ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そうして、27層の町まで戻り。
「よかった、皆無事だったんだな!」
「あぁ、ごめん…ちょっと、無茶した」
待っていたのか、心配していたケイタの焦りの表情が安堵に変わる。
「でも、生き残れたのはシグレのおかげだったんだよ」
「あぁ、シグレが敵を倒しまくってくれたから、被害を押さえられたんだ。本当にありがとな、シグレ」
「いや…」
お礼を言われ、シグレは俯く。
シグレの中では、お礼を言われることではなかったのだ。
自分がもっと強くトレジャーボックスを開けるのを止めていれば、という後悔。
けれど、月夜の黒猫団の皆からすればシグレは文字通りの命の恩人であった。
「…さて、俺たちはそろそろ行くよ」
「ありがとな、ディアベル」
「礼には及ばないさ。人を助けるのは、騎士の本分、だろ?」
ディアベルと呼ばれた青髪の男性はそれだけ言い残し、プレイヤーを引き連れて去っていった。
その様子は、さしずめ騎士団長、といったところだった。
ケイタはお説教、という名目でテツオ達を宿へと引き連れていった。
その言い方だとサチも同罪なはずだが、臆病な彼女が自分からそんなことを言うはずがない、というケイタの判断によるものだった。
そうして、その場に残ったのは、キリト、アスナ、サチ、シグレの4人。
「それにしても、とんでもない無茶をするな…『幻影の死神』は」
「…その呼び方はやめろ。というよりそれが俺だという証拠はないだろ」
「こんな事するの貴方くらいしかいないし…そもそも、貴方が名乗らないからそう呼ぶのよ?幻影の死神様?」
「……」
キリトの茶化すような言い方に反論するシグレだが、アスナに追撃され、ついに黙り込む。
シグレはそれにため息をつきながら。
「…シグレだ」
「おう…改めて、俺はキリト。よろしく」
「あぁ」
キリトと握手を交わす。
1層での出会いは、シグレが原因とはいえ最悪ともいえる出会いだったのだが、それでも握手をできるのは、キリトの人の好さがなせる業か。
…そして。
「私はアスナ。ようやく追いついたわ…シグレ君」
「…いつかは立ち上がると思っていたが、随分強くなったな」
互いに笑みを浮かべ、アスナとも握手を交わした。
「それでも、貴方の言葉があったから…私はここまで来れた。ありがとう…私を救ってくれて」
「…礼を言われるほどのことをした記憶はないがな」
「それならそれでもいいわ…今は、ね」
その様子を見ていたサチは僅かに危機感を感じていた。
何を、とは言えない。
きっとこれが、女の勘、というやつなのだろう。
「…行くよ、シグレ!」
「お、おい…」
アスナと繋いでいる方とは反対の手を抱きしめるようにしながら、ケイタ達が向かっていった宿へと引っ張っていくサチ。
突然の行動にシグレは一瞬よろけ、握手をしていた手は離れる。
「…いいのか、アスナ?」
シグレとサチの様子に苦笑しながら尋ねてくるキリトに、アスナは少しムッとしながら。
「…いいわけないでしょ!二人とも、待ちなさい!!」
二人を追いかけるアスナ。
やがて、シグレの腕は二人に抱きしめられ、シグレは歩きづらそうにしていた。
きっと、アスナとサチの2人はシグレを挟んで口論を交わしていることだろう。
その様子を見ながら。
「…幻影の死神ってのも、名ばかりな気がするな」
死神は、人を救ったりはしないだろう、と考えて、更に笑みを零しながら、キリトも3人を追いかけることにした。