」

 

 

その代わりに、そんな一言を残して。

 

 

 

 

ヴァサゴが立ち去った後、ストレアは一人、中継モニタに目を向ける。

 

 

「……」

 

 

そこには、戦い、敵対プレイヤーを確実に葬っていくシグレの姿。

対戦相手のレベルも高いはずなのに、シグレを相手にしている彼らの銃の扱いが、まるで児戯のように見えてしまっていた。

 

 

「……」

 

 

ストレアは無意識に拳を握る。

ヴァサゴの事は今は置いておくとしても。

シグレと戦って勝ちたいわけではないとしても。

それでも、戦って、勝たなければ、きっと届かない。

だから、負けない。

 

 

「…どんな理由があったとしても」

 

 

少なくとも、それはアタシを突き放す理由にはならない。

そして、そんな想いを抱いているのは、きっとアタシだけじゃないけれど。

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