ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第22話:別れ

そうして、宿に戻り。

 

 

「あ、シグレお帰り。こいつらにはきつぅく言っといたから、許してやってくれるか?」

 

 

何かをやり切った感じのケイタの目の前で正座する三人。

三人は軽く涙目な様子だ。

 

 

「俺はいいんだが…お前がそろそろ許してやったらどうだ」

「んー…まぁ、そろそろいいか」

 

 

シグレが意見すると、ケイタは溜息を一つ。

サチは隣で苦笑する。

 

 

「ところで、ホームは買えたの?」

 

 

続くサチの質問にケイタはあぁ、と頷く。

 

 

「小さな家だけどな。きっと気に入ってくれると思う。行こうか、皆。よければキリトさんとアスナさんも」

 

 

ケイタの提案にキリトとアスナは軽く視線を交わし。

 

 

「…あぁ、それじゃ、少しだけお邪魔しようかな」

「うん…お邪魔します」

 

 

キリトとアスナも交えて、皆でギルドホームへと向かうことになった。

 

 

 

第1層、ギルドホーム。

 

 

「素敵…」

 

 

着いて、第一声を発したのはサチだった。

決して豪華な装飾があったりとかそういうわけではなく、始まりの町の中でも人があまり来ない一角にある、普通の木造の小さな家だった。

だが、きっとそれでいいのだろう。

 

 

「…いい家だな」

「そうだろ?いやぁ、頑張って貯めた甲斐があったよ」

 

 

シグレが言うと、ケイタも嬉しそうに返す。

このギルドにとって結構長いことの目標だったことを知っているから、嬉しそうに言う理由もわかっていた。

 

 

「…後で、少し話したいことがあるんだが…いいか?」

「………分かった。夕食後でいいか?」

「あぁ」

 

 

シグレの言葉に、ケイタはじっとシグレの目を見て、返事をする。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、夕食後。

シグレはケイタとテーブルに向かい合って座る。

 

 

「…実は」

「ギルドを抜けようと思っている、じゃないか?」

「……」

「知っていたわけじゃないさ。ただ…なんとなく、かな」

 

 

ケイタの言葉に、シグレは軽く笑みを零す。

なぜ気づかれたのかは分からないが、教えたつもりもなかった。

 

 

「…なんとなく、で察するあたりは、さすがリーダー…といったところか」

「茶化すなよ、シグレ。理由…聞いてもいいか?」

「……」

 

 

理由を聞かれ、シグレは少し目を伏せて考える。

やがて言葉が出たのか。

 

 

「…素人目だが、ここはいいギルドだ。雰囲気もいいし…何より、温かい」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

 

シグレとてこのギルドに不満を持っていたわけではない。

ケイタも褒められて悪い気はしないのか、お礼を言う。

 

 

「だが…だからこそだ。俺には温かすぎる…不相応な位に。俺がここにいていいのか、と思うくらいにな」

「……そうか。俺としても、2度も救ってくれた命の恩人の言葉を無碍にするつもりはないよ。脱退の件、了解した」

 

 

ただ、とケイタは続ける。

 

 

「忘れないでくれ…シグレが感じたその温かさは、シグレが守ったものでもあるんだ。シグレはここにいていい。それだけは断言する」

「…そうか。ありがとう、リーダー」

 

 

ケイタの言葉にシグレはお礼で返す。

 

 

「…もう行くのか?」

「あぁ…すまないが皆には」

「言うな、だろ?分かってるよ」

 

 

立ち上がりながら、準備をするシグレを見送るようにケイタは立ち上がる。

 

 

「シグレ」

「?」

「今まで、ありがとう…本当に、ありがとう」

 

 

ケイタから何度も言われるお礼に、シグレはただ一つ、笑みで返す。

 

 

「…成り行きとはいえ、二度も助けた命だ。無為に捨てるような真似だけはしてくれるなよ」

「もちろん。これからはしっかり目を光らせるよ」

 

 

本当に懲りたのか、ため息交じりのケイタ。

 

 

「…だが、借りを作りっぱなしは、嫌だからな。もっと強くなって、今度は守られるだけじゃなく、隣で戦えるくらいに強くなるから…その時は前線で会おう」

「そうなる前に、ゲームクリアをしたいところだな」

 

 

そうして、二人は拳を突き合せた。

それは、戦友としての彼らの挨拶。

 

 

「…ではな」

「あぁ。またな…シグレ」

 

 

名残を惜しむこともなく、シグレは家を出る。

一人、また戦いに身を投じることを選んで。


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