ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第21話:決勝に向けて - III

予選が終わり、時は経ち。

BoB決勝戦当日。

 

 

「凄いな、これは…」

「本線はいつもこんな感じって聞いてるわ」

 

 

皆が揃う中、キリトの言葉にシノンが反応する。

 

 

「っ…」

「…何、アスナ、緊張してるの?」

「ち、違…!」

 

 

息を呑むアスナにリズベットが茶化すように尋ねる。

それに対しアスナは否定しようとはするが、嘘がつけない性格なのか、途中で言葉を切ってしまう。

それで察したのか、リズベットはくすくすと笑いながら。

 

 

「大丈夫よ、ここはSAOじゃない。仮に負けたって死ぬわけじゃないんだから気楽にいきましょ」

「でも…」

「…それに、そんな緊張したら実力出せないわよ。アスナなら分かるでしょ?」

「う…」

 

 

そんな雑談を交わしている一方。

 

 

「…ユウキ、何それ?」

「へ?あ、これ?さっきそこで売ってたんだ。1000クレジットは地味に手痛い出費だけど、決勝進出選手の極秘情報満載、だっていうからつい…」

「へぇ。どんなこと書いてあるの?」

「えーっと、リーファはね……あっ」

「ユウキ?」

「あー………うん、知らないほうがいいことってあるよね!」

「え、ちょ、何が書いてあったの!?」

 

 

じゃれあう者もいれば。

 

 

「もうすっかり大丈夫そうね、ストレア?」

「あ、フィリア。うん、ご心配おかけしました!」

「全くよ。あなたに元気がないと調子が狂うからやめてよね」

「ん…ありがと」

「ちなみに」

「?」

「決勝で当たったら、容赦しないから。全力でいくわよ」

「当然っ」

 

 

拳を突き合わせる者たちもいたりと、皆それぞれが本戦に思いを馳せる。

そんな一行の元に。

 

 

「っあ、みなさーん!」

 

 

元気な声で呼びかけ、近づいてくる影。

 

 

「なんだシリカじゃない。あんた本戦出るんだっけ?」

「いえ、予選にも出てないので見学です。皆さん本戦に出るって聞いたので応援です。それと…私だけじゃないですよ?」

「え?」

 

 

シリカの言葉に話していたリズベットではなく、近くにいたアスナが気付く。

 

 

「サチさん!貴女も本戦に?」

「ううん、私は参加してないけど……」

 

 

アスナの言葉に答えながら、サチは辺りを見回す。

少しばかり見回して。

 

 

「シグレは…一緒じゃないんだね」

「…うん。多分…というよりほぼ確実に戦うことになると思う」

「なんとなくは、分かってた。だから、貴女に…ううん、貴女達にお願いすることにする。シグレを…ちゃんと連れ戻してきて」

「…任せて。もとよりそのつもりだから」

 

 

そんな言葉を交わすアスナとサチの背後には鬼気迫る何かが見えるような気がしていた。

 

 

「まぁ…緊張はほぐれただろうけど」

「ありゃこっちが油断できなそうだな」

 

 

キリトとリズベットが苦笑し。

 

 

「全く…初参戦であの余裕、ある意味羨ましいわ」

「でも、シノンだって同じでしょ?シグレさんと当たったら…」

「どうかしら」

 

 

シノンの言葉にユウキがお、と少し驚くように返す。

出会ってそれほど期間が経ってないとはいえ、シノンの行動基準がシグレ中心になっていることはユウキも気づいていた。

だからこそ、アスナやサチのようにはっきりしないのは珍しく感じていた。

…のだが。

 

 

「私は先輩とGGOでトッププレイヤーになって、現実では子供を授かってるところまでは考えてるけど」

「うわーぉ」

 

 

シノンの返しにユウキはただ驚くだけだった。

 

 

「冗談よ」

「…分かりにくいですよ」

 

 

シノンの苦笑交じりの言葉に、ユウキは溜息一つ。

 

 

「ねぇ、ユウキは知ってる?」

「…?」

「嘘を嘘と思わせないためには、いくらかでも真実を混ぜ込むのがコツなのよ」

「…え?」

 

 

どこからどこまで?

そう、ユウキは気になったが、答えが怖くて聞き返せなかった。

そんな様子を見ながら。

 

 

「貴女はどうなの?ユウキ」

「え?」

 

 

シノンがユウキに尋ねる。

そこにはさっきまでの冗談交じりの雰囲気はない。

 

 

「詳しくは分からないけど、ユウキが先輩に謝りたいことがある、っていうのは知ってる」

「…はい」

「勘違いしないでほしいけど、別に詮索しているわけでも、教えてくれないことを責めてるわけでもないの。ただ…」

 

 

シノンは一旦言葉を切り、少し言葉を考えたのか、間をおいて。

 

 

「…その後、ユウキは先輩と、どういう関係になりたいのかなって」

「どう、って…?」

「直感で言ってるだけだから、間違ってたら申し訳ないけど…このままの関係でいいのなら、先輩の前に現れる必要もなかったし、知らぬ存ぜぬで暮らしていれば何もなかったわけでしょ?」

 

 

ユウキの問いに、質問で返すようにシノンは答える。

その質問に、ユウキは一瞬言葉に詰まる。

 

 

「ということはつまり、先輩との関係をこのままにしたくないから行動して…結果的に私たちに出会っているっていう事かなって」

「えっと、それは…」

 

 

突然で答えられないのか、あるいは答えたくないのか、ユウキは答えない。

その様子にシノンは溜息を吐き。

 

 

「……ごめんなさい、突然だったわよね」

「あ、いえ…」

「もうすぐ本戦だから……こんな質問をした私が言えた義理じゃないけど、少し精神統一したほうがいいかもしれないわよ」

 

 

シノンはそれだけ言い残し、ユウキから離れていった。

 

 

「ほんと、どうしたいんだろ…」

 

 

誰に聞くわけでもなく、ユウキは一人呟く。

その問いに答えるものは、誰もいなかった。

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