ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第23話:決勝開始 - I

そして始まった決勝戦。

 

 

「……」

 

 

隠れる場所が少ない荒野のような場所に一人立ち、歩き出すシグレ。

その手に、武器を構えずに。

荒野という土地の性質上か、足音が響く。

同時に吹き荒れる荒野の風が、その音を掻き消す。

参加者は二桁いたはずだが、近くにはまだ誰もいないようだった。

 

 

「…」

 

 

先ほどのやり取りを思い出す。

決勝で戦いあう以上、必ず生き残って戦うことになるという保証はない。

とはいえ、ヴァサゴは生き残るだろう。

父とのことがあって、現実での奴を知っていて。

SAOでのことで、仮想世界での奴を知っている。

だからこそ、そう簡単に奴は落ちない。

そう、考えていた。

 

 

「…」

 

 

しかし、その一方で、ヴェンデに関しては分からない。

あの時、別れて以来、連絡の一つもとっていなかったのだから、分かるはずもない。

とはいえ、決勝には残っている。

それが実力か、運なのかも分からないが。

 

 

「……」

 

 

一つ、溜息を吐きながら、シグレは光剣を抜く。

その次の瞬間。

 

 

「っもらったぁ!」

 

 

シグレから少し離れた岩陰から飛び出し、距離を詰めながら銃の連射で攻撃をする。

銃の射撃はシグレを捉え、いくつかの銃弾が砂塵を巻き起こす。

 

 

「……っと、弾切れか」

 

 

舌打ちをしながら銃を下ろし、リロードを行う。

先の銃撃で、何十発撃ち込んだだろう、その数を撃ち込まれて、HPが残っているはずがない。

そう考えての余裕だが。

 

 

「………は?」

 

 

次の瞬間、光剣を振るった瞬間の特有の電子音が彼の耳をつく。

 

 

「…え?」

 

 

その次の瞬間、ガシャ、と音を立てて何かが地面に落ちる。

それは、彼が持っていた銃だった。

リロードをするために、手に持っていたはずのものが、そこに落ちていた。

手が滑ったのか、と考えるが。

 

 

「………なんで、俺の…腕が……」

 

 

その銃には、誰かの手の指が、絡みつくように、ついていた。

その腕は、紛れもなく、彼自身のものだった。

何が起こったのか分からず、狼狽えていた。

 

 

「……どうせ、痛覚はない。ならせめて、冷静に判断すべき…だな」

 

 

彼が倒した、相手のプレイヤー。

倒したはずと考えていた、その相手の声が、背後から聞こえたかと思うと。

再度、電子音と共に。

 

 

「あ、ぁ…!」

 

 

相手プレイヤー…シグレの光剣の切っ先が自分の胸元から突き出していた。

現実であれば、心臓の位置から。

 

 

「…所詮ゲームか。こうしたところで、すぐには終わらない」

 

 

シグレはそう、呟く。

シグレが確認したのは、相手のHPのゲージが徐々に減っていく様子。

現実であれば、直ぐに事切れる事を、シグレは知っていた。

とはいえ、仕方がない。

そう思いながら、HPが0になるのを見届け。

 

 

「……」

 

 

光剣を引き抜き、相手にDEADの表示が出ることを確認し、剣を納める。

そんなシグレの視線の先には、相手が使っていた銃。

その銃身をを踏み抜き、破壊する。

 

 

「…」

 

 

動かなくなった相手を一瞥し、シグレは背を向けて歩き出した。

 

 

まだ、決勝戦は始まったばかり。


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